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#103【z/OS V2R5変更点】 「Validated Boot」新機能に伴うIEE254Iメッセージ出力への影響(D IPLINFOコマンド)

  

IBM z16 + z/OS V2R5」の稼働環境では、セキュリティー強化を目指した「Validated Boot for z/OS」新機能が提供され、IPLされたオペレーティング・システムに含まれる中核ソフトウェアの整合性を検証することが可能です。

■「Validated Boot」新機能は、①「IPLテキスト」、および、②「NUCLEUS」、「LPA」(PLPA/FLPA/MLPA)にロードされる実行可能モジュール(PDS)に対してお客様環境におけるデジタル署名をサポートし、かつ、新しいz/OS IPL方式(LD-IPL List-Directed IPL)を用いてデジタル署名の検証(不正改ざん有無の検査)を行うことが可能です。

IBMからデジタル署名済みのロード・モジュール等を提供するわけではありません

※お客様環境でデジタル署名を実施することは任意

■①、②の資源に対してデジタル署名が行われた場合でも、従来のz/OS IPL方式(CCW-IPL)、新しいz/OS IPL方式(LD-IPL List-Directed IPL)が共に使用可能です。

■「Validated Boot for z/OS」は、米国の国家安全保証連合(NIAP National Information Assurance Partnership)によるOS保護プロファイル 4.2.1認定(OS Protection Profile 4.2.1 Certification)取得に向けた要件を満たすように設計されています。

【機能概要①】 ※デジタル署名の実施 ・・・ RACF設定などの詳細は、本文書の最後にあります【技術情報】を参照ください

■「Validated Boot」新機能は、①「IPLテキスト」、および、②「NUCLEUS」、「LPA」(PLPA/FLPA/MLPA)にロードされる実行可能モジュール(PDS)へのデジタル署名をサポートします。

※その他、GENPARMS DDステートメントにて「AMDSADMP LDIPL=YES」パラメータ指定することで、デジタル署名済のStand Alone Dumpプログラムを作成可能

①署名済の「LD-IPLテキスト」作成

SYSRESボリューム上に「IPLテキスト」を作成するジョブ(ICKDSF REFORMATコマンド)に対して、「LDIPL(STANDARD)」新オプションを指定

・従来、SYSRESボリューム(シリンダー0、トラック0)には、「レコード4」として「IPLテキスト」(IEAIPL00)を含みますが、「LD-IPLテキスト」が存在する場合は、「レコード5」以降として、「LDI1」、「LDI2」などが続きます。

DFSMSdss PRINTコマンドにて確認可能

②「NUCLEUS」、「LPA」実行可能ロード・モジュールへの署名

署名を実施

PGM=IEWSIGN,PARM=’ACTION=SIGN’

署名を除去

PGM=IEWSIGN,PARM=’ACTION=UNSIGN’

署名の状況をレポート

PGM=IEWSIGN,PARM=’ACTION=REPORT,REPORTLEVEL=1|2|3’

z/OSMF V2R5 PSIPortable Software InstanceServerPacで提供される「PostDeploy」ワークフローの中に、デジタル署名を実施するステップが提供されます。

PTF適用に伴いロード・モジュールが更新された場合、署名を再度実施する必要があります。

PGM=IEWSIGN,PARM=’ACTION=SIGN,STATE=UNSIGNED’ ・・・ 既に署名済のロード・モジュールは除き、署名を再度実施

【機能概要②】 ※新しいz/OS IPL方式

■「Validated Boot」新機能をサポートする、IBM z16の「GA 1.5」相当ファームウェア・レベルからは、HMCの「Load Task」パネルが大きく変更され、「IPL type」として下記どちらかを選択する必要があります。

