人材の育成は、業種・業態を問わず、あらゆる企業にとって永遠の課題です。育成の制度’運用ルールをいったん決めたとしても、社会や企業が刻々と変わりいく中で、求められる人材そのものが変化し、制度の変革が必要となるからです。変化し続ける時代の中で、企業の市場価値を高め競争優位に立つためには、いかに優秀な人材を確保し、育て、市場価値の高いプロフェッショナルとして活躍してもらえるかが重要です。その結果として、社員個人のエンプロイアビリティー(企業内だけでなく、外部労働市場でも通用する職業能力)や、社員の満足度を高めていくことができるかどうかが、企業と個人の将来を大きく左右すると考えられます。そのような新しい視点から、人材の育成に注目する企業が増えています。ビジネス環境が刻々と変化する中にあって、「人材(ヒューマンリソース)」を、常に新しい付加価値を生み出し続ける重要な経営資源・財産である「人財(ヒューマンキャピタル)」ととらえ直し、育成と活用の方法を探る新たな試みが成果を挙げつつあります。こういった取り組みの中で、企業と社員の関係を、「経営者と雇用される労働者」ではなく、「お互いに自律し、お客様に価値をお届けするという共通の目的を持ったパートナー」ととらえ直すようになってきました。すなわち、社員個人の意欲と成果を尊重するWIN-WINの関係であるべきだと考えられるようになり、育成に関するイノベーションの重要性が強く認識されているのです。イノベーションとは、従来は「技術革新」を表す言葉として用いられてきました。しかし、現在では技術のみならず、過去の経験を超えた革新的な戦略・発想に基づいて新たな価値を創造することであり、社会に大きな変革をもたらし、飛躍的な発展につながる原動力を生み出すことを指すように変化してきました。新たな「人財」の育成という観点からも、イノベーションすなわち新たな方向へ進んでいくべき時を迎えたということだと思われます。今回の特集「人材育成イノベーション」では、「人材」から「人財」の育成への新たな変革をテーマに、日本アイ・ビー・エム・グループでの取り組みや、人材育成の面でも意欲的にイノベーションに取り組まれているお客様企業のさまざまな施策をご紹介します。
2005年8月 PROVISION 46号 コンテンツ・リーダー 荒井 淳一