日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部
清水 大輔

デジタル資産市場は急速に拡大し、ステーブルコインやトークン化証券が次世代の決済インフラとして注目されています。2024年にはステーブルコインの決済量がVISAやMastercardを超え、金融機関の本格参入が始まっています。こうした潮流に対応するため、IBM Digital Asset Havenをリリースしました。
このプラットフォームは、ウォレット管理、トランザクション制御、ガバナンス、AML/KYC連携までを統合し、SaaS・Hybrid SaaS・オンプレミスの3モデルで柔軟に導入可能。特にオンプレミスは業界唯一の選択肢で、既存コアバンキングとの接続にも対応します。さらに、**LinuxONE+FIPS140-2 Level4認定HSM+東京研究所発のOffline Signing Orchestrator(OSO)**により、世界最高水準のセキュリティを実現。IBMならではの強みで、金融品質のデジタル資産運用を支えます。
本日は、わかりやすく「デジタル資産とは何か」「なぜ注目されているのか」、そしてIBMが提供するDigital Asset Havenの全貌をご紹介します。
はじめに
近年、金融業界やテクノロジー業界で「デジタル資産」という言葉を耳にする機会が急増しています。暗号資産(仮想通貨)だけでなく、NFTやトークン化証券など、さまざまな形でデジタル資産は広がりを見せています。さらに、国際送金やクロスボーダー決済の分野では、従来の決済ネットワークを超える新しい潮流が生まれています。
デジタル資産とは何か?
デジタル資産とは、ブロックチェーン技術を基盤に、デジタル形式で価値を持つ資産の総称です。代表的な例として以下があります。
- 暗号資産(仮想通貨):ビットコインやイーサリアムなど
- NFT(非代替性トークン):デジタルアートやゲームアイテムなど
- トークン化証券:株式や債券をデジタル化したもの
これらは、従来の資産と異なり、**分散型台帳(ブロックチェーン)**で管理されるため、改ざん耐性や透明性が高いことが特徴です。
市場背景:決済の主役が変わりつつある
さらに注目すべきは、決済市場の変化です。マッキンゼーが世界経済フォーラム(WEF)で発表した調査によると、ステーブルコインによる決済量が、VISAやMastercardといった従来の決済ネットワークを上回る水準に達しつつあることが報告されています。

これは、国際送金やクロスボーダー決済において、ステーブルコインが低コストかつ即時性を提供するため、金融機関がこの分野への参入を積極的に検討していることを示しています。こうした背景から、デジタル資産は単なる投資対象ではなく、決済インフラの中核を担う存在へと進化しつつあります。
なぜ今、デジタル資産が注目されるのか
背景には、以下の要因があります。
- 金融のデジタル化:中央銀行デジタル通貨(CBDC)の検討が進む
- グローバルな取引ニーズ:国境を越えた即時決済の需要増加
- 新しい投資機会:NFTやトークン化資産による新市場の創出
特に、規制やセキュリティの観点から、信頼性の高いプラットフォームが求められています。
IBM Digital Asset Havenとは
IBM Digital Asset Havenは、企業や金融機関がデジタル資産を安全かつ効率的に管理・取引できるための統合プラットフォームです。主な特徴は以下の通りです。
- 高いセキュリティ:IBMの暗号技術とハードウェアセキュリティモジュール(HSM)を活用
- 規制対応:各国のコンプライアンス要件に準拠
- 柔軟な統合性:既存の金融システムやブロックチェーンネットワークと連携可能
さらに、IBM Digital Asset Havenは、導入形態に応じて3つのオファリングモデルを提供しています。
3つのオファリングモデル
- SaaS(Software as a Service)
クラウド上で提供されるサービスで、迅速な導入とスケーラビリティが特徴。初期投資を抑えたい企業に最適です。
- Hybrid SaaS
クラウドとオンプレミスを組み合わせたモデル。セキュリティ要件や規制対応を考慮しつつ、柔軟な運用が可能です。
このモデルを支えるインフラはIBM LinuxONEであり、エンタープライズレベルの耐障害性と暗号保護を提供します。
- オンプレミス
自社データセンターで運用するモデル。業界唯一のオファリングであり、最高レベルのセキュリティとカスタマイズ性を求める金融機関や大企業に適しています。特筆すべきは、既存のコアバンキングシステムとの接続が可能であること。これにより、デジタル資産の運用を既存業務にシームレスに統合できます。

強固なセキュリティを支える技術
Hybrid SaaSおよびオンプレミス構成では、IBMのハードウェア基盤LinuxONEに加え、鍵管理において東京基礎研究所が発明したOffline Signing Orchestrator(OSO)が重要な役割を果たします。
OSOは、ネットワークから完全に分離された環境で署名を自動化し、改ざん耐性を確保する革新的な技術です。さらに、このOSOはIBMチューリッヒ研究所でNISTのFIPS140-2 Level 4認証を唯一獲得しており、世界最高水準のセキュリティを保証します。
活用シナリオとメリット
- 金融機関:トークン化証券の発行・管理
- 企業:NFTを活用したブランド戦略
- 決済事業者:クロスボーダー決済の効率化
IBM Digital Asset Havenを導入することで、セキュリティリスクの低減、運用コストの削減、新しいビジネスモデルの創出が可能になります。
まとめ
デジタル資産は、今後の金融・ビジネスのあり方を大きく変える可能性を秘めています。IBMは、信頼性とセキュリティを重視したプラットフォームを通じて、企業や金融機関のデジタル資産戦略を支援します。特に、オンプレミスという業界唯一の選択肢と、LinuxONE+OSOによる世界最高水準のセキュリティは、IBMならではの強みです。今こそ、デジタル資産の世界に踏み出す第一歩を考えてみませんか?