ProVision

 View Only

エッジコンピューティングが開く未来 (vol98-0006-AI)

By IBM ProVision posted Fri September 16, 2022 05:34 AM

  
エッジ・デバイスからクラウドの間に配置される多種多様なコンピューティング資源。
効率化の実現により広がる未来を、日本IBMの「エッジコンピューティング」の最高技術責任者が解説
“Sakamoto.jpg"
坂本佳史 PH.D.
Sakamoto Yoshifumi
日本アイ・ビー・エム株式会社
技術理事兼エッジコンピューティングCTO, テクノロジー・オーケストレーション担当マネージャー
IBM Fellowに続く最高峰の技術系職位であるIBM Distinguished Engineer並びに日本IBMにおけるエッジコンピューティングの最高技術責任者。2014年に九州大学大学院でリバースモデリングとモデルベースシミュレーションを活用した組込みシステム開発手法の研究によりコンピューターサイエンスの博士号を取得。IBMの入社は1985年。これまでパーソナルコンピュータ、組込みシステム、およびASIC/ SoCの設計と開発を担当。その後、ASIC/SoC開発プロジェクトのアーキテクト兼プロジェクトマネージャーを経てSoC開発プログラムマネージャーを担当。九州大学大学院システム情報科学府非常勤講師。

エッジコンピューティングは近年、エマージング・マーケットの1つの領域として注目されています。エッジコンピューティングはそれ自体がテクノロジーを意味する言葉では無く、コンピューティング資源の活用の形態、すなわちフレームワークを現していることから、エッジコンピューティングの考え方やその応用領域には幅広いバリエーションが見られます。本稿ではそれらをデザイン・パターンとして整理しながらロジスティクス領域でのソリューション・コンセプトを紹介します。次にエッジコンピューティングの将来についてデータ・グラビティ、コンピューティング・グラビティ、エナジー・グラビティの観点で推測、更に エッジコンピューティングにIoT、 AI、数理解析、シミュレーション技術を統合的に組み合わせたデジタルツイン技術の将来について人間拡張の視点から考察します。

1. エッジコンピューティングとは?

エッジコンピューティング[1]とは一般的にはエンタープライズ・アプリケーションをIoTデバイスやエッジ・サーバーなどのデータ・ソース、すなわちデータを生成するロケーションの近くで実行するコンピューティング・フレームワークです。データの生成元に近接していることから応答時間の短縮によるリアルタイム・ソリューションの構築、ネットワークの帯域幅の節約、プライバシー保護や情報セキュリティーにおいて強力なメリットを得ることが期待されています。
IBMにおける「エッジ」とはエンドポイントとなるエッジ・デバイスだけを示すのでは無くエッジ・デバイスからのデータを処理するカスタマー・エッジ、ネットワークの基地局での処理を意味するネットワーク・エッジも「エッジ」に含まれます。ネットワーク・エッジはMulti-access Edge Computing(MEC)と呼ばれる場合もあります。したがって「エッジコンピューティング」とは、分散・並列・リアルタイムを実現するコンピューティングを実現するために、エッジ・デバイスからハイブリッド・マルチクラウド(以下、クラウド)までの間に配置される多種多様なコンピューティング資源を効率よく活用する事を実現するためのフレームワークを意味しています(図1)。

pic1
図1. エッジコンピューティング エッジ・デバイスからクラウドまで

エッジコンピューティングを活用する事によるソリューションの実現には多くのメリットが考えられますが本稿ではリアルタイム性、レジリエンシー、セキュリティーについて簡単に触れます(図2)。リアルタイム性の大幅な向上はエッジコンピューティングにおける最も顕著な特徴であり、ユーザー・エクスペリエンスの向上、すなわち待ち時間を大幅に短縮することでレスポンス性の良いサービスの提供を実現できます。更にInternet of Things(IoT)との組み合わせではリアルタイム性はさらに大きな価値を生み出します。これまで不可能だった短い時間での製造機器・生産設備のコントロールを実現できることから生産性の向上や品質マネジメント・プロセスの自動化、安全性の向上に寄与します。レジリエンシーの観点においては意図せぬネットワーク障害等でクラウドが利用できない場合においてエッジ・デバイスとカスタマー・エッジの連携でオペレーションを継続することで損失を最小化することが期待できます。加えて多数のデバイスで構成されるエッジ・デバイスやカスタマー・エッジを遠隔操作でシステムの復旧やソフトウェアの更新を行うことが可能になることからこれまでに実現できなかった高いレジリエンシーを実現できます。さらにセキュリティー、特に近年に重要とされているプライバシーの視点においてはデータ処理のシステム・リソースを最小限に限定することで必要以上にネットワークを介してデータをやり取りする必要が無くなり高い安全性を担保できます。
pic2
図2. エッジコンピューティングを活用する事によるソリューションのメリット

