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【私の履歴書#14】佐藤 史子さん

By KEIKO MORITA posted 07/24/26 03:17 AM

  

佐藤 史子

IBM Software

Software Innovation Lab Japan Lead, STSM, Agents and Automation

物理学専攻で修士課程修了後、2001年に東京基礎研究所に入社。IBMでの勤務、出産・子育てをしながら2010年にコンピューターサイエンスの博士号を取得。現在は、Software Innovation Labの Japanリーダーを務める。


Interview #14

入社時から東京基礎研究所にて従事し、リーダーを務めるチームが今年12年目を迎えた佐藤さん。

理系で学ぶ女性に対する想いや、チームメンバーの活躍を重視する考えから、研究を担うリーダーとしての強さと思慮深さが垣間見えます。


世の中に影響があると感じられるところ・初期段階で新しいものを作れるところが良い

--IBM・東京基礎研究所に入社した理由をお聞かせください

修士課程を卒業してすぐに東京基礎研究所に入社し、今年で26年になります。

修士課程では物理学専攻で原子核物理を学んでいて、博士課程に進むか考えた時に、「物理学はサイエンスとしては面白いけれど、突き詰めても社会や生活に直接的なインパクトを与えづらい」と感じました。

そこで、自分がやったことで世の中に影響があると感じられるような進路を考え始めました。

コンピューターは、研究室に入ってほぼ初めて触ったという状態でしたが、「使う」より「作る」方が面白いかもと思い、ソフトエンジニア職の中でも、開発ではなく「初期段階で新しいものを作れる」ようなところが良いと感じていました。

研究の視点で情報系の就職を探していましたが、当時日本にはそのような企業はあまりなく、IBMは数少ない研究所をもつ企業でした。

バックグラウンドが物理学なので情報系の選考はなかなか難しかったのですが、東京基礎研究所に最初に合格が決まり、新卒で入社しました。

IBMを知ったきっかけが当時持っていたデスクトップPCだったので、「黒いパソコンで、格好いいな」という印象だったと思います。


理系で学ぶ女性にとって、環境が変わっていないと感じている

--ずっと理系志望でいらっしゃったのですか?

もともと理科や、高校では物理が好きで、ずっと理系しか考えていませんでした。

理系の女子高生は医学部・薬学部志望が多く、自分も最初は医学部志望でしたが、やっぱり物理が好きで、入試直前に理学部物理学科に志望変更しました。

今感じることは、自分が大学に入学した30年前から、理系で学ぶ女性の割合が変わっていないということです。

医学部・薬学部は女性の割合が多いですが、理学や工学を学ぶ女性に限ると、研究室などコミュニティでの割合はほぼ変わっていない印象です。

「理系女性の割合を増やさなければいけない」と標語のように言われていますが、実際の状況が30年前から大きくは変わっていないと感じます。

特に、医学・薬学専攻だと病院や薬局で働くという想像ができますが、物理学などの理学専攻だと、将来何をするのかのイメージが難しいというのは一つの要因かと思っています。

そのような状況をなんとかしなければいけないとはずっと考えているので、是非cosmosや企業を巻き込んで、女子高生や理系を目指す女性をターゲットにした活動をしていきたいです。

--是非お願いします!


仕事・出産・育児をしながら、博士号を取得

--IBM入社後の働き方について教えてください。

入社時から大和事業所にいた上、リサーチの特性上グローバルの動きを注視していたので、自分が「日本IBM」の人間だと意識し始めたのは少し経ってからだったように思います。

最初は、WebSphereの新しいセキュリティ関連機能を開発するチームにいて、リーダーや先輩の指示のもとで働いていました。

その中で、研究所に所属する研究者として、博士号の取得を目標としていました。

社会人博士として入学するためにいくつか研究室を回り、最終的に母校の情報系の研究室に3年間在籍した後、2010年に博士号を取得しました。

当時は、博士号取得のために必要な論文の本数や国際会議での発表の回数など、会社の仕事と両立するには割と高いハードルだったと思います。

また、同時期に2人目の子どもが生まれていて、仕事・博士課程の間に出産・子育てを経験しています。

1人目の出産時は2ヶ月産休を取得しましたが、2人目は産休を取得せず仕事復帰しました。大学在学中は教授にも理解をいただきながら、仕事と大学を調整しつつ両立していました。

--そのような状況を乗り越える上で、ロールモデルはいましたか?

