テクノロジーが飛躍的に進化し、生成AIの登場によってITの「決定的な転換期」が訪れています。2024年、100号となるProVisionでは、このIT転換期においてIBMの考える重要な5つのテーマを取り上げて特集していきます。IBMフェロー、技術理事がそれぞれのテーマを紹介します。
スマートフォンで世界中の人と随時つながり、手のひらの中に大量のデータを持ち歩け、コンピューティング・リソースも瞬時に確保でき、その上、自然言語で様々な問いかけに応えてくれる知識豊富なAIを多くの人が手にしています。モバイルやクラウドを活用しデジタル・トランスフォーメーションを進めていた中、テクノロジーは飛躍的に進化し、その代表例とも言える生成AIの登場によって「決定的な転換期」がITにもたらされました。果たして、私たちはこれら全てを使いこなし十分に生産性を向上したと言えるでしょうか。 世の中を便利にできたと言えるでしょうか。 それがまだ十分でなければ、進め方を変える必要があります。ITの変曲点をとらえ、進化を自分のものとし、働き方や世の中を本当に変えていくためのテクノロジー活用の明確なビジョンとロードマップが必要となります。
2024年、創刊30周年、通巻100号となるProVisionでは、このIT転換期におけるビジョンを描く企業のために、IBMが考える5つのテーマについて特集します。
大きなITの転換期は、実はこれまでにもいくつかありました。それらは克明にProVisionに記録されています。過去という歴史を学ぶことは、現在ひいては未来への考察に必ずやつながっていきます。ProVisionに記された歴史と先人の歩みを振り返りながら「1. ITのフロンティア」とはどうあるべきかを考えていきます。また、世の中を変える起爆剤となっているAIに関しては、誰もが安心して利活用できるように高めてゆくことが求められています。そのためには最初にAIのリスクをしっかり把握し、あらかじめ対処しておく必要があり、「2. AIの信頼性」が重要になります。
そのAIの適用分野として大きく二つ、「3. IT変革のためのAI」と「4. ビジネス変革のためのAI」を取り上げます。AIによるIT変革としてはコード生成やIT運用の高度化などが考えられますが、その活用はまだ緒についたばかりです。ビジネス変革においては、生成AIで営業日報や稟議書のドラフトの作成をするなど多くの分野で適用が開始されていますが、業務を大きく変革させるところまではまだ到達していません。ここではAI活用の現状をとらえた上で、企業が抱える課題に対しAIで何が解決でき、何をどう発展させることができるのか、事例を交えながら考察していきたいと考えています。さらにその先のビジョンを描くためには、次世代テクノロジーの方向性を把握しておく必要があります。IBMが考える「5. コンピューティングの未来」は、ビジョンを実現するためのロードマップ策定に役立てていただけると思います。
2024年、私たちが直面する大きなIT転換期において、ProVisionが過去を振り返り未来の方向性を示す羅針盤としてお役に立てれば幸いです。
1. ITのフロンティア
ここでは、ProVision30年そして100号の歩みを振り返りながら、この間にどのような変化が起き、何を学び、そしてこれからの未来がどうなるのか、読者の皆さんと考える場にしたと思います。
例えば、1994年に発行された創刊号の特集テーマは「適材適所のコンピューティング」。クライアント/サーバー技術の広まりにより、固定的な接続形態から解放され、多種多様な資源をネットワークを通して柔軟かつ効率的に利用する、分散コンピューティングが大きなインパクトをもたらすことが示唆されていました。
翻って、今私たちは大きな歴史の転換点にいます。AIや量子コンピューターなど新しい技術が急速に進展する中、今まで蓄積してきたコンピューティングの資産を活かしながら新しい可能性が広まろうとしています。IBMでは将来のコンピューティングとして,従来型古典コンピューティング 、AIを効率よく処理できるAI システム 、そして量子コンピューターの3つの異なる特性のコンピューターをハイブリッドクラウドの技術をベースに統合させるビジョンを掲げています。量子コンピューター単独で成長するのではなく、より高度な分散コンピューティングの技術のもと、新たな成長を図って行くものです。
これからのコンピューティング未来を築く上で、30年前に示された視座は、脈々と生きています。
高橋志津 日本アイ・ビー・エム株式会社 理事
#ProVision
#ProVision-AI
#Highlights-home
#Highlights