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#126【z/OS V2R4/V2R5/3.1変更点】 RVARYパスワードのKDFAES暗号化(RACF PTF適用時のアクション)

  

z/OS V2R2、または、APAR OA43998/OA43999z/OS V1R12からV2R1)では、RACFパスワードの暗号化方式として「KDFAES」(Key Derivation Function with Advanced Encryption Standard)が新規サポートされました。

IBM推奨のKDFAES方式では暗号鍵が「AES256ビット」になり、従来のDES56ビットキー)方式より強固な保護手段を提供 ➡ RACFパスワード・アルゴリズム処理における暗号強度が向上

KDFAES方式ではCPACFを使用 ➡ CPACF使用不可の場合はソフトウェアで代替するため、パフォーマンス上のデメリットあり(CPU負荷)

KDFAES方式は、ICHDEX01 Exitルーチンに依存することなく、「SETROPTS PASSWORD(ALGORITHM(KDFAES)) 」コマンド実行にて使用可能となり、次回のパスワード、パスワード・フレーズ変更時に、KDFAESアルゴリズムにてパスワード暗号化が行われます。

KDFAES方式が使用可能な環境でも、現行のDESパスワードは有効

ALTUSERコマンドのPWCONVERTキーワードを使用すれば、現行のDESパスワードからKDFAES パスワードへの変換可能(パスワード・フレーズは変換不可)

RVARYパスワード向けの新機能】

■従来、RVARYコマンドを通じて、①ステータスの変更(ACTIVE/INACTIVE)、②データベースのスイッチ(SWITCH)、③稼働モードの変更(DATASHARE/NODATASHARE)を行う際、出力されたWTORメッセージ(ICH702A/ICH703A)への適切なパスワードを応答する必要があります。

RVARYパスワードは、「STROPTS RVARYPW(STATUS(status-pw) SWITCH(switch-pw))」コマンドにて指定 ・・・ 省略時値(YES

RVARY ACTIVERVARY NODATASHARERVARY SWITCHコマンドが、マスター権限をもつコンソールから実行された場合、WTORメッセージへの応答として、個別定義のパスワードに加え、「YES」も有効

20243月にPTF出荷開始のRACF APAR OA65905(対象: z/OS V2R4V2R53.1)では、RVARYパスワードをKDFAES方式にて暗号化するための新機能を提供し、SETROPTS RVARYPWコマンドに対してKDFAESキーワードが追加されました。

SETROPTS RVARYPWコマンド実行時のKDFAESキーワードは、STATUS/SWITCHパラメータ同時、あるいは別々に指定可能です。(従来同様、RACF SPECIAL属性が必要)

SETROPTS RVARYPW(STATUS(status-pw) SWITCH(switch-pw) KDFAES) または

SETROPTS RVARYPW(STATUS(status-pw) KDFAES) + SETROPTS RVARYPW(SWITCH(switch-pw) KDFAES)

KDFAES方式によるRVARYパスワードの暗号化は、冒頭の「SETROPTS ALGORITHM(KDFAES)/NOALGORITHM」コマンド指定状況とは無関係に行われます。

APAR OA65905PTF適用に伴い必要なアクション】 ※HOLD(ACTION)情報参照

RACF APAR OA65905では、PTF適用時のHOLD(ACTION)として、下記全ての場合において、RVARYパスワードのKDFAES暗号化を行う必要があります。

RACFデータベースを複数システムで共有する場合、単一システムで使用する場合

RVARYパスワードを個別定義している場合、省略時パスワード(YES)を使用している場合

RVARYパスワードのKDFAES暗号化を行う際、個別定義のパスワード、省略時パスワード(YES)とも、既存パスワードの踏襲は可能ですが、この機会にパスワードを変更することが強く推奨されています。

RVARYパスワードのKDFAES暗号化ステップ】

PTFHOLD(ACTION)としてRVARYパスワードのKDFAES暗号化を行う場合、特にRACFデータベースを複数システムで共有する環境では、全システムへのPTF適用と反映が前提となります。

