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デジタル変革のためのAI : AIエージェントが開く、新しいビジネスのかたち

By IBM ProVision posted 3 hours ago

  
AIはもはや補助的なツールではなく、業務そのものを再構築する手段としての役割を担い始めています。本稿では、AIエージェントというキーワードを題材に、AIエージェントの本質と進化、業務への実装手法、そしてIBMとともに描くビジネスの姿について説明します。
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中矢 徹
Nakaya Toru
日本アイ・ビー・エム株式会社
コンサルティング事業本部 カスタマー・トランスフォーメーション 事業部
アソシエイト・パートナー
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鳥井 卓
Torii Taku
日本アイ・ビー・エム株式会社
コンサルティング事業本部 AIエージェント事業部
パートナー
CRM(顧客関係管理)コンサルティングを統括。営業改革やコールセンターなどに代表される顧客接点改革を中心に、戦略策定からシステム(カスタム開発、Salesforceなどのパッケージ、生成AI適用)導入、運用保守まで幅広く従事。 日本IBMで開発職・PM職・戦略室を経て、顧客接点部門を統括。現在は先端技術×ビジネス変革を軸にAIエージェント事業部長を担当。

はじめに:AIは企業の「構造」をかえる 

AIは単なる業務効率化ツールにとどまらず、企業の構造そのものを変革する存在として注目されています。2024年に発行されたIBM Institute for Business Value(IBV)のレポート「CEOのための生成AI活用ガイド-総集編 第2版」において、79%の経営層が、今後3年のうちに生成AIは自社のオペレーティング・モデルの中核的な要素に大きな影響をもたらすと予想していました [1]。また、2025年にIBVから発行された別のレポートでは、AIエージェントによる業務スピードの加速を75%の経営層が予測していることや、人間の介入を必要としないワークフローやプロセスが2027年までに大幅に進展することを85%の経営層が予測していることに触れており[2]、AIを活用した業務再構築が本格化されつつあります。
このように、AIの活用はもはや一部業務の支援ではなく、企業全体の働き方や価値創造の在り方そのものを変える段階に入っています。AIが主導して業務を実行し、人はその監督や意思決定を担うという構図への転換が始まっているのです。

AIエージェントとエージェント型AI:AIが業務を主導する  

AIエージェントとエージェント型AI。この2つは似て非なる概念です(図1)。AIエージェントとは、FAQ対応やレポート生成など、特定の業務において自律的に動作するAIのことです。一方、エージェント型AIは、目標の設定からタスクの分解、外部サービスの活用、実行、評価、再試行といったプロセス全体を自己完結的に担うAIアーキテクチャー を意味します。
従来のAI活用は、人が主導しAIが補助するものでした。しかし、エージェント型AIではAIが業務を主導し、人がその監督者となるというように、役割分担が逆転します。エージェント型AIは「人の仕事を助ける技術」ではなく、「仕事の在り方そのものを再設計する技術」と捉えることができ、業務フローや意思決定の仕組みを AIを前提とした形へと再構築することが、エージェント型AIの真の活用に   不可欠となります。

図1. AIの進化とAIエージェントとエージェント型AIの違い  

AIを活かす構造:エージェント型AIのためのプラットフォーム

エージェント型AI を含むAIエージェントを組織に定着させ、進化させ続けるには、単体機能ではなく それらを支えるプラットフォーム構造が必要です。AIエージェントの業務実装とスケーラビリティー を両立させるための下記の 6つのコンポーネント  で構成されます(図2)[3]。

  1. AIアプリケーション基盤:業務用途に応じたAIアプリの開発・実行を支援する環境を提供
  2. AIエージェント共通基盤:AIアプリケーションから呼び出される特定業務向けのAIエージェントの開発・運用支援
  3. AIゲートウェイ:生成AIサービス(特にLLM) へのアクセス管理や利用状況の記録、APIを統合管理
  4. AIモデル管理(LLM: Large Language Model, 特化型SLM: Small Language Model)基盤:言語モデルの実行、管理、チューニングを管理
  5. AIデータ管理:AIの学習・推論に必要なデータを統合管理
  6. AIセキュリティー/AIガバナンス基盤:AIのセキュリティー対策とコンプライアンスを管理

このようなAIプラットフォームの実装により、AIエージェントは単なるPoC(概念実証)で終わることなく、実業務に組み込まれた「継続的に進化するビジネス資産」 として機能します。各コンポーネントを段階的に整備しながら、小さな成功を積み重ねるアプローチが現実的かつ効果的です。
 

