我々は今、激しいビジネス変化の真っ只中にいます。生産年齢人口が激減する中、様々な情報がデジタル化され、手作業や読取作業、意思決定やエキスパート作業、など日々増え続けており、現場はいわゆるカオス化しています。カオスな業務現場を救済する鍵となるのは自動化技術と考えます。
業務を効率化するだけでなく、関係者全員の仕事と生活の質の向上を目指した最新の自動化ソリューションについて、シリーズ化してご紹介します。
第二弾では、労働力不足の救世主となり得るwatsonx Orchestrateを紹介します。
次世代デジタル・レイバー watsonx Orchestrate
業務オペレーションをできるだけITテクノロジーで自動化し効率化を図る業務改革のエリアにも、AIの力でより生産性を向上しようという波は大きく押し寄せています。ビジネスシーンを劇的に変える、最新のインタラクティブAIテクノロジーを見てみましょう。
日々のオフィスワークにおいて、例えばこんなお悩みありませんでしょうか?
- 毎日ミーティングだらけ、議事録をまとめてシェアしなきゃいけないが溜まっている。
- 案件に関する内容なので案件管理システムにインプットも必要になるし、マネージャーの承認をもらわなきゃいけない。
- 様々なシステムの利用が必要だが使いこなせていない、特に基幹システムは難しく使い方が良くわからない。
- 時間が足りず、本当にやらないといけない仕事にはなかなか手が回らない。
これは、いろいろやることが多すぎて忙殺され疲弊してしまい、本来やるべき本質的な仕事に集中できていない状況と考えられます。
また、業務軸で見てみても、それぞれのエリアで様々な悩みがあります。例えば品質管理/IT運用管理のエリアですと、担当者はトラブルが発生時に早く解決/復旧させたいと思うのですが、調べるポイントが多く複雑でどこから手をつければいいのかわからない、という状況があるでしょう。また、コールセンターでは、お客様と会話するまでどんな要望なのかわからず、事前に処理画面や対応の流れを想定することは難しいと思います。更に、災害/危機管理のエリアでは、異常気象などで突発的なインシデントが発生する昨今、それらの予測回避が望まれますが、状況が多岐にわたり判断が難しく、担当者のプレッシャーが大きくなっています。これらは、処理画面や対応の流れを事前定義するナビゲーションが難しく、都度判断が必要になり大きな負担がかかる状況と考えられます。
いずれの状況においても、解決の鍵の一つは自動化ソリューションと考えます。つまり、ITソリューションで可能なことは、人が実行するのではなくできるだけITソリューションで自動化する考え方です。そうすることにより、人は雑多な作業から解放され、本来やるべき本質的な仕事に集中することができるようになります。
そこで、自動化の現状を、業務の種類に照らし合わせて考えてみたいと思います。以下の図は、ロングテール・グラフと言われる、業務の種類を簡単に分類したグラフになります。左の赤い部分は、全社のいろいろなシステムやサービスを統合し、部門をまたがって多くの人が関連して、End-to-Endの処理を多量に実行するタイプの業務となります。真ん中の黄色い部分は、人が中心になり様々なソリューションを駆使して実行するタイプの業務です。更にその中でもシンプルな業務が緑の部分となり、ずっとなだらかに続いていく構造になります。
このグラフの中で、ITシステムで自動化を促進しているのは、下図青色で囲んだエリアになると考えます。このエリアの業務は全社的で関係者も多く処理ボリュームも大きいため、十分な投資対効果(ROI)が見込めます。ただ一方で、個人の生産性を阻害する業務は、下図茶色で囲んだエリアに多くあると考えられます。主に個人の作業で種類が多く処理数は少ない、いわゆる少量多品種の業務が多く、一つ一つにITシステムで対応するとROIが見込めないため、自動化の優先度を下げざるを得ないという状況にあります。また、両方のエリアをまたがって、画面や処理の流れなどを事前定義して標準化/共通化することが難しく、なかなか自動化が進まないエリア(下図紺色)もあります。
その結果、IBM調べによると、ITテクノロジーで完全に自動化ができている職種はわずか5%しかなく、残り95%はまだまだ進んでいない状況にあります。そのような職種に自動化を促進するには、単なる実行を自動化するソリューションだけでなく、認知能力が必要と考えられます。
それでは、自動化に於ける認知能力にはどういうものが必要か、ということを考えてみます。まず、画面や処理の流れを事前定義することが難しい業務が対象なので、自然言語でやり取りができるチャット・インターフェースが威力を発揮します。チャットは曖昧な問いかけから始まるケースが多いため、それを具体化していく、つまり利用者が何がしたいのか明確にし正確に把握するために、相互作用しながら要求意図を絞り込んでいくガイダンス能力が重要になります。利用者の要求意図が把握できますと、それを実現するためには何をどういう順番で実行すれば良いかを考える力、すなわちダイナミックシーケンスという能力が必要になります。また、何をどういう順番で実行すれば良いかを考え判断したら、実行できるものは実際に自動実行する能力も必要と考えます。