(ステップ1 RACFデータベースを共有するz/OSシステム全てにAPAR OA65905PTFを適用して、システムを再起動する ・・・ 同時適用、反映の必要なし

(ステップ2 RACFデータベースを共有するz/OSシステム全てにPTFが反映された段階で、KDFAESキーワード指定のSETROPTS RVARYPWコマンドを実行する

APAR OA65905PTF適用後に再起動したシステムでは、SETROPTS LISTコマンド実行結果の「PASSWORD PROCESSING OPTIONS」セクションにて、「KDFAES方式への変換が未実施」である旨を示すメッセージが追加表示されます。

RACFデータベースを複数システムで共有する環境)

RACFデータベースを単一システムで使用する環境)

RACFデータベースを共有する全システムで、SETROPTS LISTコマンド実行結果に「KDFAES PASSWORD CONVERSION IS PENDING. (SEE APAR OA65905)」が表示されたことを確認したら、KDFAESキーワード指定のSETROPTS RVARYPWコマンドを実行します。

KDFAESキーワード指定のSETROPTS RVARYPWコマンドは、どのシステムからも実行可能(従来同様、RACF SPECIAL属性が必要)

SETROPTS RVARYPW(STATUS(status-pw) SWITCH(switch-pw) KDFAES) または

SETROPTS RVARYPW(STATUS(status-pw) KDFAES) SETROPTS RVARYPW(SWITCH(switch-pw) KDFAES)

KDFAES方式によるRVARYパスワード暗号化が完了すると、RACFデータベース共有の有無によらず、SETROPTS LISTコマンド実行結果から、「KDFAES PASSWORD CONVERSION IS PENDING. (SEE APAR OA65905)」の情報が除去されます。

RVARYパスワードを個別定義している場合、SETROPTS LISTコマンド実行結果に含まれる内容が変化するため、影響有無を確認

※今後のRVARYパスワード変更時にKDFAESキーワード指定は不要 ➡ 明示指定せずとも、KDFAES方式による暗号化を継続

【考慮事項①】

RACFデータベースを複数システムで共有する環境にて、APAR OA65905PTF適用有無が混在している場合、KDFAESキーワード付きのSETROPTS RVARYPWコマンドを実行してしまうと、PTF未適用のシステムでは、個別定義されたRVARYパスワードが無効になります。

※省略時パスワードに依存している場合は、全システムにて有効

RVARY ACTIVERVARY NODATASHARERVARY SWITCHコマンドが、マスター権限をもつコンソールから実行された場合は、出力されるWTORメッセージに対して「YES」がパスワードとして使用可能

■個別定義されたRVARYパスワードを使用可能とするには、PTF未適用システムにてSETROPTS RVARYPWコマンドを改めて実行する必要があります。

PTF適用済システムのSETROPTS LISTコマンド実行結果にて、「KDFAES PASSWORD CONVERSION IS PENDING. (SEE APAR OA65905)」を表示

【考慮事項➁】

RACFデータベースを複数システムで共有する場合、例えば次のような組み合わせでz/OS V2R3以前のシステムを含む構成も想定されますが、そのような混在環境ではKDFAESキーワード指定のSETROPTS RVARYPWコマンドを実行しないように注意ください。

z/OS V2R2V2R3V2R4が混在

z/OS V2R3V2R5が混在

■例えば、z/OS V2R3からV2R5へローリング方式で移行する場合、APAR OA65905PTFz/OS V2R5システムに適用済でも、RVARYパスワードのKDFAES暗号化をすぐには行わず、全てのシステムがz/OS V2R5APAR OA65905PTF適用済)となった段階で、KDFAESキーワード指定のSETROPTS RVARYPWコマンドを実行する必要があります。

 

【追加情報: 2024/04/19】

■RRSFネットワークを介して、新しいKDFAESキーワード付きのSETROPTS RVARYPWコマンドをターゲット・ノードに送信する場合、対象ノードではRACFデータベース共有の有無によらず、APAR OA65905のPTFが全システムに適用され、かつ、システムが再起動(PTF反映済)されている必要があります。

※参照: HOLD(MULTSYS)情報

以上