本記事は、IBM Developerで評価の高い英語ブログの中から、特に有用な内容を選定し、日本語に翻訳したものです。
watsonx Japan User Groupの皆様にも広く共有できればと思い、シリーズ形式で紹介してまいります。
※元の記事(英語版)はこちら:
https://developer.ibm.com/tutorials/awb-enhancing-retrieval-hnsw-rag/?mhsrc=ibmsearch_a&mhq=niranjan&mhp=0
HNSWがRAGパイプラインにおける検索速度とスケーラビリティをどのように向上させるのかをステップバイステップの実装ガイドとともに説明します。
Retrieval-Augmented Generation(RAG)は、AIモデルが 検索した関連情報を用いて生成する仕組みで、応答をより正確で役立つものにします。しかし、データが増えるにつれて、高速で効率的な検索が不可欠となります。例えば、ブルートフォース類似度検索などの従来の方法では遅く、スケーラビリティがありません。
Hierarchical Navigable Small World(HNSW)は、グラフベースのApproximate Nearest Neighbor(ANN)検索アルゴリズムで、高速性とスケーラビリティを提供し、RAGシステムに最適です。このチュートリアルでは、HNSWがAIアプリケーション、特にIBMのAIソリューションにおいて検索をどのように強化するのかを探求します。また、ステップバイステップの実装ガイドを提供し、大規模な利用に向けた最適化についても議論します。
なぜHNSWがRAGに理想的なのか?
効率的な検索はAI駆動型アプリケーションの鍵です。大規模なナレッジシステム は高精度、低遅延、スケーラビリティが必要です。HNSWは以下の点でこれらの要件を満たします:
速度とスケーラビリティ:数百万のドキュメントでも迅速に結果を見つけます。
高い再現率(Recall)と正解率(Accuracy):LSHやIVFPQなどの他のANN方法を上回ります。
効率的なメモリ使用:パフォーマンスとリソース効率をバランスよく保ちます。
リアルタイムの更新:データの動的な追加と削除をサポートします。
HNSWはAIチャットボット、企業検索、レコメンドエンジン,ドメイン固有のアシスタントに理想的です。HNSWを使用することで、開発者はRAGアプリケーションの速度と精度の両方を向上させることができます。
RAGパイプラインでHNSWを使用する方法
RAGパイプラインには通常、4つの主要なステージがあります:
· ドキュメントの処理と埋め込み:IBM watsonx.ai or Hugging Face Transformersなどのモデルを使用して、テキストドキュメントをベクトル埋め込みに変換します。
· HNSWによるインデックス作成 – 高速な最近傍探索のために埋め込みをHNSWインデックスに格納します。
· 検索と拡張 – HNSWを使用して、指定されたクエリに最も関連するドキュメントを見つけます。
· 応答生成 – 検索されたデータをLLM(例:IBM Granite))に入力して応答を生成します。
従来の検索方法をHNSWに置き換えることで、RAGアプリケーションにおける検索速度と精度が大幅に向上します。
PythonでRAG用のHNSWを実装する
ステップ1:- 必要なライブラリをインストールする
HNSWをRAGパイプラインで使用する前に、必要なパッケージをインストールしてください:

ステップ2:- テキスト埋め込みを生成する
事前学習済みのトランスフォーマーモデルを使用して、テキストをベクトル埋め込みに変換します:

ステップ3:- HNSWインデックスを構築する
ベクトル埋め込みを効率的に保存して検索するためにHNSWインデックスを作成します:

ステップ4:- 高速な検索を実行する
HNSWインデックスを読み込み、クエリに最も関連するドキュメントを検索します:

このアプローチは、ブルートフォース検索よりもはるかに高速で、高い精度を維持します。
大規模なRAGのためのHNSWの最適化
大規模システムでの検索効率を向上させるために、以下の最適化を検討してください:
Mとef_constructionを調整:これらのパラメータを調整して、速度、メモリ使用量、リコールのバランスをとります。
ef_searchを動的に調整:高い値は精度を向上させますが、検索が遅くなる可能性があります。
ハイブリッド検索(HNSW + BM25)を使用:意味検索とキーワードベースの検索を組み合わせて、より高い精度を実現します。
メモリ使用量を最適化:量子化技術(例:PQ、OPQ)を適用して、メモリを削減しながら品質を維持します。
インデックスのシャーディングと分散検索を実装:インデックスを複数のノードに分割することで、数十億のベクトルに対するスケーラビリティが向上します。
結論
HNSWをRAGパイプラインに統合することで、検索速度、スケーラビリティ、精度が向上します。高速な検索時間、動的な更新、高いリコールを提供するHNSWは、IBMのAI駆動型ソリューションを含む大規模AIアプリケーションにとって貴重なツールです。
AIシステムをスケールさせることを目指す開発者にとって、HNSWはチャットボット、企業検索、AIアシスタントのパフォーマンスを向上させます。パラメータを微調整し、他の検索方法と組み合わせることで、さらに結果を最適化することができます。
始める準備はできましたか?IBM Developerのリソースを探索し、今すぐより速く、より賢い検索システムを構築しましょう!