2. エッジコンピューティングのデザイン・パターン

複数の特性が異なるコンピューティング資源を、分散・並列・リアルタイムに効率よく、かつバランス良く活用する事がエッジコンピューティングであることから、このフレームワークを業務に適用する上でのバリエーションは非常に多いと一般的に考えられています。しかしながら、データ処理を実行するコンピューティング資源に着目してその他の項目、例えばエッジ・デバイスの種類や通信方法、ハイブリッド・マルチクラウド上でのソフトウェア構成等を機能に限定して抽象化することにより6種類のアーキテクチャー構成、すなわちデザイン・パターンに分類する事ができます。(図3)

ⅰ.強調処理
 エッジ・デバイスとカスタマー・エッジ、 ネットワーク・エッジとエッジ・デバイスでデータ処理を分担、それぞれのデータ処理結果を同期するパターン。例としてエッジ・デバイスで動画から人物の表情分析を行いクラウドで音声認識を実行。双方の結果から対象者の心理状態をリアルタイムで推測する。

ⅱ.オフロード
データ処理にリアルタイム性が要求されるにも関わらず処理時間がそれを満たさない場合、高速な処理系にデータ処理を分担させるケース。エッジ・デバイスやクラウドの単独の性能に依存するのでは無く負荷に応じて最良のコンピューティング資源を選択することでシステム全体のパフォーマンスを高める事が可能となる。

ⅲ.選択アップロード
エッジ・デバイスやカスタマー・エッジにおいて特定のデータパターンを検出、その判断結果を用いて必要なデータだけをクラウドにアップロードする。例としては工程の異常検出やAIによる外観検査、監視カメラ等が上げられる。

ⅳ.クローズド
コンプライアンス、セキュリティー、プライバシー等の理由からデータをローカルなネットワークもしくは専用回線から移動しないケース。ローカル5Gやプライベート5Gなどのモバイル・ネットワークの利用もこのパターンに含まれる。

ⅴ.デジタルツイン
エッジ・デバイスで処理された画像データやセンサー・データをカスタマー・エッジでデータ処理、データを用いてネットワーク・エッジもしくはクラウド、またはそれらの連携による仮想環境で現実世界を再現。仮想環境での処理結果をエッジ・デバイスへフィードバックして工程を制御、またはクラウドで処理結果を集約して他のサービスと連携するパターン。 エッジコンピューティングを中心としてIoT、 高速ネットワークとシミュレーション技術を統合したフレームワークであり今後、最も技術的な発展が期待される。

ⅵ.データキャッシュ
エッジ・デバイスからのデータをカスタマー・エッジで一時的に保管。ネットワーク・エッジやクラウドに定期的にアップロードする。例としては常時接続が期待できないモバイル環境での利用やデータ量が比較的少なくかつ要求されるリアルタイム性に強い制約がない場合にネットワーク資源を含めてコンピューティング資源を効率的に活用できる。
pic3
図3. エッジコンピューティングのデザイン・パターン

3. エッジコンピューティングにおけるコンピューティング資源の効果的な活用


エッジコンピューティングにおいてはエッジ・デバイスからクラウドまでのコンピューティング資源を効果的に利用することが重要なポイントとなりますが、それを実現するためにはそれぞれのコンピューティング資源の特性を理解する必要があります。AIの推論(インファレンス)を例にリアルタイム性、エネルギー制約、AIの性能あたりのコスト、ソフトウェアの可用性について比較します(図4)

