PROVISION 51号「実用期を迎えたSOA」から2年がたち、その後のSOA(Service Oriented Architecture:サービス指向アーキテクチャー)普及の進展について知りたいというご要望をいただきPROVISIONとして2度目のSOA特集となりました。2年前の特集では、SOAには何が必要でどのような技術を使うべきかという議論が主流でしたが、今回の特集では、SOAによって企業や社会がどう変わるかというところに焦点を当てました。この2年の間に多くの企業がSOAに取り組んできましたが、最初に目標としたのが、「サービスの組み合わせによる柔軟なシステムを作る」ということでした。これはシステムのサービス化やビジネス・プロセスの外部化、接続プロトコルの標準化などにより大きな効果が得られました。しかし、大きな経済状況の変化などにより、システム構築の観点でSOAの技術を利用するだけでなく、企業の変革のためにSOAを活用するケースも増えてきました。その一つは「サービスの再利用」です。これは既存システムやコンポーネントを一つのソフトウェア資産(アセット)として効果的に再利用し、新規構築部分と組み合わせて新しいビジネスを迅速に提供するということです。もう一つは「サービスの共有」で、これまで個別に維持管理してきたシステムを、企業間や自治体間などで共有することで全体最適を図るということです。サービスの再利用・共有においては、より少ない投資で、迅速かつ確実にビジネスの変革やコスト削減を実現するための手段としてSOAのコンセプトが活用されています。一度構築したアプリケーションや基盤をグループ企業で再利用したり、複数の自治体や企業で一つのサービスを共有したり、既存システムを他社に対する共用サービスとして提供したり、SCM自体をインターネット経由でアウトソースしたり、各拠点で維持管理していたシステムを一つに集約したりといった変革をすでに実現している大規模事例も増えています。IBMでは、地球全体をもっとスマートにするSmarter Planetというビジョンを提唱しています。その中の重要なテーマの一つとして、SOAを活用した変革などにより我々のビジネスの在り方をよりスマートに変えていくSmart Workを掲げています。今後Smart Workの取り組みは世界規模に広がり、Smarter Planetの先駆者として位置付けられていくでしょう。
2009年5月 PROVISION 61号 コンテンツ・リーダー 二上 哲也