図2. AIプラットフォーム全体像    

業務別ユースケース:「AIファーストの業務再設計」  
AIエージェントは特定業種に限らず、あらゆる業務領域に適用可能です。本章では、人事業務とコンタクトセンター業務における代表的な活用事例を紹介します。

人事業務のケース

従業員からの問い合わせ対応や各種処理の案内など、反復的な業務が多い人事部門では、AIエージェントによる自動対応が効果を発揮します。例えば、入退社手続き、異動処理や社会保険手続き、役員報酬支払いなどを、エージェント型AIが社内人事規程を理解し、人事システムと連携して自律的に処理することにより、人的生産性を向上させることができます。これにより、人事担当者は本来注力すべき戦略領域である、採用・育成・定着化などの業務にシフトする  ことができます。

コンタクトセンターのケース

AIエージェントが、 チャット・音声対応を介して FAQレベルの回答にとどまらず、取引内容の照会、注文・契約の変更、住所など個人情報の変更など 基幹システムにも連携しながら業務処理までを直接行います。 また、AIエージェントがパーソナライズされた提案も行うことで、コンタクトセンターのコスト削減にとどまらず、クロスセル・アップセルを通じた売上貢献も実現可能です。

これらの取り組みは、IBM Consulting Advantage for Agentic Applicationの業務別AI
テンプレート(図3)を活用することで、    迅速に導入可能です。IBM Consulting Advantage for Agentic Applicationは業界・業務別の「エージェント型AI」ソフトウェアと、AIを前提にビジネス全体を再設計して変革させる、AI+(AIファースト)の標準業務プロセスを提供します。

 図3. IBM Consulting Advantage for Agentic Applicationで提供されるエージェント型AI  

導入戦略:技術進化にあわせたアプローチの選択 

AIエージェントの導入戦略は、ビジネスの目的や実行スピード、リスク許容度によって異なります。技術には3つの段階があります(図4)。

    1. ゼロベースのスクラッチ開発:最先端のテクノロジーを活用しながら一から開発。業務への最適化度は高い一方、投資額も大きいため、進化の速い技術トレンドへの対応に注意が必要です。
    2. アセットベース開発:再利用可能なソースコード(アセット)などを用い、開発効率と柔軟性を両立します。コストとスピードのバランスに優れます。
    3. パッケージの活用:AIエージェントビルダーによるローコード・ノーコード開発を可能にすることで、業務ユーザーを中心にしたチーム組成で迅速な導入も可能です。短期間での成果創出に向きます。複雑性が高い内容の場合はスクラッチ開発やアセットベース開発との併用も考えられます。

導入にあたっては、「どこで競争優位を築くか」「どこを効率的に標準化するか」を見極め、最適な導入形態を選択することが重要です。技術の変化が早い現在、自前主義に固執せず、パートナーとの共創による拡張性ある設計が求められます。

図4. AIエージェント・テクノロジーの進化  

共創への招待:IBMと描く「AIと働く」業務デザインの未来 

AIエージェントの導入と定着には、技術だけでなく「体験設計」 が不可欠です。IBMは、戦略、デザイン、テクノロジーを融合し、企業と共にユーザー体験や業務体験の再設計に取り組むコンサルティングを数多く手掛けています。
IBMは構想段階からPoC 、本番展開、定着化に至るまでを伴走型で支援します。IBM Garageアプローチやデザイン思考を活用し、業務の本質とユーザーのニーズを統合したAI活用を設計します。そして、IBM Consulting Advantageとの連携により、アセットを活用した迅速な開発と拡張性の確保を両立させることが可能です。

おわりに

AIエージェントは、単なる業務の効率化を超えて、企業の在り方を再定義する存在になりつつあります。人とAIが協働する時代には、役割分担と業務設計の再構築が欠かせません。
IBMは、AIを中心とした未来の働き方を、構想・設計・実装の各段階で支援するパートナーです。「AIをどう使うか」ではなく「AIと共にどんな未来を描くか」。この問いに向き合いながら、皆様と共創の第一歩を踏み出せることを願っています。

参考文献
[1] IBM Institute Business Value:CEOのための生成AI活用ガイド-総集編 第2版,p.61(2024), https://www.ibm.com/thought-leadership/institute-business-value/jp-ja/report/ceo-generative-ai-jp
[2] IBM Institute Business Value:エージェント型AIで指揮する、次世代の業務オペレーション,https://www.ibm.com/thought-leadership/institute-business-value/jp-ja/report/agentic-process-automation
[3] IBM Provision:ビジネス変革のためのAI:AIプラットフォームを支えるテクノロジー(前編), https://community.ibm.com/community/user/japan/blogs/provision-ibm1/2025/05/14/vol100-019-ai

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