なくなりません。
最近,WebSphere Application Serverは2030年で無くなるのか,という質問をいただくことが増えてきました。
WebSphere Application Serverには,従来型のランタイム(WebSphere traditionalランタイム)と新しいランタイム(WebSphere Libertyランタイムがあります。
Traditionalランタイムは,1998年のV1.1からバージョンアップを続けてきた実行環境です。モノリシックな実装で,実装されている機能の大部分が常に有効になっており,バージョンアップで機能が増えるほど,フットプリントが大きくなるという構造的な問題を抱えていました。また前世紀の設計を引きずっている部分が各所にあり,昨今のクラウドネイティブの環境での使用には必ずしも適していないという問題もありました。
これを根本的に解決するため,2012年に登場したのがLibertyランタイムです。一から再設計されたサーバーのカーネル上に,従来のWebSphereで提供されていた機能がモジュール化されて移植されています。必要な機能だけを有効にすることができるため,新しい機能が追加されても,構成を変更して有効にしないと使用されません。そのため,既存の環境のフットプリントを増やすことなく,機能を追加することが可能になっています。
従来型のTraditionalランタイムは,2016年に公開されたJava 8/Java EE 7に対応したV9.0が最後のバージョンとなります。今後,Java 11以降やJava EE 8以降に対応した新しいバージョンは提供されません。ですが,少なくとも2030年までという,例外的に長期のサポートが提供されます(2030年以降のサポート計画については,現在のところ何も決定していません)。
新しいLibertyランタイムは,従来のWASがかかえていた多くの問題が改善されています。コンテナやクラウドなどのプラットフォームでの利用にも最適ですし,自動化されたモダンな運用との親和性も高くなっています。昨今の多くのJavaランタイムで採用されている「サーバーの事前導入を必要としない」フレームワークとしての利用もできるようになっています。また,現在も活発に開発が続いており,新しく登場しているJavaの仕様,Java EE/Jakarta EEやMicroProfileなどの標準仕様にもいちはやく対応しています。
従来型のTraditionalランタイムからLibertyランタイムへ移行いただくことで,運用のコスト削減や運用品質の向上,開発サイクルの短縮やトラブルの未然防止を実現することができます。Traditionalランタイムの10年を大きく超えるサポート期間を活用して,お客様のタイミングでLibertyランタイムへ移行いただくことをお薦めしています。
WebSphereを利用したシステムは,2030年を超えて,長期にわたってITシステムを支えるランタイムとしてご利用いただくことができます