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第一生命はハイブリッドクラウドで複雑化するシステムの高度な運用監視をどう実現するのか|2025/6/5開催イベントレポート

By Miho Kataoka posted 2 days ago

  

202565日に「IT Leadership Agenda 2025」が、「ビジネスを牽引するITの最適解~AIを用いたIT運用の自動化とアプリ基盤のモダナイズ~」をテーマに、東京都港区のザ・グランドホールにて開催されました。その中で行われた講演の抄録をお届けします。

   

【講演抄録】202565開催 IT Leadership Agenda 2025 お客様事例講演

第一生命はハイブリッドクラウドで複雑化するシステムの高度な運用監視をどう実現するのか

   

第一生命保険株式会社(以下、第一生命)のシステム環境は、DXの推進に伴いクラウドの活用が進む一方、重要な基幹系システムはオンプレミスで運用することによりハイブリッドクラウド化が進展しています。それによって複雑化するシステム環境の安定運用を実現するために、同社は運用管理の高度化に着手。第一フェーズとして、システムの可観測性を実現する「IBM Instana Observability」を活用したモニタリングの高度化を実現しました。

   

第一生命保険株式会社
IT企画部 フェロー
吉留 栄太氏
   

DX推進によりシステム環境がハイブリッドクラウド化

   

創業以来、「お客さま本位(お客さま第一)」を基本理念に据え、顧客の一生涯のパートナーとして各種の保険商品を提供している第一生命。現在は「保険サービス業への変革に向けた基盤構築」を進めるべく、「グループ共同調達によるインフラ最適化」をはじめとするIT・デジタル戦略に力を入れています。

時代とともに変化するビジネス環境や顧客ニーズに対応する中で、第一生命のシステム環境は大きく変化してきました。当初は顧客に保険金・給付金を確実に支払うためにIBMのメインフレームを中心にシステムを構成し、顧客ニーズの多様化に応じて保険商品の拡充が進むとオープン系のフロントエンドを拡充して対応。近年は顧客とのデジタル接点を広げて被保険領域でも多様なサービスを迅速に提供していくために、DXによりクラウドの活用を進めているとIT企画部 フェローの吉留栄太氏は説明します。

   

「契約管理や顧客管理などの基幹系システムはオンプレミスのメインフレームで運用しつつ、AIを使ったサービスやお客様がスマートフォンなどで利用するサービスはクラウドへのシフトを進めています。クラウドも各社で得意領域が異なるため、Microsoft AzureAmazon Web ServicesAWS)など複数のクラウドとオンプレミスを組み合わせたハイブリッドクラウドとしてシステム全体が動いています」(吉留氏)

   

   

システムの安定稼働を維持するべく運用管理の高度化を決断

   

ハイブリッドクラウド化により複雑化が進んだことで、第一生命のシステム環境では課題も生じています。その一つが障害対応です。

   

「数年前にオンライン障害が発生しました。障害が起きた場所はオンプレミスですが、原因は連携するクラウド側システムのAPIのレスポンスが遅いことにありました。原因究明は人手によるログ調査で行いましたが、サイロ化したシステムを一つひとつ調べるのに時間がかかり、保険商品の提案活動に支障を来しました」(吉留氏)

   

これに危機感を高めた同社は、システム安定稼働の維持を目的にハイブリッドクラウド環境の運用管理を高度化することを決断。その背景として「複雑なインフラの管理」「迅速なビジネス・ニーズへの対応」「セキュリティーの強化」「コスト効率の向上」「生産性の向上」の5つを見定め、それぞれの運用高度化に必要な要素として次の6つを特定しました。

   

  • 統合監視とオブザーバビリティー(可観測性)
  • 構成管理自動化とAIOps
  • セキュリティー
  • コスト管理
  • ワークスタイル変革

   

出典:第一生命保険株式会社

   

このうちワークスタイル変革とは、運用担当者の働き方を変えることを指します。

「第一生命グループのIT戦略を担う第一生命テクノクロス(DLTX)の運用メンバーとも議論し、ワークスタイル変革も重要だと認識しました。これまでは監視業務のために専用の端末ルームに入らなければならず、自宅で緊急コールを受けても何が起きているのか詳細がわかりませんでした。運用高度化では、そうした状況の変革も合わせて考え、究極的には運用メンバーの満足度も高めていかなければならないと考えています」(吉留氏)

   

   

第一フェーズとしてInstanaによるモニタリングを開始

   

運用高度化は喫緊の課題ですが、取り組みのすべてを一気に始めることはできません。同社は検討の結果、第一フェーズとして最も取り組みやすく効果を得やすい「モニタリング(監視)およびイベント管理」「インシデント管理」の高度化から着手することを決めます。これによって目指すのは、「障害発生時の原因個所・影響範囲の可視化」「可視化した情報の共有による対応の早期化」「通常挙動ではない状況の検知による対応の早期化」です。

