リーダー×女性技術者インタビュー
〜チーフ・ダイバーシティー・オフィサー(CDO) 今木正英さん〜
10月より日本IBMのチーフ・ダイバーシティー・オフィサー (CDO) に就任された今木正英さんとcosmosコアメンバーの藤田郁子さんの対談記事です。多様性が尊重される職場環境の重要性とそのような環境を作るために推進すべきことについて、また、男女問わず技術者の活躍について今木さんのご経験を交えながらお話を伺いました。
これまでのキャリアについて教えてください。
今木さん:
IBMに91年に入社し最初は公共でCISパッケージなどを担当する医療のAccount SEを10年務めました。その頃インターネットでのWebシステムが台頭し始め、ぜひこの分野のテクノロジーに触れたいということで異動し、Webシステムの開発でPMを経験しました。その後、誘いを受ける形でGTSに異動し、サーバー、ミドルウェア、ストレージといったインフラ系のデリバリーマネージャーを経験しました。インフラ構築ではオンプレシステムで各種自動化にも取り組んでいましたが、時代の先にクラウドシステムが見えてきた頃、クラウド・テクニカルセールスのリーダーの機会をいただき、現在のIBM Cloudにつながっています。その後、ポストセールス担当としてチーフ・クオリティー・オフィサー(CQO)の役割に就き現在に至ります。
藤田さん:
私は2002年に入社したのち、Power Systemのテクニカル・セールスサポートとして経験を積みました。その後2008年にGBSに異動し、前職のスキルを活かしながらプロジェクトでのデリバリーに携わるようになりました。また、2019年頃にAWSのスキルを身につけるコミュニティーへの参加をきっかけに、クラウドを使用したインフラ構築に携わるようになり、現在もAWSクラウドでシステム構築するプロジェクトに携わっています。
多様性が尊重される職場環境の重要性について。会社側、働く側、双方の視点からのメリットは何でしょうか。
今木さん:
まずは、会社側の視点から。これをやったら業績があがるのか?と聞かれることがありますが、 私はポイントはそこではないと考えています。もちろん結果論として業績が上がることがあるかもしれませんが。 本質はいろいろな考えをもつ組織は意思決定において偏りがなく強い組織になるという点だと考えます。 多様性の中には、男女だけではなく、その他の性志向、障がい、介護、育児など、あらゆる視点がありますが、 世の中には誰一人として100%同じ人は存在せず、誰もが多様性の中の一人なのです。 そういう状況で例えば、同じ学校の同じ学科出身の人で固めて意思決定してしまったら、 決して良いものは生まれないと思います。会社として多様性を重視する理由はそこにあります。
働く側としてのメリットは、一番には多様性を重視する会社であるということは、働く人にとって安心領域があるということ。 安心して働けるということは、働く人にとって会社に(組織に)何かあっても支えてくれる場所がある、 相談できるところがあると感じながら、自分たちの力を発揮することができることだと考えます。
女性技術者の活躍において課題と感じていることはありますか?
今木さん:
女性管理職の人数が増えてきたといっても会社全体で見ると割合的には少ない状況です。女性技術者が働く上でマネージャーが男性であることが多いですし、同様にプロジェクトマネージャーも男性というケースが多く、ご家庭がある方の場合には、個人の状況や希望を理解しないままマネージャーが「早く帰ってもらわないと」など無意識にバイアスを持ってしまっている事が一つの課題と考えています。一方、キャリアの視点では昇進のための申請パッケージをまとめる上で育児や出産でどうしても仕事を休む期間が出てきてしまい、何年以内の活動を何件という昇進条件で困難が生じてしまうなどの事実はあると考えています。これについては女性自身の課題ではなく女性に対する会社の課題ということがあると思います。
社外から見ると、IBMは女性の活躍が進んでいると言われることも多いですが、これらの点や他にもいろいろな人の話を聞いているとまだまだこれからと感じるところがあります。部署によってもばらつきもあると思います。
藤田さん:
お話を伺って周囲の環境は大事であると感じました。家庭のことなどを考えて自分のできるところはここまで、とつい上限を設けてしまうところがありますが、cosmosの活動において活躍している女性と接していると、自分ももう少し頑張れるかもしれないと感じることがあります。女性管理職が増えていけば相乗効果があるのかもしれないと思います。
今木さん:
ポジションが人を作るといいますが、マネージャーになったらなんとかなるんですよ。そこまで重く考えずに、チャンスがあればまずはトライしてみるということがすごく大事だと思います。男女問わず、マネージャーになると技術のキャリアが途絶えてしまうと考えるかもしれませんが、IBMでは営業と技術、相互にキャリアを変更することもできるし、マネージャーになってプレイングマネージャーとして活躍し、その後技術者に戻ることも自由なので、一方通行ではありません。最初から満点のマネージャーはいませんので、まずはトライすることで、これまでと違ったコミュニケーションが出来てネットワークも広がります。あまり壁を高くしないことがよいということです。
女性技術者に期待することは何ですか?活躍していくためのアドバイスはありますか?