・従来のz/OS IPL方式(CCW-IPL)➡ デジタル署名を検証しない

・新しいz/OS IPL方式(LD-IPL List-Directed IPL)➡ デジタル署名を検証する(Validated Boot

■「Validated Boot」(LD-IPL)では、「Enforce」モード、「Audit」モードの2種類が使用可能です。

①「Enforce」モード ・・・ 妥当性検査が失敗した場合、あるいは、構成上の前提を満たさない場合、システム初期設定処理は中止

・妥当性検査が失敗した場合は、CSV050Iメッセージ出力を伴い、「WAIT EC9」が発生

CSV050I Signature verification failed for module mmmmmmmm in dataset d. {Not signed | Reason: r}

VFMVirtual Flash Memory)を導入の上、ページング用にSCMStorage Class Memory)構成が必要 ・・・ PARMLIB(IEASYSxx) PAGESCM=パラメータ(省略時値: ALL

※さもないと、IAR079Wメッセージ出力を伴い、「WAIT A2D」が発生

IAR079W VALIDATED BOOT - STORAGE CLASS MEMORY IS REQUIRED

SCM構成が使用可能にもかかわらず、PARMLIB(IEASYSxx)メンバーの「PAGE」パラメータにて「PLPA」データセット指定がある場合は、ILR041Iメッセージ出力を伴い、「PLPA」データセット使用不可として処理(*NONE*指定扱い)

ILR041I VALIDATED BOOT - PLPA PAGE DATA SET SPECIFICATION IGNORED DUE TO ENFORCE MODE

②「Audit」モード ・・・ 検出された妥当性検査の問題を記述するために監査レコードを生成し、システム初期設定処理は続行

・検査に失敗したロード・モジュール、それを含むライブラリー名など、監査レコードを印刷可能(PGM=IEAVBPRT,PARM=’SUMMARY | DETAIL’

・「Enforce」モードではSCMが必要となるため、IAR078Iメッセージにて通知

IAR078I VALIDATED BOOT - STORAGE CLASS MEMORY IS NOT AVAILABLE. WOULD WAIT STATE IF ENFORCE MODE.

・「Enforce」モードではSCMの容量不足が発生した場合に「WAIT 03C」が発生するため、ILR043Iメッセージにて通知

ILR043I VALIDATED BOOT - STORAGE CLASS MEMORY IS FULL. WOULD WAIT STATE IF ENFORCE MODE.

■「Validated Boot」では、「LD-IPLテキスト」のデジタル署名を検証する目的で、z/OS IPL処理の前に「zBootLoader」がまず起動します。

■「Validated Boot」では、「Enforce」、「Audit」モードによらず、「CLPA」が強制されます。

IPL時に何らメッセージ出力なし

【「Validated Boot」の前提】

■「Validated Boot for z/OS」に必要な機能変更は、ICKDSFSupervisorSADUMPSAFRACFBinderRSMIPCSなど多岐のコンポーネントに渡り、z/OS V2R5に対して一連のAPAR/PTFが提供されます。

ドライバー・システムの前提

ターゲット・システムの前提

システムの位置付け

「デジタル署名」を実施するシステム

Validated Boot」を実施するシステム

IBM z16GA1.5」レベルのファームウェア

不要

必要

z/OS V2R5

必要

必要

SMP/E FIXCATにて必要な保守のセットアップ

IBM.DrivingSystem-RequiredService

IBM.Device.Server.z16-3931.Exploitation

IBM.Function.ValidatedBoot

■デジタル署名を実施するドライバー・システムは、IBM z16の「GA 1.5」相当ファームウェア・レベルを必要としませんが、z/OS V2R5以降で稼働する必要があります。

z/OS V2R5のドライバーを使用してz/OS 3.1を導入する場合、その過程でデジタル署名は実施可能

z/OS V2R4のドライバーを使用してz/OS 3.1を導入する場合、その過程でデジタル署名は実施不可

【「Validated Boot」関連PTFの考慮事項】 ※①APAR OA63507PTF UJ92728

D IPLINFOコマンド実行時に出力されるIEE254Iメッセージが変更され、「Validated Boot」の使用状況を示す行が挿入されました。(3種類のメッセージ・テキスト)

※従来の「CCW IPL」を実施する場合、PTF適用後は、稼働サーバー種別によらず(z16のみならず)、また、z16のファームウェア・レベルによらず、「VALIDATED BOOT: NO」を表示

