従来、JES2 $CS、$CJQ ($CJOBQ)コマンドでは、「P」オプション(PURGE)の指定有無によらず、実行中のSTCジョブをCANCELすることができません。
※実行中のSTCジョブをCANCELする場合は、MVSのCANCELコマンドを利用
※重複ジョブ名が存在する場合は、MVSのCANCELコマンド実行時に「A=asid」キーワード指定が必要
IEE842I jobname DUPLICATE NAME FOUND- REENTER COMMAND WITH 'A=' KEYWORD
【z/OS V2R3の変更点】
■z/OS V2R3以降では、「P」オプション(PURGE)の指定有無によらず、$CS、$CJQ ($CJOBQ)コマンドを利用して、従来のバッチ・ジョブやTSUと同様に、実行中のSTCジョブがCANCEL可能となりました。
■SDSFパネルから「P」アクション文字(PURGE)、「C」アクション文字(CANCEL)を入力した場合も、実行中のSTCジョブがCANCEL可能です。
■PARMLIB(ISFPRMxx)メンバーの「GROUP CONFIRM(ON)」パラメータ指定(省略時値)が有効な場合は、SDSFの「P」、「C」アクション文字を入力した際、「Confirm Action」のポップアップ・ウィンドウが表示されるので、ミスオペレーションの歯止めに有効です。
※省略時値(ON)が有効な場合、「SET CONFIRM OFF」コマンド実行時は「Confirm Action」ポップアップ・ウィンドウが非表示
※「GROUP CONFIRM(ALWAYS)」パラメータを明示指定した場合、「SET CONFIRM OFF」コマンドは実行不可
【考慮事項】
■z/OS V2R3以降、下記例のように$Cコマンドを範囲指定で実行した場合、STC番号が範囲内に存在する実行中のSTCジョブは、z/OS V2R2までと異なり、CANCEL対象になります。
※「$CS1-9999」コマンド、「$CS1-9999,P」コマンド
※「$CJQ1-9999」コマンド、「$CJQ1-9999,P」コマンド
【オペレーション不具合への対策例】
■従来、不要なジョブログを削除する際、実行中のSTCジョブはCANCEL対象外になる前提で、「$CS1-9999,P」コマンド、「$CJQ1-9999,P」コマンドを利用している場合、前述の機能変更に影響を受ける可能性があります。
※範囲指定で$Cコマンドを実行するオペレーションの代替として、「$DOS1-9999,LONG」コマンド、「$POSnnnn」コマンドなどを組み合わせて、特定ジョブログのみを削除する必要あり
■z/OS V2R5の事例 ※$DOSコマンドにて「LONG」オプションを明示指定した場合、「CRTIME」情報が表示可能
■「$DOS1-9999,LONG」コマンドの出力ライン数が大きい場合、JES2PARM CONDEFステートメントの「DISPMAX」パラメータ指定値(省略時値: 100)にて、出力メッセージの切り捨てが発生します。
※$DOSコマンドの分割、あるいは「DISPMAX」パラメータ指定値の増加を検討
【STCジョブに対するCANCELオペレーションの保護例①】
■STCで稼働するプログラムが「PPT NOCANCEL」属性 (省略時値: CANCEL)を持つ場合、$CSコマンド、$CJQ ($CJOBQ)コマンドによるSTCジョブのCANCELオペレーションは実行できません。
※MVS CANCELコマンド(CANCEL TEST3)実行時の挙動: IEE838I TEST3 NON-CANCELABLE - ISSUE FORCE ARM
■z/OS V2R5の事例: 「TESTPGM3」プログラムは「PPT NOCANCEL」(NC)属性あり
【STCジョブに対するCANCELオペレーションの保護例②】
■RACF OPERCMDSクラスに定義された「jesx.CANCEL.STC」プロファイル向けの「ACCESS(UPDATE)」許可を持たないユーザーは、SDSFパネルからの「P」、「C」アクション文字が入力できません。
【STCジョブに対するCANCELオペレーションの保護例③】
■RACF OPERCMDSクラスに定義された「jesx.CANCEL.STC」プロファイル、あるいは「jesx.CANCEL.JST」プロファイル向けの「ACCESS(UPDATE)」許可を持たないユーザーは、STCジョブのCANCELオペレーションが実行できません。
※「JES2.CANCEL.STC」プロファイルに対して「ACCESS(NONE)」許可の場合、$CSコマンド、$CS,Pコマンドは実行不可
※「JES2.CANCEL.JST」プロファイルに対して「ACCESS(NONE)」許可の場合、$CJQコマンド、$CJQ,Pコマンドは実行不可
【追加情報: 2023/12/07】
z/OS 3.1では、本件に関する機能拡張が行われました。
#112【z/OS 3.1新機能】 JES2による実行中STCジョブのキャンセル可否を制御する「JESCANCEL」オプション
https://community.ibm.com/community/user/ibmz-and-linuxone/blogs/shigeki-kimura1/2023/12/07/sharing-zos-upgrade-info-by-professor-kimura-112j
以上