本ブログは、日本情報通信株式会社 和田航輝様よりご提供いただいた内容を代理で投稿しております。
はじめに
マーケティングの世界は急速に進化しており、企業は顧客とのエンゲージメントを高めるために新しい技術と戦略を模索しています。特に、生成AI(Generative AI)と機械学習は、これからのマーケティングをさらに一歩進める強力なツールとなります。本ブログでは、生成AIと機械学習を組み合わせたマーケティング施策の活用方法について解説します。
生成AIと機械学習の違い
生成AIと機械学習は、共にマーケティングに効果的に利用できる技術ですが、その役割は異なります。
- 機械学習(Machine Learning): データを基にパターンや規則を学習し、予測モデルを構築する技術で、顧客の購買履歴を分析し未来の購買行動を予測できます。例えば、適切なデータセットを選定し、過去のデータを使ってモデルをトレーニングし、分類、回帰、異常検知などの多様な分析アプローチが可能です。
- 生成AI(Generative AI): 指定されたプロンプトに従い、テキストや画像を自動生成する技術です。例えば、プロンプトを基にマーケティングメッセージを生成することができます。大量のトレーニングデータから広範なドメイン知識に基づいて自然な文書や回答を生成し、対話型システムに組み込みリアルタイム生成が可能です。
マーケティングにおける機械学習の有効性
マーケティングにおける機械学習の有効性について、機械学習は高度な分析と自動化を可能にし、ターゲティングの精度向上、適切なチャネルの選定、最適なタイミングでのアプローチ、効果的なオファーの提示において非常に有効であるとされています。特に、顧客ターゲティング、チャネル選定、アプローチのタイミング、オファーの最適化の4つの主要要素に対して効果を発揮します。
機械学習を活用することで、以下が出来るようになります。
- 顧客層の正確な理解が可能となり、休眠顧客や新規顧客、ロイヤルカスタマーといった各層に適したアプローチが可能です。
- 顧客が最も反応するチャネルを特定し、メール、ウェブサイト、ソーシャルメディア、モバイル端末などを通じて施策を実行することができます。
- 顧客が反応しやすい最適なタイミングや購買行動に応じた適切なステップを見極め、エンゲージメントを高めることができます。
- 顧客の反応や購買行動を解析し、最適な商品やクーポンを提案することで、顧客満足度を高めるとともに、再購入を促します。
このように、機械学習の導入によりマーケティング施策の効率化と効果の最大化が期待できます。
マーケティング領域の課題
機械学習を用いたマーケティング活動においても、以下のような課題が存在します:
- 施策対象者やオファーの抽出・整理の難しさ
機械学習の結果から施策対象者や適切なオファーを抽出して整理する作業が非常に煩雑です。
大規模のターゲットリストを効率よくまとめるには多大な労力が必要になります。
- 効果的な施策メッセージの作成
分析結果を基に、具体的で効果的な施策メッセージを作成することの難しさもあります。メッセージのトーンや内容によって顧客の反応が大きく変わるため、細心の注意が必要であり、企業はここに多くの時間と労力を費やしています。
これらの課題が多くの企業が抱える課題となっており、これらを解決することで、マーケティング施策の効果を一層高めることが可能となります。
これらの課題に対して生成AIと対話型レコメンドが有効な解決策を提供します。
生成AIを用いた顧客マーケティングのための対話型レコメンド
生成AIと機械学習を組み合わせることで、顧客マーケティングにおける対話型レコメンドを実現します。今回は生成AIをただ使用するのではなく、RAG(Retrieval-Augmented Generation)という仕組みを利用します。
ここで、システムの重要な要素であるRAGについて説明します。RAGはユーザーの質問に対してデータベースから関連情報を検索し、その情報を基に生成AIが具体的な回答を提供する技術です。

この仕組みにより、以下のような利点があります:
迅速なデータ提供: ユーザーが簡単な操作で必要な情報を即座に得られます。
効率的な顧客対応: 企業は顧客対応の効率化を図ることができます。
自社特有の情報提供: 自社固有のデータを迅速かつ正確に提供可能となります。
今回のシステムは、チャットアプリとしてwatsonx Assistant、生成AIとしてwatsonx.aiを使用しています。また、機械学習ツールであるSPSSの分析結果をRAGのデータベースに取り込んで運用しています。システム概要は以下のようになっています。

今回データベースに取り込んだSPSSの分析結果のデータには以下のような要素が含まれています。
会員
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属性
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商品
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施策
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ランクアップ確率
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A
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30代・男性
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パン
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10%Off
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60%
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これらのデータを元に、生成AIがユーザーの指示に適した回答を返すことで、特定のユーザー属性に最適なレコメンドが提供されます。
課題解決へのアプローチ
マーケティング活動において機械学習が提供する高度な分析と予測に対し、生成AIを組み合わせることで、さらに効果的な解決策が得られます。以下に、生成AIを用いた対話型レコメンドがどのようにマーケティング領域の課題を解決するかを説明します。
- 施策対象者やオファーの抽出・整理の効率化
生成AIは、機械学習が提供する分析結果に基づいて、迅速かつ正確に施策対象者を抽出・整理することが可能です。これにより、従来の手動での作業に比べて大幅に効率が向上します。
例えば、ターゲットリストの中から最適な対象者を即座に特定し、抽出することが可能となります。

- 効果的な施策メッセージの作成
生成AIは、予め学習した大量のデータを基に、特定のターゲットに向けた効果的なメッセージを自動生成します。これにより、顧客の属性や過去の行動データに基づいたパーソナライズされたメッセージが提供され、顧客のエンゲージメントが向上します。また、生成AIはメッセージのトーンや内容のバリエーションを持たせることができるため、顧客の反応をさらに高めることが可能です。

このように、生成AIを用いた対話型レコメンドシステムは、マーケティング活動のあらゆる側面で大きな利点を提供し、企業の競争力を強化します。これからも、生成AIと機械学習の技術革新を活用して、さらに効果的なマーケティング施策の展開が期待されます。
まとめ
生成AIと機械学習を組み合わせた対話型レコメンドシステムは、マーケティング施策を大幅に進化させる可能性を秘めています。機械学習はデータから顧客行動を予測し、生成AIはパーソナライズされた効果的なメッセージを自動生成します。これにより、企業は顧客ターゲティングと適切なチャネルの選定、最適なタイミングでのアプローチを効率化し、さらなる販促効果の向上が期待できます。
これからのマーケティング施策は、生成AIと機械学習の革新によってますます精緻化し、顧客とのより良い関係構築に貢献していくでしょう。マーケティングの未来は、これらの先進技術によって新しい可能性を見出し続けます。