pic4
図4. コンピューティング資源の特性

バランス良くコンピューティング資源を利用する例としては、エッジ・デバイスにはハードリアルタイム性(例. 1sec未満)が要求される機能や安全性の機能を割り当て、ハード・リアルタイム性が要求されない機能はカスタマー・エッジやクラウドに分担させます。これによってレスポンスが良く高稼働率、かつ低コストのソリューションを実現できます。他方、バランス良くコンピューティング資源を利用していない例としては、バッテリーで動作するエッジ・デバイス、例えばAutomatic Guides Vehicle (AGV: 無人搬送車)やAutonomous Mobile Robot (AMR: 自律走行搬送ロボット)に負荷の重い複数のAIによる推論やデータ解析を割り当てると、リアルタイム性能は向上しますがバッテリー制約で稼働率が著しく低下する事は想像に固くありません。すなわちソリューション全体の稼働率をエッジ・デバイスに搭載されたバッテリーが支配する事になり低稼働率で高コストなソリューションとなってしまうことに注意が必要となります。

4. ロジスティクス領域におけるエッジコンピューティングの活用

倉庫業務、生産物流などのロジスティクス領域においてはこれまでタイムリーなアクセスや分析、集約が難しかったデータがエッジコンピューティングを活用する事で扱えるようになることで自動化が進むと考えます。これによって労働力の不足を補い更に労働環境が大きく改善することで、産業の維持や技術伝承に貢献できる可能性があります。例として、製造現場においては生産設備や生産物流に用いられるロボットが5Gネットワークを介して制御される事で高い柔軟性、高い生産効率の生産ラインを実現できる可能性を見いだせます。

4.1  ソリューション・コンセプト:SmartV2Xフレームワーク
SmartV2Xフレームワーク(以下SmartV2X, 図5)はロジスティクスの領域においてエッジコンピューティングを中心に、ロボティクス、IoT、高速ネットワークとクラウドを組み合わせて活用することで生産物流や倉庫等での物流における自動化を実現する事を目的としています。主な特徴は、以下の3点です。

ⅰ.   工場やオフィス、倉庫、物流業務、インフラのメンテナンス等における“ロボット(移動体)”活用のフレームワークを提供
ⅱ.   各業務アプリケーションとユースケースを包括的に結合するデータ連携プラットフォームを提供
ⅲ.   データ取得から解析、利用までを包括的かつリアルタイムに実現
pic5
図5. ソリューション・コンセプト:SmartV2Xフレームワーク

4.2  SmartV2Xのフィーチャーと構成

SmartV2Xはシンプルに表現すると各種の複数のロボットをリアルタイムに遠隔操作、すなわちリモート・コントロールするためのデジタル・ツインのソリューションです(図6)。各種ロボットの状態は複数のビデオカメラと5Gネットワーク(ローカル5G/プライベート5Gを含む)や高速な無線ネットワークによって構成されるセンサー・ネットワークを介してネットワーク・エッジであるMECに動画として送信されます。MECで主に4つのアプリケーションがリアルタイムかつ並列にその動画を解析。個別のロボットの特定と障害物の推定(Object Recognition)、ロボットの位置推定(Localize)、 ロボットの地図上の位置推定(Map)、ロボットが次に進むべき軌道を算出(Trajectory planning)。算出された軌道データはネットワークを介してそれぞれのロボットに送信され、そのデータに従って移動することでリモート制御を実現します。これらの一連のフィーチャーはロボットの移動における回避行動や停止行動等のリアルタイム性を担保する必要性から通信のレイテンシー、すなわち通信による遅延時間の影響が小さく、かつそのレイテンシーが一定の範囲で保証できるMECでの処理を前提としています。
それぞれのロボットは荷物の運搬や施設の巡回、棚卸し等の業務が主目的でありそれらの業務に必要となる軌道や撮影ポイント等の振る舞いはクラウド上にあるアプリケーションによってMECのアプリケーションから5Gネットワークを介してロボットに指示されます。ビデオカメラからの動画データをMECに送信する場合とリモート制御データをロボットに送る場合のネットワークに要求される特性は同一では無いことには注意が必要となります。前者は高速・大容量と低遅延であり、後者では高信頼性と低遅延になります。
pic6
図6. SmartV2Xフレームワークの構成 

