watsonx OrchestrateはAIAgent構築のプラットフォームですが、現在月に1度以上のアップデートで頻繁に機能追加がなされています。この記事では、2025年3月27日にリリースされたアップデートの主なポイントについて説明します。
AIAgentチャットが日本語対応しました
watsonx OrchestrateにはLegacyChat、AIAssisatnt、AIAgentと呼ばれる3つのUIが存在します。今回、AIAgentチャットが日本語に対応し、すべてのUIで日本語を用いて利用することが可能になりました。

watsonx.ai上のエージェントを直接接続可能になりました
watsonx Orchestrateはマルチ・エージェントをサポートし、外部エージェントを含めた複数のエージェントを登録、ルーティングし処理を実行させることが可能です。これまでは、watsonx.ai上で構築したAgentを直接追加することはできず、CodeEngineなどでラッパーを実装し接続する必要がありました。
今回のリリースで、ラッパーを実装せずとも、watsonx.aiでデプロイしたエージェントを直接追加することが可能になりました。(ただし、現状GUIを用いて追加することはできずAPIでの追加となります。)
また、「チャットでの思考を表示」をONにすることで、いわゆるCOT(Chain Of Tought)、Agentがどのような手順で結果を導いたかを表示することが可能です。

実際にwatsonx Orchestrateから呼び出してみた例です。ToolとしてGoogleSearchが使われ、結果が出力されていることが分かります。
Agentは自律的に様々なToolを組み合わせて処理を実行してくれますが、それがどのような根拠に基づくものなのかを表示することも重要なことであると考えられます。

アプリに事前にシークレットとクレデンシャルを設定可能になりました
これは実は私が機能追加の要望を出していたものなのですが、アプリケーションの接続を構成する際に、管理者がシークレットとクレデンシャルを事前に登録しておくことが可能になりました。
これによって、ユーザーがアプリケーションと接続する際にクライアントやシークレットを入力することなく、接続先のアプリケーションにログオンするだけで接続が可能になりました。

IBMには、ideasという仕組みがあり、製品に対する機能追加の要望を誰でも起票することが可能です。使ってみてここはこうして欲しい、こんな機能があったらいいなというものがある場合には、是非気軽に起票してみてください。
https://www.ibm.com/support/pages/welcome-ibm-ideas-portal
ドキュメント抽出スキルが利用可能になりました
AIAgentのユースケースを考えた時に、文書の読み取りを行いたいケースは数多くあります。生成AIのビジョンモデルを使用するというアプローチもありますが、表構造の解析などにおいては、専用の仕組みを用いたほうがまだまだ精度が高いのが現状です。今回のリリースより、PDFや画像からテキストを抽出して、LLMを用いて項目分類するスキルを簡単に実装することが出来るようになりました。
具体的にはいくつかのサンプル文書を取り込み、読み取りたい項目名を指定することで自動的に項目を抽出してくれます。残念ながら、現時点では英語のみのサポートですが、今後の日本語サポートに期待しましょう。

アクセスするIPアドレスの制限が可能になりました
IBMCloud版のみですが、watsonx OrchestrateにアクセスするIPアドレスを制限することが可能になりました。
なお、現時点ではIPアドレスを制限できるのはUI部分のみで、APIについては制限を行うことができません。(watsonx OrchestrateAPIについては、許可リストに含めた場合にもアクセスすることができません。詳細は、ドキュメントを参照してください。)
まとめ
今回ご紹介した以外にも、UIAgentという新しいUIコントロールの自動化機能や、APIの追加などの様々な機能が追加されています。
詳細については下記リンク先を参照してください。
https://www.ibm.com/docs/ja/watsonx/watson-orchestrate/current?topic=notes-whats-new-in-watsonx-orchestrate