女性として特定のロールモデルは意識しませんでした。一方で、グローバルには技術リーダーとして活躍している女性が多くいました。

今では出産育児のサポートも手厚く情報も豊富ですが、当時は産休の経験がある方も周囲におらず、知らないことが多く情報を集めるのに苦労した記憶があります。

 


プロジェクトリードを、政府の研究公募案件で経験

--博士号取得後のお仕事について教えてください。

博士号取得までは論文執筆を目指して特定の分野の研究に関わることを意識していましたが、取得後は自由に今までやってこなかったことを選ぶようになりました。

その時流行りのテーマを模索したり…

東京基礎研究所として経産省の研究公募案件に通過し、研究費をいただきながら研究プロジェクトをリードしたこともあります。

産休明けに応募したものが通過して、何千万円ものファンドが出たのです。

自分で研究提案を書き、審査を通過した案件だったので、技術リーダーとしての役割に加えて、チームを作ったりプロセスを作ったりといった管理者的な役割も担いました。

その2年間は新しいことに多く直面してとても大変だったと思います。

政府の案件は経費承認などの事務プロセスが多いのですが、東京基礎研究所には前例がなかったプロセスもあり、誰に何の承認をもらえばいいのかから考える必要がありました。

やはり外部、特に政府からファンドをいただいているので、定期報告などやるべきことも多かったです。

2年目の報告書を3月に提出した頃に東日本大震災が発生して、プロジェクトは2年で終了となってしまいましたが、自分でプロジェクトリードをするいい経験になったと感じています。

その後は、森本典繁さんが東京基礎研究所の所長だったころにTechnical Assistantとして働きました。

外のお客様と話す機会に立ち合わせていただくこともあり、どのような視点で話すのか、誰を意識して仕事をしているかなど、視座を高くもつための勉強ができました。

アシスタントの仕事は楽しかったのですが、このままだと研究者に戻れなくなると思い、今までの経験とは異なるアナリティクスや数理科学、AIの研究チームに入りました。

1年半従事して、自分としてはあまり結果を出せなかったのでもう少し頑張ろうかと思いましたが、元々マネージャーだった方から声がかかり、元いた組織のマネージャーを務めることになりました。


グローバルのメンバーは、仲間でもあり、日本のメンバーのために対峙する相手でもある

自分が何をやるべきか、チームメンバーにどこで頑張ってもらうかなどを考え始めたのはマネージャーになってからです。

日常的にグローバルのメンバーと会話しますが、もちろん仲間ではありつつ、日本のメンバーのために緊張感を持って向き合う相手だとも思っています。時差や言葉の壁があるでも、グローバルで我々が必要とされるための存在感や成果を出すためには、どのように動くべきか日々考えています。

昨年には、自分のチームが10年目を迎えて、チームメンバーがお祝いをしてくれました。

チームメンバーの変動もありますが、トピックをトレンドに合わせて変えながら、一度も解体せずに10年を迎えられたことは嬉しく思います。


グローバルで活躍している女性技術リーダーとの再会

--印象に残っている出会いはありますか?

