「2022年ナレッジモール論文*」のなかでも特に優秀な成果をあげられた活動をご紹介します。
* 色々なお店が集う「モール」のように、企業、業界、世代の枠を超えた仲間と自主的に研究活動をする取り組みの成果物です。詳細はこちら
IBM Community Japanメンバー部門
A. 事例型論文
最優秀賞
デジタルプラクティス賞
Eメールセキュリティサービスをすり抜ける不審メールの傾向と対策の検討
株式会社エネルギア・コミュニケーションズ 伊藤 峰行
本論文では、Eメールの件名に基づく不審メール分類をテーマに、機械学習と自然言語処理を用いたログ分析の効率化について述べています。近年様々な分野で利活用の進むAI・機械学習技術は、高度な専門知識が必要でユーザ企業には敷居が高いと思われがちですが、オープンソースソフトウェアを活用することで、未経験者でも費用をかけずに短期間でシステムを構築できるようになりつつあります。本取り組みが組織の属人的な運用を見直し、生産性の向上に繋がるヒントとなれば幸いです。
優秀賞
コロナ禍の重要サービスを支えるコールセンターの挑戦
−「VUCAの世界」で求められる資質と情報システム−
株式会社STNet 宮﨑陽介株式会社STNet 斉藤薫
当論文では、主に2つのテーマを扱っています。1つは「事例」です。自社サービスのコールセンター業務にAIチャットボットを導入する事例をもとに、
導入に至った経緯・目的、苦労した点や導入後の効果、課題について紹介しています。もう1つは「考察」です。このAIチャットボット導入の事例を通じて、将来予測の困難な現代(VUCAの世界)における「付加価値の高い情報システムのあり方」と「その実現に求められる資質」を考察しています。執筆者のように従来型の業務システム開発に従事している方が、DXやメガクラウドといったキーワードを読み解くときの参考になれば幸いです。
B. 提言型論文
高齢化社会を活性化する交流ネットワーク改革の提言
一般社団法人PMI日本支部 アドバイザー 高橋正憲TGS 大金正親鴨会本部 塚本明人キンドリルジャパン・テクノジーサービス株式会社 野尻一紀
高齢化社会の活性化は高齢者だけのためではない。活性化のために若者、現役世代、高齢者、すべての世代のウェルビーイングを目指す。その根底に多世代交流ネットワークの構築が必須であるが、いま手中にあるテクノロジーによる解決策も技術進歩によってたちまち陳腐化してしまう。本稿はリーンスタートアップの手法を応用して仮説検証を繰り返し、持続的に解決策を探索する取組みを提言する。
システムのレガシー化を防ぐ技術継承手法
株式会社NTTデータフィナンシャルテクノロジー 井筒敬彦
2018年のDXレポートから早4年。2022年のDXレポート2.2ではいまだにレガシーシステムに対する守りの投資から脱却できていない実情が浮き彫りになっています。当論文は、人的側面から属人化やブラックボックスの解決によるシステムのレガシー化からの脱却・予防を目的としています。実態調査と心理学による分析をもとに、問題点やノウハウをまとめた技術継承ガイドラインを開発し、その効果を検証しました。レガシーを脱却したい・予防したいと考える担当者にはぜひ一読していただきたい内容です。
IBM部門
機械学習技術の活用による データベース運用管理コストの軽減
日本アイ・ビー・エム株式会社 テクノロジー・ライフサイクル・サービス 林 克子
当論文では、メインフレーム上のデータベース環境のパフォーマンスや例外事象の分析を、内蔵のAIと機械学習技術により効率的かつ的確に実行するツールの実機検証を通じて、その有用性とデータベース管理業務の負荷軽減の可能性を解説しています。複雑化・大規模化するデータベース環境の安定運用を維持し、膨大なデータ分析などの属人的な仕事やストレスからデータベース管理者を解放してより価値の高い戦略的な活動にシフトしていくために、このような技術の活用をご検討いただくきっかけとなれば幸いです。
*奨励賞は都合により非公開とさせていただきます。
テープドライブのデッドトラック数とストップライト数による キャリブレーション実施条件の適正化
日本アイ・ビー・エム株式会社 宮村剛志IBM Corporations Ernest Gale日本アイ・ビー・エム株式会社 田中啓介
テープドライブは、高いセキュリティでかつデータ損失のリスクが極めて低く、大容量のデータを高速に読み書きできるストレージデバイスです。それを実現するために、テープドライブのヘッドから、非常に高い面密度でテープメディア上にデータを書き込みます。本論文では、メディア上に最大の信号強度で書き込むために実施している、ヘッドのキャリブレーションの実施条件について議論しています。大量のデータを保管する方法を探していらっしゃる皆様や、テープドライブをご存じない方々にも、ぜひ読んでいただき内容となっております。
物体検出における学習データの品質改善手法
日本アイ・ビー・エム株式会社 テクノロジー事業本部 テクノロジー・サービス 長井 真吾日本アイ・ビー・エム株式会社 テクノロジー事業本部 テクノロジー・サービス 若林 丈紘
本論文では、深層学習による画像認識の実用化にあたって、物体検出におけるモデルの予測精度の向上のために、学習データの品質を効率的に改善する手法を提案しています。提案手法の検証においては、実業務で取り扱うデータを想定し、手動のラベリング作業で発生し得るラベルのノイズをシミュレートした上で実証実験を行い、その有効性を検証しました。学習データの品質を担保することの重要性やその困難さは広く認識されている課題であり、本提案手法が課題解決の一助になれば幸いです。
ナレッジモール論文 最終審査員 (*所属・役職等は2022年11月時点の情報です)
審査委員長
森本 典繁
日本IBM(株) 常務執行役員 最高技術責任者 兼 研究開発担当
提箸 眞賜 様
NPO法人 CIO Lounge 理事
大内 美樹 様
東京海上日動システムズ(株) GRC支援部 推進役
川添 祥宏 様
みずほリサーチ&テクノロジーズ(株) 技術・事業開発本部 事業開発部 アライアンスマネージャー
久波 健二
日本IBM(株) 技術理事 ハイブリットクラウドサービスCTO、TEC-J プレジデント
倉島 菜つ美
日本IBM(株) 技術理事 インタラクティブ・エクスペリエンスCTO COSMOSリーダー
我妻 三佳
日本IBM(株) 常務執行役員 IBMコンサルティング事業本部.ハイブリッド・クラウド・サービス担当
村澤 賢一
日本IBM(株) 執行役員 テクノロジー事業本部 クライアント・エンジニアリング担当
小原 盛幹
日本IBM(株) 技術理事 東京基礎研究所副 所長
坂本 佳史
日本IBM(株) 技術理事 エッジコンピューティングCTO
田端 真由美
日本IBM(株) 技術理事 Hybrid Cloud Management, Delivery Transformation 担当