IBM TechXchange Japan Business Automation User Group

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Thinkで発表されたwatsonx OrchestrateのUpdateについて

By SHINTARO HASE posted Thu May 15, 2025 10:05 PM

  

この記事では、5月初旬にボストンで行われたThinkで発表されたwatsonx OrchestrateのUpdateについてまとめたいと思います。

Thinkでのwatsonx Orchestrateの発表について

今回の発表はAIAgentをメインにした内容でした。AIAgentは、ユーザーに代わって、処理手順を検討し、利用可能なツールを活用して、タスクを自律的に実行してくれるシステムのことです。単にAPI連携を行うチャットボットや、事前定義されたシナリオを実行するワークフローではなく、AIが自律的にツールを活用するため、AIAgentによってこれまでシナリオの標準化が難しかったり、ROIの観点でカバーできなかった領域の自動化、効率化が期待されます。

以下の記事に動画含め詳しく解説されているのでそちらを参照してください。

https://www.ibm.com/think/topics/ai-agents

watsonx OrchestrateはAIAgentのプラットフォームですが、4/30に大幅なアップデートが実施され、Agent周りの機能が大幅に追加されました。そして、Thinkでは、以下の3つの発表がなされました。

  1. 構築済みドメイン・エージェントの提供
  2. ノーコードAgentBuilderとAgent Development Kitの提供
  3. マルチ・エージェント・オーケストレーション

以下、それぞれについて説明します。

1.構築済みドメイン・エージェントの提供

これまで、watsonx Orchestrateでは、スキルと呼ばれる業務処理をスキルフローで組み合わせ業務フローを実装し、チャットから呼び出す形態をとっていましたが、生成AIを活用したAgentがToolを自律的に呼び出す形に変更されました。それに伴い、人事、調達、営業の3つの領域に対して事前構築済みのエージェント(また、それらが利用するツール群)をIBMが提供することになりました。これまでIBMが社内で利用してきたユースケースをベースに実装されており、短期間で効果を出すことが可能になりました。まずは人事領域のAgentが利用可能で、今後調達、営業領域のAgentを提供するとともに各Agentにもツールやフローが追加されていく予定です。

現時点で利用可能なAgent、Toolについては以下を参照してください。

https://www.ibm.com/docs/ja/watsonx/watson-orchestrate/current?topic=catalog-list-prebuilt-agents

https://www.ibm.com/docs/ja/watsonx/watson-orchestrate/current?topic=catalog-list-prebuilt-tools

人事エージェント(IBM watsonx HR Agents)

人事Agentは、従業員エンゲージメント、人事タスク、プロセスなど、様々な人事関連業務を自動化可能なAgentです。SAP SuccessFactors、Workday HCM 、Oracle HCMの3つの人事システムに対応しており、休暇の申請や給与情報の取得、社員プロファイルの更新といったタスクを行うことが可能です。

調達Agent(IBM watsonx Procurement Agents)

調達Agentは調達、購買、契約管理などの調達プロセスの効率化、自動化を実現します。DnB、Coupa、SAP Aribaとの連携が可能です。

営業Agent(IBM watsonx Sales Agents)

営業Agentは、日々の営業活動を効率化します。具体的には、DnB、Seismic、Salesforce、Outlookなどと連携するToolを活用し、顧客の検索やメールの送信などの業務を効率化します。

2.ノーコードAgent Builderと、Agent Development Kitの提供

Agentを効率的に開発するための機能が追加されました。

Agent Builder

Agent Builderを用いることで、業務ユーザーがノーコードでAgentを作成可能になります。ユーザーはブラウザ上でAgentの概要や、知識、使用するTool、振る舞い、などを指定することで簡単にAgentを定義可能です。

Agent Development Kit(ADK)

技術者がAgentを実装するためのAgent Development Kitが公開されました。YAMLファイルを用いたAgent定義、Pythonを用いたTool実装などを、PC上で行うことが可能です。実装したAgentやToolは、PC上で動作可能なwatsonx Orchestrate Developer EditionやSaaS環境に直接デプロイすることが可能で、開発、テストの効率が良くなりました。Agent定義やToolをGitで管理できたり、これまでCodeEngineなどで実装してた処理もPythonベースのToolに移行してwatsonx Orchestrate上で動作させることができたりすることも大きなメリットです。

ADKの詳細については下記リンク先を参照してください。

https://developer.watson-orchestrate.ibm.com/

3.マルチ・エージェント・オーケストレーション

AIAgentの普及を見据え、複数Agent間の連携の機能とフレームワーク(Agent connect)と、パートナー・プログラムが発表されました。

複数のAgentが連携することで、Agentを跨った業務処理を行うことが可能になります。

Agent connectの詳細については下記リンク先を参照してください。

https://connect.watson-orchestrate.ibm.com/introduction

watsonx Orchestrate上ではCollaboratorAgentとして定義することで、処理を別のAgentに自動的にルーティングをしてくれます。

以下の例では、顧客情報を管理するcrm_agentに株価の情報を取得可能なstock_agentをCollaborator Agentとして登録しています。crm_agentに対して、「IBMの株価を教えて」と依頼すると、自動的にstock_agentにルーティングされ株価、stock_agentがtoolを呼び出して株価を取得することが可能です。

Agent間で連携することで、他で実装済みの処理を活用したり、複数Agentを跨った複雑な処理を実現したりすることが可能になります。また、処理を依頼する側も、どのAgentに依頼すべきかを把握していなくても、フロントのAgentに依頼すれば目的を達成できるというメリットもあります。

まとめ

今回watsonx Orchestrateでは、以下の3つの観点で機能追加がなされました。

  • Agent活用 構築済みAgentですぐに業務での活用が可能に
  • Agent開発 業務ユーザーによる定義と、開発者による効率的な開発が可能に
  • Agent連携 複数のAgentを組み合わせた処理を容易に実現

watsonx Orchestrateはこれまでどちらかというと固定フローで業務処理の一連の流れを定義し、チャットから呼び出すという活用方法がメインでしたが、Agenticな振る舞いを行うAgentを容易に定義し、外部のAgentを含めて組み合わせることが可能になりました。

今後、企業内でも様々なAgentが開発され、様々な製品、ベンダーもAgentの機能を提供してくることになると思われますが、watsonx Orchestrateは、これらのAgentのプラットフォームとしての活用が期待されます。

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