(本記事は、i Magazineに発表されたものの一部を転載しています。全文はこちらをご覧ください)
Text=菊池 秋郎(日本IBM)、佐藤 なみえ(日本アイ・ビー・エム システムズ・エンジニアリング)、桐ケ谷 昇(日本IBM)、程 智勇(IBM China)
用途探索へのテキストマイニング適用
企業が成長していく上で、自社が保有する技術や製造する素材の新たな用途を探索し、継続的に新製品・サービスを生み出していくことが求められている。
経済産業省による企業アンケート調査(*1)でも、7割以上の企業が研究開発への投資目的は「新製品・サービスの提供」であると、最も多く回答している。
その一方、研究開発の課題として約半数のCTOが「経営戦略・事業戦略との一貫性のある研究・開発テーマの設定」および「研究・開発成果の製品化・事業化率の向上」と回答している調査結果(*2)もあり、多くの企業が保有する技術や製造する素材の具体的な用途・サービスを適切に設定できていない、あるいは見つけるのが困難な状況にあると思われる。
このような企業の課題を受けて、IT技術を活用したさまざまな新規用途・サービスの探索手法が提案されてきた(*3、*4)。これらの手法は専用のITシステムを独自開発して実施していると思われ、多くの企業にとって簡単に実施できないという課題がある。
近年、AI(自然言語処理)を活用したテキストマイニングによる特許分析手法(*5、*6、*7)が注目を集めている。これらは市販製品やオープンソースのテキストマイニングツールを活用したもので、専用のITシステムを開発することなく容易に着手できる利点がある。
この手法は新規用途探索への適用が可能で、実践企業から成果が報告(*8)されている。本稿ではIBMのテキストマイニングツールである「IBM Watson Discovery」を活用して、特許から新規用途・サービスを探索する基本的な手法を解説する。
また近年発展が著しい生成AIを活用して、用途を手軽に探索することも可能である。筆者らも生成AIを活用した用途探索を試行したが、現時点ではテキストマイニング手法と比較するといまだ課題があることが認識できた。
その課題についても解説するとともに、用途探索における今後の生成AIの活用に関する筆者らの見解を紹介する。
<参考資料>
*1 経済産業省 2023 令和4年度製造基盤技術実態等調査 我が国ものづくり産業の課題と対応の方向性に関する調査
*2 日本能率協会 2020 CTO Survey 2020 『日本企業の研究・開発の取り組みに関する調査』報告書
*3 太田貴久ら 2018 『特許文書を対象とした因果関係抽出に基づく発明の新規用途探索 人工知能学会全国大会論文集』 2L1-03
*4 高石静代ら 2018 『段階的発想法による用途探索 情報の科学と技術』 68 (4), 180-185
*5 菰田文男、那須川哲也 2014 『技術戦略としてのテキストマイニング』中央経済社
*6 那須川哲也 2018 『テキストアナリティクスの動向と特許情報処理』 Jaoio YEAR BOOK 2017
*7 豊田裕貴、菰田文男 2011 『特許情報のテキストマイニング』 ミネルヴァ書房
*8 三井化学 プレスリリース 2022 「三井化学、IBM Watsonによる新規用途探索の全社実用をスタート ビッグデータとAIの活用で営業DXを推進」