IBM TechXchange watsonx Japan User Group

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コミュニティーメンバーインタビュー#5 西原中也さん

By Mika Funato posted 19 hours ago

  

watsonx Japan User Group コミュニティメンバーにスポットライトを当て、仕事内容やキャリア観などを自由に語っていただくインタビューシリーズ。

第5回は、watsonx Japan User Group × IBM Champion。Watson Discovery、watsonx Assistant の活用によって4年連続でIBM Champion に認定されている、株式会社アイアクト 代表取締役社長兼CTO 西原 中也(にしはら ちゅうや)さんにお話を伺いました。

本インタビューでは、西原さんのバックグラウンドやIBM Champion になったきっかけ、Watson Discovery への思いについて伺いました。
またインタビュアーの矢野 未緒が新人CSM(Customer Success Manager)として質問させていただいたこともご紹介いたします。

  • まずは西原さんのバックグラウンドについて伺いました。

実家はお寺なんですが、父がソフトウェア関連の会社をやっていたこともあって、小学生の頃から家にApple II があるような、わりとテクノロジーに近い環境で育ちました。実は、もともと宇宙飛行士になりたいと思っていたんです(笑)。最終的には情報系に進みましたが、進路を選ぶときまではずっと宇宙に憧れていました。

  • 宇宙飛行士を目指していたのですね。

はい。子どもの頃は宇宙ってロマンがあるなと漠然と憧れていました。中学のときには宇宙工学に進もうかと考えたんですが、日本人初の宇宙飛行士が専門外の分野から選ばれたと知って、「それなら他の学問もありか」と思いつつ、でも興味が持てなかったそれで宇宙の道はやめて、情報系に進むことにしました。

  • Watson との関わりはどのように始まったのですか?

IBM がWatson 使った会話ロボットをハウステンボスに導入したそのソフトウェア部分を東京基礎研究所と一緒に立ち上げたのが最初です。そこからずっと、Watson と関わり続けています。

  • 西原さんが4年連続で認定されているIBM Champion とはどのような制度で、どんな人が選ばれるのでしょうか?

IBM の技術や製品に詳しいだけでなく、それを社会やお客様、コミュニティにどう伝えていくかその伝える力も含めて、評価される制度です。エンジニアとしての技術力はもちろんですが、登壇や研修、ユーザーグループでの支援など、社外活動が重要なポイントになっていると思います。

  • ご自身がIBM Champion に選ばれたときの状況や、主な評価ポイントは何だったと感じていますか?

正直、自分が選ばれるとは思っていませんでした。技術畑というよりビジネス側の立場なので、技術コミュニティへの影響力は少ないと感じていて。でも、その頃すでにIBM Champion だった江澤さんも存じあげていましたし、当時の代表あなたのような人がなるべきと背中を押されて、締切の2日前に応募を決め、締め切り当日の深夜3時まで英文活動実績をまとめました。

特に評価されたのは、学校や企業での講演活動や、実践に基づいた発信だと思っています。技術を現場に落とし込むだけでなく、それを社会全体に還元しようとする姿勢が、IBM Champion として認められたのだと思います。

  • Watson Discovery とはハウステンボスからの付き合いというお話がありましたが、ご自身で開発に取り入れたきっかけは何でしたか?

最初はチャットボットのプロジェクトで、NLCやダイアログなど、今のwatsonx Assistant の前身となるものを扱っていました。

でも私は、もともとチャットボットには否定的だったんですよ。なぜなら、お客様のイントラネットやWeb 制作の現場で、“検索がうまくいかない”という課題をずっと感じていて、チャットでは根本的な解決にならないと考えていたからです。

その中で、Watson Discovery の前身であるR&R (Retrieve and Rank) を知りましたがこれは他と違うな思いました。

4〜5ヶ月でCogmo Search という検索システムを独自に構築しました。これは2017年5月のことです。チャットボットの流行より前に、検索という課題に本気で取り組んでいたという感じですね。

  • IBM Champion としてご講演の活動が多いと思いますが、その際に気をつけていることや工夫されていることはありますか?

皆さんが理解できるものであることです。打ち上げ花火のように発信するだけではダメで、明日からできるなとか、だったらこういう形でできるんじゃないと具体的にイメージできるようなものであることを意識しています。

  • AI を活用する企業、個人が増えていますが、「ここには気をつけたほうがいい」と思うポイントはありますか?

AI って導入して終わりじゃないんですよ。むしろ運用してなんぼの世界。けれど、現場ではそこがあまり理解されていないことが多いと感じています。生成AI やLLM (大規模言語モデル) のブームもあって、何でもAI に任せられるような幻想が広がってしまっている。

でも、“やりたいことにAI が本当にフィットしているのか”をきちんと見極める必要があります。これは技術ではなく、むしろビジネスパートナーやCSM の役割が重要になる部分ですね。

  • それに気づいたきっかけが何かあったんですか?

2011年の東日本大震災のとき、文部科学省のWebサイトを弊社で担当していて、東京都内の放射線モニタリング情報を掲載する仕事がありました。1週間で数十万アクセスが集まる状況で、社内も24時間体制で対応を回していました。ただその中で強く感じたのは、発信側としての限界です。数値の更新はできても、それ以上の情報提供や判断支援はできない我々は“受託して作る側”としての役割にとどまり、社会に何かを伝える存在にはなれていなかった。この経験を通して、技術を提供するだけでなく、どう使われるか誰に届けるかという運用設計の視点がなければ、意味を持たないと気づかされました。

今後AI を扱う立場としても、単なる便利ツールとして布教するのではなく、社会課題と正面から向き合える存在でありたいと思っています。

  • たくさん仕事をされてきたと思うのですが、特に印象に残っているものはありますか?

