IBM Aspera SME のすずとも(鈴木 智也)と申します。
今回は、高速データ転送を実現する IBM Aspera についてご紹介させていただきます。
突然ですが、IBM Aspera について聞いたことはございますか?
おそらく初めて聞かれる方も多いかと思います。
私は 2014年に IBM が Aspera 社を買収発表したことをきっかけに担当していますが、お恥ずかしながら、それまで Aspera について全く聞いたことがありませんでした。
ということで、Aspera に関する初回投稿では、以下について簡単に紹介させていただきます。
- Aspera とは何か?
- Aspera の特徴
- Aspera 無料トライアル(評価)
1. Aspera とは何か?
Aspera は、2004 年に元 IBM の研究員だった女性が立ち上げた会社です。2014 年に IBM が Aspera 社の買収を発表しましたが、メディア・エンターテイメント業、製造業、学術・研究機関を中心に、大容量データを扱う領域で広く使われているソリューションです。IBM が買収する以前から国内でご利用いただいているお客様も多く、高い支持を得ています。Aspera は、現在、IBM ソフトウェア製品の一つとして扱われています。
2. Aspera の特徴
続いて、Aspera の特徴についてですが、IBM Aspera は FASP(Fast Adaptive and Secure Protocol)という独自の特許技術を製品に組み込んでいます。
この FASP という特許技術は、TCP と UDP のいいとこ取りをしたような技術となっており、転送するデータの種類、転送距離に関係なく、最大スループットでファイル転送を実現します。しかも、レジューム機能もありますので、万が一、ネットワークが瞬断した、転送を中断しなくてはならない場合であっても、転送の再送・再開が可能です。
もう少し詳しく説明します。
まずは、最大スループットでの転送について。
皆様も大きなサイズのファイル(例えば動画ファイル、データ・ベースのバックアップ、仮想マシンやコンテナ・イメージなど)を遠隔地に送ったり、共有されたりした経験があるかと思います。
データを送る際に気にすることは何でしょうか?
受け手側のストレージ容量、ネットワーク回線速度(転送速度)、転送所要時間など、色々と考えることがあります。
必要なストレージ容量についてはファイル転送する以前からおおよその検討がつきますが、転送速度や転送所要時間についてはいかかでしょう?使用するネットワーク回線やプロトコル(FTP, SFTP, SCP, HTTPS など)によってマチマチです。
ここで一つ、みなさんに試していただきたいことがあります。
回線速度計測サイトを使ってインターネット回線の速度について調べてみましょう。
以下のサイトにアクセスいただきますと、ご利用されているインターネット回線の速度(アップロード/ダウンロード)を確認できます。
計測結果、いかがでしたでしょうか?
私の自宅で計測した結果を図1 に示します。
図 1 回線速度計測結果
計測環境/計測の時間帯/使用するアプリ(ブラウザ/専用アプリ)などによって結果が多少異なりますが、回線速度のおおよその検討がついたかと思います。
ちなみに私の自宅環境では、アップロード/ダウンロードともに、おおよそ 800 Mbps 前後のスループットが得られました。
ここで注目していただきたいのは、レイテンシーや PING 応答時間に関する数値です。私の環境では、それぞれ 2〜3ms でしたが、これはネットワーク遅延としては比較的小さい数値となります。
試しに 4G/5Gや WiFi ネットワークを利用して計測いただくと、LAN ケーブルを使って計測した場合と比べて、ジッター(揺らぎ)が発生しやすくなるため、遅延時間も大きくなることが予想されます。
次に、転送スループットと遅延時間の関係について、Aspera FASP vs. FTPを比較したチャートを使って説明します。(図 2 参照)
# 転送スループットについては、あくまでも参考値としてお考えください。私の検証環境では、Aspera FASP を使った場合、実際にはもう少し良い結果が得られています。
図 2 Aspera FASP vs. FTP
日本国内の光回線の通信速度や品質は安定しており、20年以上前のモデムや ISDN 回線が主流だった時代ではないので(笑)、Aspera を使わなくても十分にデータ転送速度が得られると思っていました。必ずしもその理解は間違いではありませんが、転送距離が長い(= 遅延時間が大きい)ケースでは状況が異なります。
遅延時間が 20ms を超えるようなケースでは、上記の図が示す通り、TCP をベースとした一般的な通信プロトコル(FTP, SFTP, SCP, HTTPS など)ではスループットが著しく減衰する傾向があります。
一方で Aspera FASP を使った転送は、転送距離・遅延やパケットロスによる影響をさほど受けることなく、通信を暗号化(AES128〜256)した状態で転送しても転送速度がさほど落ちません。
先に書いた通り、レジューム機能も利用できますので、大容量(数百GB 以上のファイル)を転送する際にも安心して転送を行うことができます。
逆に、FTP ツールなどを利用した場合、転送完了時間の目安が読めないことが多いですが、Aspera FASP を利用した場合は、通信速度が安定しますので、転送所要時間についておおよその検討がつきます。
また転送スループットは、図中の転送距離・遅延時間の他にネットワーク品質に大きく左右されます。(図 3 参照)
黄色が FTP、青色が Aspera FASP による転送を示していますが、Aspera はパケットロスにも強いプロトコルとなっていることが分かります。
例えば、遅延時間が大きく、ジッター(揺らぎ)が発生しやすい衛星回線を用いた転送では、その差が顕著となります。(海洋上の船舶や機内 WiFi では、しばし衛星回線が使われます)
図 3 Aspera の高速性・信頼性
以上が Aspera の特徴となります。
Aspera はデータ転送の他に、転送状況のモニタリング/レポーティング、データ同期(sync)、ストリーミングにも対応しています。
特に転送状況のモニタリング/レポーティング、データ同期(sync)についてはデータ転送とセットでご検討いただくことが多いのですが、これについてはまた別途ご紹介させていただきます。
3. Aspera 無料トライアル(評価)
Aspera にはいくつかの提供形態やライセンスの種類があります。
中でも SaaS で提供している IBM Aspera on Cloud はクイックに体感いただける無料トライアルをご用意しております。
以下の手順にしたがってぜひ、お申し込みください!
# IBM Aspera on Cloud のトライアルですが、転送量:50GB まで、お試し期間は 14日間となります。(2024/05/07 時点)
# お申し込みにあたっては、IBMid の作成が必要です。トライアルのお申し込みは、一回のみとなります。
IBM Aspera on Cloud トライアルのお申込み方法
以上、長くなりましたが、皆様からのフィードバック、お待ちしております!