従来、シリアル番号の下4桁が一致する別CEC上に存在するz/OSシステムは、同一シスプレックスに参加できない懸念があるため、その機能制約を排除する目的でXCF APAR OA62719が作成され、z/OS V2R3~V2R5に対して修正策が提供されました。(2022年4月)
※修正策を有効化するための前提として、シスプレックス CDSがSSD(System Status Detection)プロトコルをサポートするレベルにフォーマットされている必要あり ・・・ PTFのHOLD(ACTION)参照
z/OS V1R11で新登場したSSDは、シスプレックス障害システムの切り離しに関する機能拡張です。BCPii(Base Control Program Internal Interface)を通じてハードウェアからシステム状況を取得することで、障害システムの切り離しを速やかに行うことが可能となります。
使用中のシスプレックス CDSがSSDサポート・レベルかどうかを判別するには、「D XCF,COUPLE,TYPE=SYSPLEX」コマンドを実行して、「SYSTEM STATUS DETECTION PROTOCOL IS SUPPORTED」メッセージの表示有無を確認します。
※メッセージ非表示の場合は、SSD非サポート・レベル
【z/OS 3.1の変更点】
■z/OS 3.1では、前述のXCF APAR OA62719による修正策が標準機能として提供され、SSDプロトコルをサポートするシスプレックス CDSの使用が必須となりました。
※z/OS V2R3~V2R5において、XCF APAR OA62719のPTF適用済、かつ、HOLD(ACTION)の実行済であれば、既にSSDサポート・レベルのシスプレックス CDSを使用中
■z/OS 3.1では、SSDサポート・レベルのシスプレックスCDSを使用しない場合、下表に示すような重大な悪影響を及ぼします。
※z/OS V2R5までは、XCF APAR OA62719のPTF適用有無によらず、SSDサポート・レベルのシスプレックス CDS使用は必須ではありません
■z/OS 3.1によるシスプレックス初期化の失敗例(事例②)
※エラー・メッセージIXC255Iに含まれる理由(IT WAS CREATED AT A FORMAT LEVEL LOWER THAN THIS SYSTEM REQUIRES)は、z/OS 3.1にて新規追加
■z/OS 3.1で、事象①、②が発生した場合、次のようなリカバリーが必要となります。
事象① 稼働中のシステムにて、SSDサポート・レベルのシスプレックス CDSを新規作成して動的反映
事象② 移行前のシステムを再稼働、あるいは、z/OS 3.1をXCFローカル・モードにて稼働させ、SSDサポート・レベルのシスプレックス CDSを新規作成
【z/OS 3.1移行に向けた事前対応】
■現行のシスプレックスCDSがSSD非サポート・レベルの場合、事前にSSDサポート・レベルのシスプレックスCDS(基本/代替)を新規作成する必要があります。
※「DEFINEDS SYSPLEX(name)」制御ステートメントを含むフォーマット・ユーティリティー(PGM=IXCL1DSU)にて、「DATA TYPE(SYSPLEX)」制御ステートメントの「ITEM NAME(SSTATDET) NUMBER(1)」指定を追加
■ローリングIPL方式でz/OS 3.1へ移行する場合(z/OS V2R4、V2R5稼働中のシスプレックスに、z/OS 3.1を参加させる場合)、新規作成したSSDサポート・レベルのシスプレックスCDS(基本/代替)を、稼働中のシスプレックス構成に動的反映します。
※下記コマンドを実行して、新旧のシスプレックス CDSを入れ替え(基本/代替とも)
■z/OS 3.1移行に備えて(ローリングIPL方式、シスプレックス・ワイドIPLによらず)、新規作成したSSDサポート・レベルのシスプレックスCDS(基本/代替)をPARMLIB(COUPLExx)メンバー(PCOUPLE/ACOUPLE)に反映します。
【考慮事項①】
■z/OS 3.1では、MONOPLEX環境、MULTISYSTEM環境によらず、SSDサポート・レベルのシスプレックスCDSを使用することが前提です。
■MONOPLEX環境でSSD非サポート・レベルのシスプレックス CDSを使用中の場合は、IBM Health Checker for z/OSによる「CHECK(IBMXCF,XCF_SYSSTATDET_PARTITIONING)」チェックを実行した際、IXCH0526E例外メッセージ(REASON: SYSPLEX COUPLE DATA SET NOT FORMATTED FOR THE SSD PROTOCOL)は未出力となりますが、z/OS 3.1移行時の対応は必須となります。
※MONOPLEX環境でのチェック実行例(z/OS V2R5)
【考慮事項➁】
■z/OS 3.1での新しい要件は、SSDプロトコルをサポートするレベルのシスプレックス CDSを使用することであり、実際にSSDプロトコルを活用するかどうかは任意です。
※ベスト・プラクティスとして推奨されるSSDプロトコルを活用する場合、「ITEM NAME(SSTATDET) NUMBER(1)」指定によるシスプレックスCDSのフォーマットに加え、BCPiiによる構成、PARMLIB(COUPLExx)メンバーにて「FUNCTIONS ENABLE(SYSSTATDETECT)」ステートメント(省略時解釈)を有効化するなどの対応が必要
■DISPLAY XCF,COUPLEコマンドの実行結果(IXC357Iメッセージ)、「OPTIONAL FUNCTION STATUS」として「SYSSTATDETECT」が「DISABLED」表示されている場合でも、z/OS 3.1の新要件を満たす上では、「ENABLED」(省略時解釈)への変更不要です。
以上