大手海運会社のWeb サイトをリニューアルした際のことが、強く印象に残っています。

最初はWeb サイトのリニューアルに対して、見た目を良くするぐらいに思っていました。お客様先で通された巨大な会議室に会社として大事にされている船鐘がシンボルとして飾ってあったんです。その説明を受けた時に、会社の歴史やスケール、そして情熱を肌で感じました。これは単なるWeb デザインの話じゃない気づき、今まで上っ面なWeb デザインをしていたことを思い出して恥ずかしくなりました。

そこから“海運会社の営業を変えるWeb”を提案する流れになり、初めてバックキャストやKPI の考え方に出会いました。お客様の事業のこれからに自分たちの技術で応えるその意識に切り替わった大きな経験でした。

  • AI 技術者として、どのようなことに取り組んでいきたいと考えていますか?

私はAI をインフラにしていきたいと思っているんです。

たとえば車の業界には安全基準や法律があって、それに則って車が作られていますよね。でも、AI の世界にはそういった枠組みがほとんどない。

だからこそ、電力逼迫や危機管理といった観点からも、AI を社会のインフラとして支える文化や仕組みが必要だと感じています。

アイアクトでは毎月Watson (Watson Discovery とwatsonx Assistant) を使った処理で排出されるCO2量を測っていて、月に600kg、年間で約8t なんです。他にもオフィスやAWSなどで排出されるCO2を可視化するところから始めています。

以前、IBM Champion の座談会でも話したんですが、どうやって電力とCO2排出量を計算するか、という点も含めてきちんと向き合っていきたいですね。

もしそれらがちゃんと機能すれば、AI 業界全体に広めていきたいし、そういった責任ある使い方を啓発していきたいと思っています。

印刷がインフラとして成り立っているのも、再生紙や水なし印刷、大豆インクのような環境対応があるからこそでWeb サイトやAI システムも見た目の良さや便利さだけでなく、その裏にある負荷や責任にも目を向けるべきだと思います。

  • IBM Champion として、取り組んでいきたいことはありますか?

私はエンジニアの方とまったく同じ立場では活動できないと思っていて、むしろビジネス寄りの視点からエンジニアの価値を広げることが自分の役割だと考えています。

エンジニアのコミュニティって、技術が少しずつ改善されて「良くなったね」と喜び合える、とても健全な側面がある一方で、その成果が社会に届きづらいという課題もあると思うんです。つまり、技術的には素晴らしくても、誰も使えないそんな状況になってしまうことがある。

だから私は、外とのチャネルを活かして、そうした技術を社会につなぐ活動をしていきたいです。エンジニア作業者としてではなく、ソリューションとして提案ができるような支援ができればと思っています。

  • 最後に、watsonx のユーザー、これから使いたい方に向けてメッセージをお願いします。

今、生成AI のブームの中で「どのツールを使えばいいんだろう?」と迷っている方も多いと思います。しかし、RAG (Retrieval Augmented Generation) をやるなら、私は迷わずWatson Discovery を勧めます。Watson Discovery を導入してから、便利というだけでなく、業務のあり方そのものが変わったと実感しています。AI は導入して終わりではなく、続けて使える仕組みが重要ですし、そうした文化を現場から広げていきたいと思っています。

おまけ・私が西原さんに聞いてみたかったこと

私は2025年春にIBM に入社し、CSM としてキャリアをスタートさせました。しかし、AI は「使われてこそ価値がある」といわれるものの、実際の現場ではどう活用されているのか?また、CSM としてお客様にどんな支援ができるのか? それがなかなか実感できませんでした。

そこで西原さんから、IBM のCSM にできることのヒントを探ります。

  • IBM のCSM にどのような役割や価値を期待していますか?

IBM の製品は企業が使えるサービス”になってるのがすごいと思っていて、技術的に新しいことも大事ですが業務課題に寄り添った形でのサポートをしてほしいですね。

  • IBM 製品への感想や期待していることはありますか?

watsonx はPR が下手ですよね(笑)。もっと企業向けということも踏まえてPR をする必要があると思います。

あとはGUI の日本語の精度が気になります、機械翻訳のような日本語ではないもののもう少し頑張ってほしいです。

インタビュアー矢野からひとこと

私はこれまで、「AI を導入すれば課題は解決する」と勝手ながらに思っていました。しかし西原さんのお話から、AI は“運用してこそ意味がある”こと、そして“技術は人に伝えて使ってもらえて初めて価値になる”ことを実感しました。私は、Watson Discovery を含むData Platform のCSM なのですが、Watson Discovery を長年使い込んでこられた西原さんと直接お話できたことは、非常に大きな学びでした。

「RAG をやるならWatson Discovery」という言葉の背景や、実際に業務がどう変わったのかという実体験を聞けたことで、改めてこの製品に向き合いたいという気持ちが強くなりました。

これから自分でも実際にWatson Discovery を触っていくので、今日伺ったお話を参考にしながら、ただ製品を説明するだけではなくお客様と一緒に価値をつくるパートナー”としてCSM の仕事に向き合っていきたいと思います。


アイアクトについてはこちら(https://www.iact.co.jp/

Cogmo についてはこちら(https://cogmo.iact.co.jp/cogmo_chatgpt.html

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