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MQのリリースの選び方(CD vs LTS)

By Hirohito Onda posted Fri May 24, 2024 03:30 AM

  

皆さんはソフトウェア製品を導入する際、どのように導入するリリース・レベルを選択していますでしょうか?
一番新しいリリース、つまりリリース番号が大きいものを選択するというのが多くの場合正しいです。
最新のリリースには多くの機能やバグの修正が含まれているだけでなく、サポート期間が長いというメリットがあるためです。

IBM MQにおいてリリースを選択する場合も基本的には同じ考え方で良いのですが、IBM MQには2つのリリース・モデルがあるため、少しだけ注意が必要です。

2つのリリース・モデル

MQはCD(Continuous Delivery)とLTS(Long Term Support)という、二つのサポート・サイクルがあり、導入するリリース・レベルによって区別されます。
つまり、どのリリース・レベルを導入するかによってサポートされる期間が変わります。
具体的にそれぞれのリリースについて見ていきましょう。

CDリリース

MQの開発は非常に早いペースで行われています。IBM MQは過去から変わらない製品というイメージをお持ちの方が多いかと思いますが毎四半期ごとに新しい機能が開発され、製品に統合されています。新しい機能をいち早く取り込み、3ヶ月から6ヶ月ごとにリリースされるものがMQのCDリリースです。

MQのCDリリースはV9.3.1, V9.3.2, V9.3.3...のように、V.R.M.FのMが0以外の数字になっているリリースです。
新しい機能がいち早く提供される代わりにサポート期間が短いという特徴があります。

具体的にはリリースから12ヶ月、もしくは最新2つのCDのリリースに含まれている場合にサポートを受けられます。
CDリリースは年に2、3回リリースされているため実際には12ヶ月のサポート期間と考えることができます。
そのためCDリリースを選択する場合には少なくとも年に1回のリリース・アップを行うことが継続した保守を受けるために必要となります。

CDリリースはコンテナ環境など継続的リリースが整っている環境や開発用途での利用が想定されています。

基本的にはCDリリースに対してはFix Pack(累積修正)は提供されませんが、不定期にCSU(Cumulative Security Update:累積セキュリティ修正)というものが最新のCDリリースに対してリリースされることがあります。CSUではV9.3.5.1のようにVRMFのFが繰り上がります。

LTSリリース

LTSリリースは長期間安定した環境でMQを運用する場合に選択すべきリリースです。

MQのLTSリリースはV9.3.0.1, V9.3.0.2, V9.3.0.3...のようにV.R.M.FのMが0の数字になっているリリースです。
年に2回から3回のFix Pack(累積修正)、および不定期なCSU(Cumulative Security Update:累積セキュリティ修正)のリリースによってVRMFのFが繰り上がります。
Fix PackやCSUには新機能は含まれず、不具合の修正とセキュリティ対策のみが提供されます。そのためコードの安定性が高いリリースとなっているため長期に渡り安定した運用を行いたい場合に利用するリリースです。

ちなみに最新のFix Pack,やCSUは過去のFix Pack/CSUの修正内容がすべて含まれているため該当リリースのどのFixレベルの環境に適用しても大丈夫です。

例えばMQ V9.3.0.17というCSUはV9.3.0.2やV9.3.0.5, V9.3.16などの環境に対して適用できます。

CD/LTSの選び方

CDリリースの方がリリース番号が大きいために( V9.3.3 > V9.3.0.17と見えるので)リリースの特性を考えずにCDリリースを選択してしまうプロジェクトをよく見かけます。

しかしCDの特徴で記載したようにCDを利用する場合にはサポートを継続的に受けるためには少なくとも1年に1回はリリース・アップが必要であるということを注意してください。CDリリースを選択するのに適しているのは、CI/CDパイプラインが整備されて頻繁なリリースが行えるコンテナ環境や、MQの新機能をいち早く検証するためのサンドボックス環境です。

それ以外の状況では長期の保守が享受できるLTS環境を選択すべきです。

LTSの名称変更

少し混乱を生むかもしれませんが、IBMは今年に入りLTSという用語を変更しています。

IBMのソフトウェアのLTSリリースでは出荷からのサポート期間が製品によって異なります。5年のもの(MQはこれに該当)、3年のもの、2年のものがあります。

この、製品によって異なるサポート期間を識別できるようにはSupport Cycleという言葉を利用し、リリースから最低限通常サポートを提供する年数によってSC-2, SC-3, SC-5のような表記を行うようになりました。

詳細は以下のページを参照ください。
https://www.ibm.com/support/pages/ibm-software-support-lifecycle-policies

しかし、LTSという言葉が長く使われてきたことからしばらくの間は両方の用語が併用されるのではないかと思います。

SC-5などの表記が今後増えていきますが、LTSのことだと理解ください。

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