IEE254メッセージに含まれる「Validated Boot」の使用状況(D IPLINFOコマンド)

IEE254Iメッセージを自動化対象にしている場合は、「VALIDATED BOOT」行の挿入に伴う影響有無を要確認

HMC Load Task

Validated Boot

使用状況

IEE254Iメッセージ

D IPLINFOコマンド実行結果)

IPL Type

Validation

Channel Command WordCCW

N/A

未使用

VALIDATED BOOT: NO

List-directed

Enable Secure Boot

選択時

Enforce」モード

VALIDATED BOOT: ENFORCE,INACTIVE

Enable Secure Boot

非選択時

Audit」モード

VALIDATED BOOT: AUDIT,INACTIVE

■「Validated Boot」使用時の事例(z/OS V2R5)

Validated Boot」の「Audit」モード使用時(z/OS V2R5

D IPLINFO

IEE254I  14.28.16 IPLINFO DISPLAY 043

SYSTEM IPLED AT 10.54.42 ON 04/17/2023

RELEASE z/OS 02.05.00    LICENSE = z/OS

USED LOAD57 IN SYS0.IPLPARM ON 0A5C0

ARCHLVL = 2   MTLSHARE = N

VALIDATED BOOT: AUDIT,INACTIVE

IEASYM LIST = (X7,R5,U7,L)

IEASYS LIST = (VB,X7) (OP)

IODF DEVICE: ORIGINAL(0A5C0) CURRENT(0A5C0)

IPL DEVICE: ORIGINAL(09826) CURRENT(09826) VOLUME(VLB7L5)

【「Validated Boot」関連PTFの考慮事項】 ※②APAR OA62783PTF UJ92591

SYS1.SAMPLIBデータセット提供のメンバー、IPLRECSIEAIPL00が更新され、ICKDSF REFORMATコマンドによる「IPLテキスト」の再作成が必要になります。

※再作成を行わない場合、IPL時にWAIT075 RSN006発生

PTF UJ92591の「HOLD(ACTION)」には、SYS1.SAMPLIBデータセット提供のIPLRECSメンバーが更新された旨の記載はありません。(IEAIPL00のみ記載あり)

【その他の考慮事項】

■「Validated Boot」をサポートするIBM z16の「GA 1.5」相当ファームウェア・レベルでは、HMC Load Type」パネルにて、「z/OS」、「SADUMP」どちらかをIPL対象として選択する必要があります。

Load type:

Load an OS ➡ z/OSIPLする場合

Load a dump program ➡ SADUMPIPLする場合

【発表関連情報】

2022/06/21発表レター

Statement of direction

Validated Boot for z/OS

https://www.ibm.com/common/ssi/ShowDoc.wss?docURL=/common/ssi/rep_ca/5/760/ENUSJP22-0255/index.html#sodx

https://www.ibm.com/common/ssi/ShowDoc.wss?docURL=/common/ssi/rep_ca/5/760/JAJPJP22-0255/index.html#sodx

2023/06/20発表レター

IBM z/OS V2.5 2Q 2023 enhancements

Published: 20 June 2023AD23-0438

https://www.ibm.com/docs/en/announcements/zos-v25-2q23-update

https://www.ibm.com/docs/ja/announcements/zos-v25-2q23-update

【技術情報】

■参照: PTF UJ92728APAR OA63507)の「HOLD(DOC)」情報

https://ibm.biz/zosValidatedBoot

Validated Boot White Paper

https://ibm.biz/zosValidatedBootC3_PDF

Validated Boot PDF

https://ibm.biz/zosValidatedBootC3_doc

Validated Boot webpage

【追加情報: 2023/11/10】

#108z/OS V2R5/3.1変更点】 D IPLINFO」コマンド実行結果(IEE254Iメッセージ出力)

https://community.ibm.com/community/user/ibmz-and-linuxone/blogs/shigeki-kimura1/2023/11/10/sharing-zos-upgrade-info-by-professor-kimura-108j

以上