5. エッジコンピューティングの将来


エッジコンピューティングは、分散・並列・リアルタイムを実現するコンピューティングを実現するために、エッジ・デバイスからクラウドまでの間に配置される多種多様なコンピューティング資源を効率よく活用する事を実現するためのフレームワークである事はこれまで述べた通りです。
他方、大量にクラウドに集積されたデータを表す「データ・グラビティ(Data Gravity)」という概念があります。データ・グラビティとは、クラウドに蓄積されたデータ量が増大することでデータを移行したりコピーしたりすることがシステムの大きな負担になり多大なコストがかかるようになる事を意味しています。データだけでは無く演算処理や消費エネルギー量に同様なアナロジーを適用するとカリキュレーション・グラビティ(Calculation Gravity)、 エナジー・グラビティ(Energy Gravity)に思い至る事ができます。カリキュレーション・グラビティとは特定の処理系、例えばGeneral-purpose computing on graphics processing units(GPGPU)やAIアクセラレータへの依存が高まった結果、システムの運用や構築に大きな負担になる事を意味し、エナジー・グラビティとは特定のシステムやコンピューティング資源のエネルギー消費量、すなわち電力消費量が大きな負担となることを意味します。データ・グラビティ、カリキュレーション・グラビティそしてエナジー・グラビティは多様なコンピューティング資源を効率よく活用するエッジコンピューティングには大きな影響を及ぼすと推測できます。そこでエッジコンピューティングにおける各種グラビティの変化の予測をネットワークの世代の変化に基づいて予測します(図7)。
pic7
図7. 各種グラビティの変化の予測

現在は十分に高速なネットワークが活用されておらず加えてエッジ・デバイスの活用も限定的な事からそれぞれのグラビティはオンプレミスのシステムと同等なカスタマー・エッジ、そしてクラウドに集約されています。現在はまだフルスペックの速度が達成されていませんが5Gネットワークに代表される高速なネットワークとエッジコンピューティングの活用が進むとエッジ・デバイス、カスタマー・エッジ、クラウドのそれぞれのグラビティは一様に増加すると考えられます。これはこれまで活用されてこなかったデータを活用、さらにDigital Transformation (DX)によるデータ活用の増大が主な理由と推測します。5Gネットワークがフルスペックの性能を発揮するようになるとネットワークのレイテンシーが大きく改善され、通信の基地局に物理的に隣接しているネットワーク・エッジ(MEC)は十分なリアルタイム性を発揮できるようになることからカスタマー・エッジの利便性が薄れてきます。加えて5Gネットワークの高速化はインターネットの速度を上回る事になりクラウドはカリキュレーション・グラビティとエナジー・グラビティの高さに見合うだけの処理、例えばAIの学習(ラーニング)などの高度な演算に多く用いられ、トランザクション処理は性能が向上したエッジ・デバイスとネットワーク・エッジの連携によって処理されるでしょう。更に次世代のネットワークである6Gの世代になるとエッジ・デバイスとネットワーク・エッジ間の通信速度はインターネットの速度も帯域も遥かに凌駕することになりエッジ・デバイスとネットワーク・エッジの活用が更に進むと考えます。つまりクラウドではカリキュレーション・グラビティとエナジー・グラビティが減少、その代わりに大量のデータを活用した大規模なAIのモデルの開発や高速なシミュレーション等の人が創造性を発揮するための環境へと移り変わると考えます。 ここまでは各種グラビティの変化を予測しましたが、これらは静的なものです。他方でエナジー・グラビティにおけるエネルギーの供給源、特に再生可能エネルギーを有効に活用する場合を考えると動的な処理のアロケーション、すなわち再配置のソリューションを考察することが出来ます(図8)。
pic8
図8. 動的なデータ処理のアロケーション(再配置)

エッジ・デバイスが利用する太陽光発電は天候や季節、時間帯によってその電力生産量は大きく影響を受けます。したがって太陽光発電が不安定な場合には、火力発電によって安定して生産されたエネルギーを使っているカスタマー・エッジに処理を移動することが考えられます。当然の事ながらエッジ・デバイスとカスタマー・エッジで同様のデータ処理が可能である事が前提条件となります。加えて通信やデータの保管・移動に伴う制約も前提条件として考慮する必要があります。同様に風力発電をエネルギーの供給源とするネットワーク・エッジとCloud間でのアロケーションも同様に考える事ができます。これら一連の再配置はデザインパターンのオフロード(図3)をエネルギー生産量に合わせて動的に行うことに等しくなりますが、多くのエッジ・デバイス、カスタマー・エッジ、ネットワーク・エッジが混在するなかで動的かつリアルタイムにデータ処理の再配置を実現するためにはITの仕組みを活用することが必要です。IEAM - IBM Edge Application Manager[2] やIEAP – IBM Embedded Automotive Platform[3]などのソリューションを活用することが重要になります。

