エンタープライズ・アーキテクチャー(EA)は、企業情報システムにおける全体最適を実現するための組織的な取り組みです。その原点はIBMのジョン・A・ザックマンが組織全体の活動をデータと機能(プロセス)の二つの視点を中心としてモデル化することの必要性を説いたことにありますが、以後その具体的な手法は年々進化し、適用領域を広げてきました。米国や日本の政府機関では既に採用されており、最近では国内企業にあってもEAの導入計画を進めている例が多く見られるようになっています。EAがあらためて注目されるのは、それが、経営と情報システムについての諸問題を抱える企業の救世主的な解決策であるからです。すなわちEAは、「従来からのシステムが個別最適を求めてきた結果、社内に多くの異システムや異機種が混在しており、もはや整理不能になっている」「次々と新しいIT(Information Technology:情報技術)が登場する中で、どこに向かってシステムづくりを進めていいのかが分からない」「経営のニーズを素早く柔軟に反映するシステムになっていない」「暗黙知が属人化しており、継承する仕組みが社内にない」「そもそもITの投資効果が分からない」といった深刻な悩みを解消する仕組みです。本号ではまるごと一冊、このEAを特集しました。EAは、経営層・ユーザー部門と情報システム部門が同じ土俵に乗って、情報システムのあるべき姿を検討して理解するコミュニケーションのための仕組みでもあります。そのことを編集にも生かしたく、各コーナーに反映させています。
2004年4月 PROVISION 41号 コンテンツ・リーダー 原田 奈美