IBM TechXchange watsonx Japan User Group

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IBM TechXchange 2025 - Orlando での基調講演のフィードバック(2/2)

By YOSHIOMI SEGAWA posted 15 days ago

  

みなさま、こんにちは

 

先週(10月6日〜9日)、エンジニア/ディベロッパー向けの年次イベント「IBM TechXchange 2025」が米フロリダ州オーランドで開催されました。私も現地に参加してきましたので、2日間にわたって行われた基調講演の内容をご紹介したいと思います。本記事では、2日目の内容をお届けします。

 

 

 

テーマ:「エンタープライズにおけるAIの未来」

2日目の基調講演は、IBM ソフトウェアのCTO Anand Jengranのモデレートで進行されました。テーマは「エンタープライズにおけるAIの未来」。消費者向けに進化してきたAIを、いかに企業の現場に適用していくか——その挑戦と可能性が語られました。

 

 

 

 

Ferrariとの共創:AIでファン体験を再定義

続いて登壇したのは、Ferrariのファン開発責任者Stefano Pollard氏とIBMインフラCTOのHilary Hunter。FerrariとIBMのパートナーシップによる「AIを活用したファンエンゲージメントの進化」が紹介されました。

  • 1秒間に1TBのF1データをAIで解析し、ファン向けに意味のあるコンテンツを生成
  • ファンの行動データをAIで分析し、パーソナライズされた体験を提供
  • 国・年齢・行動に応じたハイパーパーソナライゼーションの実現
  • エージェント型AIによるカスタマーケアやAIコンパニオンの導入計画

伝統を重んじるFerrariが、AI導入に対する社内の懐疑的な声を乗り越え、IBMとの信頼関係を築きながら変革を進めている姿は、他の企業にも大きな示唆を与えるものでした。

 

 

 

 

 

ライブデモ:AIが支えるスマートアプリの未来

続いてはIBMの製品群を活用したライブデモが披露されました。架空の小売サイト「TXC Demo」を舞台に、AIエージェントがユーザーの旅行予定に合わせて洋服を提案し、購入までをサポート。

  • Langflowを使ったエージェント構築
  • IBM MCPサーバーによる安全なデータ連携
  • InstanaとWatson Orchestrateによる障害検知と自動修復
  • DB2やMaximoとの連携によるパフォーマンス分析とインフラ改善

まさに「エージェントのオーケストレーション」が実現されており、AIが単なるツールではなく、企業の業務プロセスに深く組み込まれている様子が示されていました。

 

 

 

 

 

IBM Researchの未来予測:AIはどう進化するのか?

ここからはパネルディスカッション形式で進行が進みました。IBM ResearchのChief Scientist、Ruchir Puriが登壇し、AIの未来について3つの重要な視点を提示しました。

  1. プロンプトとプログラミングの融合:一貫性のあるエージェントの台頭
  2. 「知らないことを知る」AI:不確実性の自己認識
  3. 自己改善するエージェント:継続的な学習と進化

1つ目はエージェントをシステムプロンプトの工夫だけで制御しようとすると限界があったり逆に非効率だったりもするので従来のプログラミングでやっていた「失敗処理」や「復旧処理」、「ガードレール」みたいなものを融合し、一貫性のあるエージェントが登場することになるだろうという話です。二つ目はエージェントが不安を感じたら人間に「助けて」「質問があります」「レビューしてください」と言えるか、逆に常に「レビューしてください」と言ってくるエージェントは煩わしいので、その辺りの境界性を見極めることが重要で、エージェントが「自分が知らないことを知る」必要性ということです。3つ目は人間と常に学び改善していきますがAIエージェントも同様に継続的に学び改善していくべきという考え方のようです。

 

 

 

 

 

AI原則に対する参加者投票とIBM製品群の具体的な展開

「企業におけるAIの最も重要な進展は何か?」という問いに対する参加者投票が行われました。選択肢はIBMの製品開発で取り組んでいる5つの原則だったようです。投票結果が0票の項目がなかったので安心したとコメントがありました。

1位:エージェンティックAIシステムが企業のメインストリームになる(32%)

2位:質の低いデータが最大のボトルネックになる(27%)

3位:MCPやA2Aのようなエージェントプロトコルが主流になる(16%)

4位:AI統合型の生産性ツールの浸透(14%)

5位:飛躍的に高効率なモデル(11%)

 

 

この投票結果を確認した後それぞれの原則に沿った製品展開について紹介がありました。特に取り上げられていたのは以下のようなものです。

・WCA4Z(watsonx Code Assistant for Z):COBOLは世界で最も古いプログラミング言語の一つで、約8000億行のコードが存在すると言われています。しかし、その多くはファイアウォールの内側にあり、Web上では見つかりません。IBMは、メインフレームシステムに特化したモデルを構築するために、膨大なデータをキュレーションしました。これは単なるモデルではなく、アプリケーションライフサイクル全体を支えるシステムです。

・IBM ConcertにおけるCISO(情報セキュリティ責任者)エージェント:エージェント技術とIT運用・管理の世界が融合した例です。

・Spyreアクセラレーター:Spyreカードにより、AIの計算処理(マルチモーダルなど)を効率的に実行でき、コスト、スケーラビリティ、データ保護の観点から最適なAI導入が可能になります。

・次世代BI (watsonx BI):従来のBIは、レポート作成や複雑なデータ接続が中心でしたが、AIとエージェント技術により、まったく新しいレベルに進化します。ただし、重要なのは「グラフを作る」ことではなく、その背後にあるセマンティック解決です。データ、認証、スケーラビリティ、正確性などの「水面下の重労働」が必要です。

・watsonx.dataとunstructured.ioの統合:Unstructured.ioとの連携により、非構造化データをクエリ可能な形で活用できるようになります。

 
 

 
 

 

最後に途中のデモンストレーションでショッピングをしていたVishがTXC Demoで服を購入し、東京へ旅立ち、素晴らしい時間を過ごしているというオチで閉幕となりました。

 

 

 

 

 

リプレイ動画

基調講演のリプレイ動画も公開されています。実際の講演をご覧になりたい方はこちらからどうぞ:

Agents Transforming Enterprise Technology

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