6. デジタルツインと人間拡張

デジタルツインはエッジコンピューティングのデザイン・パターンの1つであり、さまざまな目的で使用できる物理的な設備や機器、プロセス・フロー、人の行動、システムなどの仮想世界(Cyber space)での複製を意味します。この複製とはシミュレーション・モデルを介して行われます。現実世界(Physical Space)とCyber spaceとの一致性があることから、デジタルツインと呼ばれています。その特徴として以下の3つが挙げられます。

・オブジェクトやシステムのライフサイクル全体をCyber spaceに再現
・Physical Spaceのリアルタイム・データを元にCyber spaceのシミュレーションモデルを更新
・シミュレーション、機械学習、AI推論を使用して意思決定を支援

デジタルツインは、Data Layer、 Simulation Layer、 Modeling Layer、 Interface Layerの4層の構成で表現することができます(図9)。
pic9
図9.デジタルツインのシステム構成

エッジコンピューティングにおいてはそれぞれのLayerがエッジ・デバイスからクラウドに、その目的に合わせて配置されると考えると理解が容易になると考えます。この構成図を現実世界のオブジェクトと、デジタルツインを利用する人の観点から模式的に表現(図10)することも可能です。
pic10
図10. デジタルツインの模式図

人間の能力をテクノロジーによって自由に増強・拡張させる技術をヒューマン オーグメンテーション(Human-Augmentation) あるいは人間拡張と呼びます。人間拡張の対象は知的な能力、身体能力などの能力強化はもとよりハンディキャップのある人や高齢者の能力補助・回復などもその範疇に含まれます。 知的な能力の拡張において現在から将来に向けて今後、発展が予想されている代表的な技術に以下の3つを上げる事ができます。

ⅰ.  VR : Virtual Reality    現実とは異なる仮想空間
ⅱ. AR : Augmented Reality    現実と仮想空間データの重ね合わせ
ⅲ.MR : Mixed Reality    現実世界を仮想空間に反映

これらを模式的に表現したデジタルツインの構成と比較すると(図11) VR、AR、MRのいずれもがデジタルツインのサブセット、すなわち“部分集合”であることがわかります。つまりデジタルツインとは知的な能力の人間拡張の技術要素を包括的に含んでいることから単なるCyber spaceとPhysical Spaceの双子以上の大きな将来性と技術的な広がりを持っていることが理解できます。
pic11
図11. デジタルツインと現在の人間拡張技術との比較例

更に人間相互のインタラクションを拡張する「コラボレーティブ・コンピューティング」は2つのデジタルツインをPhysical Spaceを中心に組み合わせることで実現することが可能となります(図12)。
pic12
図12. コラボレーティブ・コンピューティング

7. まとめ


本稿では今後の技術活用が期待されるエッジコンピューティングとその将来、エッジコンピューティングを中心にその他のIT技術を包括的に組み合わせることで可能となるデジタル・ツイン、さらにデジタルツイン技術を複数組み合わせることで実現できるコラボレーティブ・コンピューティングについて概説しました。今後、これらの技術は多方面で広く活用される事が見込まれます。これまで実現されていなかった新しいコンピューティング体験がどんどん生まれてくる未来がすぐそこまで来ていることを確信して本稿のまとめと致します。

[参考文献]
[1]エッジコンピューティングとは
https://www.ibm.com/jp-ja/cloud/what-is-edge-computing
[2] IBM Edge Application Manager の概要
https://www.ibm.com/docs/ja/eam/4.1?topic=overview-ieam
[3] モビリティ分野におけるIBMの取組み
https://www.ibm.com/blogs/solutions/jp-ja/iot-futuresdesign4-3/



IBM、IBM ロゴは、 米国やその他の国におけるInternational Business Machines Corporationの商標または登録商標です。他の製品名およびサービス名等は、それぞれIBMまたは各社の商標である場合があります。現時点での IBM の商標リストについては、https://www.ibm.com/legal/copytradeをご覧ください。

*ProVision 記事一覧はこちらから




#ProVision-AI
#ProVision
#Highlights
#Highlights-home

0 comments
1283 views

Permalink