   

出典:第一生命保険株式会社

   

同社はこれらを実現するソリューションを検討し、システムの可観測性を高める「IBM Instana Observability」の活用を決めました。採用の決め手として、吉留氏は「使いやすいユーザー・インターフェース(UI)」「メンテナンス要らず」といった特徴と合わせて「優れた監視機能」と「シンプルなライセンス体系」の2つを挙げます。

Instanaはメトリクス情報をスピーディーに取れますが、これはミッションクリティカルなシステムの運用で極めて重要な点です。また、ホスト単位のライセンス体系なので、他のツールのように仮想サーバーごとに課金されてコストがかさむようなこともありません」(吉留氏)

   

   

運用監視の高度化で「石器時代から抜け出したよう」

   

このほかにも、Instanaにはハイブリッドクラウド環境の運用管理を高度化する多彩な機能が備わっています。

例えば、サマリー画面では「メソッド呼び出し回数」「エラー発生状況」「平均待ち時間」などの概況を一目で把握し、発生したエラーの内容をメソッド単位でドリルダウンして確認できます。手作業でログを調査していた従来と比較して「石器時代から抜け出したようだ」と吉留氏は評します。

インフラの全体状況を確認するインストラクチャー・マップでは、エラーやトラブルが起きているインフラを視覚的に確認できます。サービス・パフォーマンスも可視化され、問題発生時の状況を迅速かつ正確に把握することが可能となりました。DLTXIBMの協力により実証実験を行い、原因個所の特定や原因分析のための情報の突き合わせなど、従来の運用で時間を要していた問題の解決にInstanaが有用であることを確認しています。

サービスの依存関係を可視化できるようになったことも大きな効果であり、「画面を見れば即座に問題個所がわかるので原因の早期分析が可能であり、経営層や事業部門にもトラブルの状況を伝えやすくなりました」と吉留氏は喜びます。ログ分析ツールと組み合わせて、「複数システムのトランザクション・ピークが重なっている個所とサービス間の依存関係をInstanaで把握し、詳細をログ分析で調べる」といったことも行えるようになりました。

   

出典:第一生命保険株式会社

   

   

予兆検知やホスト監視でも活用

   

こうしてモニタリングの高度化を実現した第一生命は、今後も現場の気づきによるボトムアップとトップダウンのマネジメントによって運用管理の高度化を図るほか、Instanaのさらなる活用も進めます。例えば、稼働状況やリソース使用状況を監視し、設定したしきい値に応じてアラートを通知させることができるため、今後はこの機能を利用して予兆検知を実現する予定です。

   

「設定したしきい値を自動調整する監視学習機能を活用すれば、手動で設定する手間を省き、より精度の高い監視を実現できると考えています」(吉留氏)

    

出典:第一生命保険株式会社

   

また、サービス・パフォーマンス画面を活用し、アプリケーションのレスポンス状況の監視も行っていきます。プログラムを修正しなければパフォーマンスを監視できないツールもありますが、Instanaは修正が不要であり、ホストに導入することでより深い監視が行えるようになります。パフォーマンス最適化や脆弱性対応などでの活用も検討しています。

   

   

Instanaでコンテナ、マイクロサービスの活用も促進

   

第一生命は今後、より迅速なサービス提供に向けてコンテナやマイクロサービス、CI/CDの適用範囲を拡大していく計画です。マイクロサービスが増えれば同社のシステム環境はさらに複雑化しますが、それらの監視でもInstanaを使うほか、障害対応の自動化やAIによる予兆検知を実現するソリューションの活用も検討します。

また、今後もオンプレミスに残るシステムがありますが、それらについてもコンテナやマイクロサービスに移行し、社内外のサービスとの接続の柔軟性やビジネス環境の変化への適応性を高め、開発・運用の生産性向上を図っていく計画です。これを実現するコンテナ管理基盤としてRedHat OpenShiftを活用し、マイクロサービスの共通フレームワークとしてIBM WebSphere Libertyを採用することを決めました。今後はInstanaで培った経験を生かし、OpenShiftの管理機能も活用してコンテナとマイクロサービスにより複雑化するシステム環境の高度な運用管理方法を模索していきます。

吉留氏は最後に、「システム運用の未来は、単なる効率化を超えて、現場の知恵と最新技術が織りなす共創の世界」だと強調し、次のように話して講演を締めくくりました。

   

「運用の高度化は、決して現場から人手を奪うものではなく、むしろ携わるすべての人の創造性を解き放ち、より本質的な業務に集中する力となるはずです。運用を深く理解し、人と技術が真に調和するとき、持続可能で誰もが楽しく笑顔で働ける社会の実現に向けた一歩を踏み出せると信じています」(吉留氏)

   

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【関連リンク】

オブザーバビリティー・ソリューション

IBM Instana Observability

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