コンピューターの歴史の中で、その主要な要素であるサーバーとストレージは車の両輪のようにコンピューター・システムの進化をけん引してきました。サーバーに対してはさまざまな要求があり、非常に複雑な進化をたどってきています。これに対してストレージは、容量、レスポンス・タイム、データ転送スピード、コストというシンプルな要求事項に応える形で、比較的分かりやすい進化をたどってきました。しかし、サーバーが仮想化、地球規模の分散化へと進化するのに伴い、ストレージにもシステム全体としての最適管理、障害復旧の容易性を実現する機能が強く求められるようになり、近年ではそれに応える形で非常に高機能化してきています。従来のシステム構築では、データの属性、サイズ、処理内容などはあらかじめ定義されるため、ストレージの管理体系もシステム構築時に整然と定義することが可能でした。これに対して情報が爆発的に増加し続ける現在は、インターネットに接続されたあらゆる物から吐き出されるデータが処理対象であるため、データの種類、質、量、ライフサイクル、さらにはその価値も予測することが難しくなってきており、データの最適配置・管理という観点においても仮想分散サーバー環境の構築は単純ではありません。システム全体を見渡し、最適なストレージ環境の構築、維持管理を人手で行うことが困難になっている今日、ストレージ・システムには自律性、自己最適化といった機能が不可欠な要素となり、ストレージの進化に新たな潮流が生まれつつあります。ビッグデータ時代のストレージ・システムの新しい在り方を示すビジョンとして、IBMは「IBM Smarter Storage」を提唱しています。本特集ではその背景と、将来の方向性について事例を交えて分かりやすく解説しています。本特集がお客様のビジネス変革をけん引するストレージ・システム構築のご参考になれば幸いです。
2013年5月 PROVISION 77号 コンテンツ・リーダー 西野 清志