IBM System z10以降のサーバーとDS8000シリーズの組み合わせで使用可能な「zHPF」(High Performance FICON for IBM z Systems)は、DS8000に格納されたデータへのアクセスを効率よく行うためのプロトコルで、I/Oパフォーマンスの向上が期待されます。
※通常のCCWチャネル・プログラムが全ての装置をサポートするのに対し、zHPFチャネル・プログラムはDASD装置のみをサポート(VTS装置は対象外)
zHPFの機能を活動化するには、PARMLIB(IECIOSxx)メンバーにて「ZHPF=YES」(省略時値: NO)パラメータの明示指定、あるいは、SETIOS ZHPF=YESコマンドの実行が必要です。
また、z/OS V2R1、DFSMS APAR OA34671(対象: z/OS V1R11~V1R13)では、BAM(BSAM/QSAM/BPAM)向けのzHPFサポートが提供され、PARMLIB(IGDSMSxx)メンバーの「SAM_USE_HPF(YES/NO)」新規オプション、あるいは、SETSMS SAM_USE_HPF(YES/NO)コマンドによる制御が可能です。
※zHPFが使用可能で活動化されている場合、BAMがzHPF機能を使用する(YES)、使用しない(NO)(省略時値: YES)
【z/OS V2R2の変更点】
■z/OS V2R2以降でzHPF機能が活動化された場合、DFSORTのSORT、MERGEアプリケーションは、SORTIN、SORTOUT、OUTFILデータセットのアクセスに対して、従来のEXCPに代わりBSAMを使用することで、zHPF機能を活用したスループット向上を図ります。
※PARMLIB(IECIOSxx)メンバー: 「ZHPF=YES」パラメータ指定(省略時値: NO)
※PARMLIB(IGDSMSxx)メンバー: 「SAM_USE_HPF(YES)」新規オプション(省略時値: YES)
■SORTアプリケーション実行時の挙動例 ※入力(SORTIN)、出力(SORTOUT)
■zHPF機能を活動化している場合、SORT処理でOUTFILデータセット使用時の挙動例 ※入力(SORTIN)、出力(OUTFIL FNAMES=OUTPUT)
(参考情報) z/OS V2R4、あるいは、DFSORT APAR PI99290/PH03085/PH04732(対象: z/OS V2R2、V2R3)では、SORTWORKデータセットのアクセス(EXCP操作)に対して、zHPF機能が使用可能となりました。
【機能変更に伴う考慮事項】
■DFSORTのSORT、MERGEアプリケーションで、SORTIN(SORT)、SORTINxx(MERGE) DDステートメントにて「BUFNO=n」、あるいは、「DCB=BUFNO=n」パラメータ指定(最大値: 255)が行われている場合、次のような環境変化をトリガーとして、ABEND878-10(バッチジョブのREGION不足)発生に至る可能性があります。
※PARMLIB(IGDSMSxx)メンバーで「SAM_USE_HPF(YES)」オプション(省略時値)を使用中の前提
環境変化➀ zHPF機能を活動化している環境で、z/OS V2R2を越えてアップグレードする場合(例: z/OS V2R1からV2R5移行など)
環境変化➁ z/OS V2R2以降の環境で、zHPF機能を活動化する場合(「ZHPF=NO」(省略時値)から「ZHPF=YES」への設定変更)
■➀、➁のような環境変化に伴い、SORTINをアクセスする際の方式が、EXCP(変更前)からBSAM(変更後)に変化することで、これまで無視されていたSORTIN DDステートメントの「BUFNO」パラメータ指定が急に有効化されます。
※例えば、BLKSIZE=27998、BUFNO=40パラメータ指定の場合、SORTIN DDのOPEN処理で、約1100KB(27998 x 40)の仮想記憶域が「16MB下」に追加で確保されるため、REGIONサイズを圧迫
環境変化➀ PARMLIB(IECIOSxx) ZHPF=YES ・・・ z/OS V2R1とV2R5の挙動比較
環境変化➁ ZHPF=NOからYESへの変更(z/OS 3.1)
■SORTINデータセット向けのバッファー管理はDFSORTが独自に行うため、「BUFNO」パラメータ指定は無意味となり、DDステートメントから削除することが推奨です。
※BSAMアクセスの場合、DCB 「BUFNO」パラメータ指定の省略時値は「0」となり、OPEN処理中のシステムによるバッファー取得は発生せず
【関連情報】
■DFSORT: Abend S878-10 in ICEMAN using BUFNO(2019年9月 作成)
https://www.ibm.com/support/pages/node/1088860
以上