7年ほど前に、アメリカでWomen Technical Leader向けの外部研修プログラムに参加しました。

エグゼクティブを目指す女性技術者向けのもので、米国企業から様々な業種の女性リーダーが参加していて、IBMからもSTSMやDEを目指す女性が10人くらい参加していたと思います。

とはいえ、地球の裏側から参加していたのは自分だけでした。

1週間、ツーソンの砂漠にあるホテルで缶詰めになってリーダー研修を受けたのですが、普段あまり接することないビジネス視点の学びも多く、何より重要なネットワーキングの機会になりました。

その時に、IBM zのセキュリティに関する仕事をしているAnne Damesと出会いました。

当時自分は全く違う領域の仕事に携わっていたのですが、この約5年でIBM zのセキュリティに関する研究をするようになったので、DEになっていたAnneに声をかけてみたところ覚えていてくれたんです。

昨年には、IBM z関連の仕事で彼女が来日し、7年ぶりに再会することができました。いまや共通する課題に取り組んでいるので、今後は仕事で協業したいと思っています。

まだ一緒に成果を出すまでには至っていませんが、1週間の研修を乗り越えた仲として、IBM zのセキュリティ領域をリードするDEになった彼女との繋がりを感じられて、とても嬉しかったです。


ワークライフバランスをとることを意識しない

--ワークライフバランスのために意識していることはありますか?

あまりワークライフバランスをとろうと考えていないです。

一般的には、仕事をして、それと匹敵するように趣味にも時間をとる、ということが「バランス」だと考えられていると思います。

自分は、仕事と生活が同じになっている感覚で、時間を分けてバランスをとる必要性を感じていないです。

昼間仕事をして、家事の時間や家族との時間があった後に、夜にはグローバルとのミーティングがあるので、「仕事をしていない時間にできることをする」という感覚です。

参考にはならないかもしれませんが、自分がストレスを溜めなければいいと考えています。

とはいえ、大きな仕事が終わったタイミングで、チームみんなで休みを取って食事やイベントを企画することはあります。

例えば、7/4のUSの独立記念日は、USのメンバーとの夜のコールが減ります。そのため、日本のメンバーがイベントに参加しやすくなるので、その前後にEngagement Eventを企画しています。

過去には、バーベキューをしたり、山梨でワインを飲んだりしました。昨年は箱根旅行に行って好評だったので、今年も同じく箱根で一泊してリフレッシュしました。

そういった大きな形でのメリハリは意識していますが、普段の1日の中での意識はあまりしていないですね。


チームメンバーがリーダーである自分を飛び越えて、バイネームで覚えられるような機会を作りたい

--リーダーとして大切にしている価値観を教えてください。

よく、技術者よりマネジメントが向いていると言われます。

確かに、技術が好きではありますが、特定の技術を見れば自分よりもできる人がたくさんいます。

自分が技術を引っ張っていくという気持ちもありますが、それよりもメンバーの力をどう組み合わせれば解決の方法を導くことができるかを考えています。

メンバー各自に力を最大限発揮してもらって、1つの大きな成果を作り出すことが好きです。

もちろん、会社の方針とメンバーの希望が合わなければうまくいかないこともありますが、できる限りみんなの力を最大化したいと思っています。

一方で、大きなプロジェクトでは、リーダーだけが目立ってしまい、グローバルのリーダーから日本のメンバーの活躍が見えにくくなることがあります。

この状況を打破しないと、チームとしては大きくなれないと考えています。

チームメンバー各自が、リーダーである自分を飛び越えて、一緒に仕事をしている人にバイネームで覚えてもらえるような機会を作れるように意識しています。 

日本人は国民性なのか控えめなので難しいこともありますが、自分も過去にアピールせずに損をしてきた経験があるので、チームメンバーには是非アピールしてほしいと思っています。


チームのミッションは新しい技術やアイディアを、製品の価値に翻訳すること

--今後もチームを育てていく立場でありたいと思いますか?

そうですね。

何か解決しなければいけない問題や課題があるときに、アイデアを考えて、それを実現するためにはどの人の技術・力が使えるかという最初のプランを立てることが好きなのだと思います。

自分はチームメンバーと議論しながら新しいアイディアを考えて、メンバーにはその価値を伝えるための技術を作ってもらい、その価値を製品の機能として製品開発のチームとともにリリースに繋げるのがミッションと考えています。

メンバーの力をどう組み合わせるか、どう見せるかをずっと考えていますし、今後も続けていきたいです。


インタビューアー:加藤 涼子、西子 のあ、奥川 充佳子

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