これら3つの能力を備え、エンタープライズで更なる自動化を促進するポイントは、大きく以下の二つが重要と考えています。一点目は、相互作用です。標準化/共通化が難しい業務に対して、チャットによる双方向対話を通してシングル・インターフェースで利用者の意図を正確に把握することが重要になります。二点目は、エンタープライズ・ワイドに多様な業務に対応できるポイントです。重要な業務は、Officeアプリや昨今の外部サービス(SaaS)だけではなく、昔ながらの基幹システムの上で実行されているものが多いと思われます。企業全体をカバーするエンタープライズ・ワイドなオーケストレーション・プラットフォームを実現し、個人のオフィスワークだけでなく、コア業務まで多様な業務に対応することが重要と考えています。
これらのポイントを、業務現場に当てはめてみます。オフィスアプリからホストシステムまで多様なシステムの上で、生成AI / RPA / ルールエンジン / ビジネス・プロセス管理 / など様々な自動化ソリューションが稼働しています。利用者がその都度どのソリューションのインターフェースを利用して業務を実行するか考えるのではなく、利用者と各ソリューションの間に、生成AIで双方向の相互作用を制御し、機械学習で処理の流れを判断するソリューションを配置することによって、自然言語によるシングル・インターフェースで対話を通して要求意図を正確に理解し、実行すべき作業の動線を考えオーケストレートして自動実行することが可能になります。これらの能力を備え持った次世代デジタルレイバーとして、watsonx Orchestrateというソリューションを提供しています。スキルという自動化ソリューションをカタログ化し、例えば、レガシーな基幹システムが必要な場合には、IBMが長年培ってきましたシステム・インテグレーション、すなわちシステムを柔軟に簡単につなぐソリューションを通して連携することが可能なアーキテクチャになっています。
そこで、実際に自動化を担うスキルというものが重要になります。watsonx Orchestrateは、大きく二種類のスキルの形態を提供しています。一つ目は、業務で良く使われるサービスやパッケージ(Salesforce、MS Office、Slack、SAP、Oracle、etc)機能を製品の中にプリセットしてすぐに使っていただける形で提供するプリビルドスキルになります。プリビルドスキルは、要望に合わせて幅広く追加拡張し、提供いく予定になっています。プリセットされたスキルだけでは必要な業務を自動実行できないケースは多々あります。そのようなケースに対応するため、二つ目形態としてカスタムスキルの仕組みを提供しています。カスタムスキルは、OpenAPIに準拠
したサービスであれば、その定義からディスカバー機能でコーディングなしにスキル化し、生成AIでトレーニングすることで、すぐに自動化に利用できるようにする機能を兼ね備えています。
以下に、カスタムスキルの作成方法を説明します。
- Cloud Pak for Business Automation (CP4BA) 、外部のサービスやアプリケーション、watsonxなどの生成AI、などで、自動化サービスを用意します。
- 自動化サービスをOpenAPI仕様で公開します。
- watsonx OrchestrateにOpenAPI定義をインポートすることでスキル登録し、生成AIで呼び出しの発話例を自動生成して自動トレーニングします。
実際の利用イメージを、簡単なシナリオで説明します。利用者が、“議事録をまとめてチームにシェアして”と話しかけます。オンラインでの録画があるミーティングの場合、まずその録画から文字起こしのスキルを使って文章を起こし、膨大な量の文章を生成AIスキルで要約/分類します。分類によりミーティングの議題がわかると、必要なチームにメールやメッセージングなどのスキルで要約した議事録をシェアします。このように、ひと言話しかけると要求意図を理解し、必要なスキルを自動判断して自動実行します。ただ、これだけでは終わらず、ミーティングの議題に応じて次に取るべきアクションを推奨します。例えは、案件に関する議題の場合、案件管理システムに登録してマネージャー承認を取る、という次のアクションを推奨します。実行を依頼すると、案件登録を行い承認依頼のワークフローを起動します。マネージャーの承認が終わると、それをトリガーにオーダー投入を推奨します。利用が難しい基幹システムに対しても、自動で難なく実行が可能になります。このように、あまり経験がなく業務のやり方がわからない利用者や、普段あまり実行しない業務でやり方を忘れてしまった利用者であっても、業務遂行が可能になります。
このシナリオを、watsonx Orchestrateを利用した実際のデモでご覧ください。
<ビデオへのリンク>
必要な下調べや段取り、情報収集などなど複数のシステムにまたがる複雑な作業を、watsonx Orchestrateが自ら判断し実行します。人は、“本来の本質的な作業”に集中でき、能率的で充実した毎日が過ごせます!
第三弾以降も、自動化ソリューションの各技術要素を深掘りしていきす。乞うご期待!(Stay Tuned!)
シリーズのリンク:
効率化を超越!仕事と生活の質を上げる自動化ソリューション①:Cloud Pak for Business Automation (CP4BA) 全体概要編
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