従来、ICFRU(ICF Catalog Recovery)ユーティリティー(PGM=CRURRSV/CRURRAP)は、ICFカタログのリカバリーを行う目的で利用されています。
※IDCAMS EXPORT TEMPORARYコマンドで作成したカタログのバックアップに対し、SMFタイプ60番台レコード(61-Define、65-Delete、66-Alter)による差分を適用することで、フォーワード・リカバリーを実施
元々、ICFRUは有償プログラム製品(5798-DXQ)として提供されていましたが、z/OS V1R7(2005年)以降、DFSMSの標準機能として含まれています。
【z/OS 3.1の変更点】
■z/OS 3.1 DFSMSでは、IDCAMSユーティリティーのRECOVERコマンド(短縮形:REC)が新規サポートされ、ICFRUの起動が単一コマンド(RECOVER)にて実行可能となりました。
※RECOVERコマンドでは、ICFRU(PGM=CRURRSV/CRURRAP)実行時のパラメータ指定を踏襲
■同時に、TSO向けのRECOVER、RECコマンドが、SYS1.CMDLIBデータセットに対して新規追加されました。
【z/OS 3.1移行時の影響】
■ログオン・プロシージャーのSYSEXEC DD(REXX)、SYSPROC DD(REXX/CLIST)連結に、RECOVER、RECという名前のREXX/CLISTを格納して、「%」指定なしで実行している場合、z/OS 3.1では、新規追加されたRECOVER、RECコマンドが呼びされます。
※EXECコマンドにてREXX/CLISTメンバー(RECOVER、REC)を明示的に実行する場合は、z/OS 3.1での挙動変化なし
■この事象発生を回避するには、REXX/CLIST実行時の名前を、「%RECOVER」、「%REC」にそれぞれ変更する必要があります。
※「%」を先頭に付加することで、モジュール(コマンド)の探索を迂回し、SYSEXEC/SYSPROCの順に探索
※TMPバッチ・ジョブ実行時に同様な対応を行わない場合は「CC12」で終了(EXEC PGM=IKJEFT01,PARM=’RECOVER’、あるいは、//SYSTSIN DDステートメントでのRECOVER指定など)
■SYSEXEC/SYSPROC DD連結内に、「RECOVER」メンバーが存在しない場合、「%」指定なしの「RECOVER」コマンドを意図せず実行すると、z/OS 3.1で新規追加された「RECOVER」コマンドが呼び出されます。
【考慮事項➀】
■z/OS 3.1では、古くVSAMカタログ時代の名残であるAMSコマンド・プロセッサー(EXPORTRA、IMPORTRA、LISTCRA、LISTR、MPRA、XPRA)が、SYS1.CMDLIBデータセットから削除されました。
※「CRA」(Catalog Recover Area)はカタログ・レコードのコピーを含むESDSで、回復可能(RECOVERABLE)なVSAMカタログを含む各ボリューム上に作成
■使用される機会がないものの、下記のようなPARMLIB(IEALPAxx)メンバーを定義し、MLPAへのモジュール・ロード処理が今でも行われている場合、z/OS 3.1のシステム初期設定時には、IEA301Iメッセージ出力を伴い、処理続行されます。
■IEA301Iメッセージ出力を回避するには、z/OS 3.1ではもはや存在しないモジュール定義(INCLUDEステートメント)を削除する必要があります。
【考慮事項➁】
■z/OS 3.1 ISPF提供のISPTCMAソース(ISP.SISPSAMP)、ISPTCMモジュール(ISP.SISPLPA)には、z/OS 3.1で削除されたAMSコマンド・プロセッサー(前述)の定義が相変わらず残っています。
■「FLAG=02」は、「コマンド・プロセッサー」であることを示す一方、z/OS 3.1ではモジュール自体が存在しなくなったので、例えばEXPORTRAコマンド実行時には次のようなABEND806-04が発生します。
■ISPF APAR OA67523にて、上記一連のエントリーが削除された結果、対象コマンド(6種類)を仮に実行した場合でもABEND806-04は発生せず、「IKJ56500I COMMAND EXPORTRA NOT FOUND」などのエラー・メッセージが出力されます。
※z/OS 3.1 ISPF APAR OA67523(PTF UJ97184)※2025年5月出荷 https://www.ibm.com/support/pages/apar/OA67523
■ISPF APAR OA67523では、z/OS 3.1で新規追加されたRECOVER、RECコマンドプロセッサー(FLAG=02)が、ISPTCMAソース(ISP.SISPSAMP)、ISPTCMモジュール(ISP.SISPLPA)に反映されました。
以上