今木さん:
技術者として男女関係ない話になりますが、技術者として対外的に発信していくことが重要です。市場の中でかつてはIBMが先生役になることが多かったですが、今はむしろ外から学ぶことの方が多いです。我々も対外的に行動していかないとネットワークが広がらないので、技術者は自分の経験などを含め外に発信・共有することを積極的に実施してほしいと思います。そのような活動を社内でも見ている人は見ています。ですので、例えばその活躍を見た若手の人が自分もこういうことができるのかなとイメージを得られることが大事なところだと思いますのでぜひ取り組んでいただきたいです。
チーフ・ダイバーシティー・オフィサーとして、今最も注力している取り組みは何ですか?
今木さん:
ここ数年、様々なコミュニティーに参加していますが、すべてのコミュニティーに共通するのは、やはり「皆が安心して個人の力を発揮できる環境を作る」ということです。コミュニティーそれぞれで細かいアクションは違いますが、最後の目指すところは共通というところから、うまくこれらのコミュニティーの交流を深めていきたいと考えています。
IBMのD&I戦略の中で、社員一人ひとりができることは何だと思いますか?
今木さん:
みんなが安心するためには何ができるかと考えると、自分はサポーティブであるという意思をちゃんと示すことだと思います。 いくら心の中で思っていてもそれだけでは相手に伝わらないので、一人一人がサポーティブであることを示すことはとても大事です。 しかし、どのカテゴリーでも半分近くが無関心層といわれており、コミュニティーのコアメンバーからの働きかけだけで無関心層の方を輪の中にいれていくことは難しい側面があります。意思表示ができるようになったら今度は周りの人を輪の中に入れていく、そこは社員一人一人が意識を持ってお願いしたいと思います。
藤田さん:
意思表示の仕方として具体的にどのような行動がありますか?
今木さん:
例えば LGBTQであればアライ宣言、あとは社員情報にそれを記すとかメールの署名に入れる、コミュニティーに参加するなどがあります。以前、外部のカンファレンスで登壇された方が、「自分は当事者で、普段暗闇の中を手探りで歩いているようだ」と発言されていたことがあります。 そういった状況の中で我々の意思表示があると暗闇の中に灯りが灯っているように感じるというわけです。灯りをつないで広い面積となっていくと、そこが当事者の方が安心できる環境(領域)になっていきます。
藤田さん:
誰かにとって暗闇に灯を灯すには、意思表示することが第一歩であるということがわかりました。
今木さんがこれまでのキャリアの中で、転機となった出来事や挑戦は何でしたか?
今木さん:
マネージャーになった時が一番印象的でした。GTSに異動した際、マネージャーにチャレンジする機会を得ました。これまでプロジェクトマネージャーとして大きなチームを動かす経験はしていましたが、会社の中でラインマネージャーになる経験はしておらず、プロジェクトマネージャーとラインマネージャーの違いはなんだろうという興味が湧いていたこともありチャレンジしました。マネージャーになった際には、事業部も変わりましたが、それ以上に全く違う職種になったことや責任が生まれたことが大変刺激になりました。まずはやってみて、素直に面白くやりがいがあるなと感じたことが印象に残っています。マネージャーになることでこれだけ広がりやつながりができるというのはそれまではイメージできていませんでした。
困難な状況に直面したとき、どのように乗り越えてこられましたか?
今木さん:まずは一人じゃないということです。お客様と対応する時はもちろん会社の代表という意識でいますが、絶対自分は一人ではなく会社が必ずバックアップしてくれるということをあえて自分自身にリマインドして気持ちを落ち着かせ、安心させるようにしています。
何かやろうとすると大きい山に見え大変さも感じますが、少しずつ皆でやっていけば少しずつ登れる。あとは過去一番に大変だった時を思い出し、あの時の山より全然低いよなと前向きに考えるようにします。
辛い時期が長丁場となる時は先が見えなくて精神的に辛くなる時はありますが、そういう時は最後のゴールではなくて目の前、半日先や1日の終わりに向けて短い目標を作り乗り越えるようにし、自分を前に動かすようにしています。
多様な価値観を受け入れるカルチャーを育てるために、リーダーが果たすべき役割とは?
今木さん:
リーダー自らが模範になって行動することがまず必要だと思います。リーダーが自ら意思表示し、行動することで、メンバーもやろうと思えるようになります。多様な人がいる中で、皆が話しやすい雰囲気や場所を設けることもとても大切だと思います。一般的なチームのカルチャーにも通じると思いますが、話しやすいチームにしていくためにリーダーが担う役割は大きいと思います。