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#076【z/OS V2R4変更点】 JES2ポリシー定義の「MASワイド・スコープ」変更に伴う影響と考慮事項

  

アセンブラー言語による「JES2導入出口」(Exitルーチン)の作成、保守は、JES2に造詣が深い担当者が退職されたなどの背景もあり、以前よりも難しくなってきています。

【新機能(z/OS V2R4 JES2)】
■z/OS V2R4では、従来のような「JES2導入出口」の代替として、「JES2ポリシー」(新機能)によるカスタマイズが可能となり、保守容易性の向上が図れます。
※既存の「JES2導入出口」に含まれるロジック(カスタマイズ内容)を、「ポリシー定義」(新機能)に100%移植可能とは限りません
■z/OS V2R5時点では、次のような「3種類」の「ポリシー・タイプ」がサポートされ、「ポリシー定義」は「JSONオブジェクト」として、可読、編集可能な形でPDSメンバー、あるいは、zFSファイル・システムに保管されます。

※z/OS V2R4では、JES2 APAR OA61230にて「SYSOUTGroup」、「PreConversion」のポリシー・タイプをサポート → 追記: 2023/01/15
■「JES2ポリシー」の使用方法(JES2コマンド)

 【機能変更点】
■z/OS V2R5、あるいは、z/OS V2R4に対するJES2 APAR OA58190のPTF適用後、JES2 「ポリシー定義」は「MASワード・スコープ」に変更され、$POLICY IMPORTコマンドを通じて「チェックポイント」内に保管されるようになりました。
※z/OS V2R4 JES2 APAR OA58190 (PTF UJ03971) ⇒ z/OS V2R5 JES2では標準機能

【機能変更に伴う影響】
■z/OS V2R4 JES2 APAR OA58190のPTF UJ03971適用後、あるいは、z/OS V2R5では、JES2の起動方法によらず、また、MAS構成かどうかによらず、「チェックポイント」内にJES2 「ポリシー定義」を保管するためのスペースとして、「構成ディレクトリー」(configuration directory)の作成を試みます。
※「構成ディレクトリー」の構成要素: 「CDI」(configuration directory entries)、「CDT」 (configuration directory data space)
※z/OS V2R4環境では、$ACTIVATE,LEVEL=Z22コマンドによる「z22」モード活動化の直後に、「構成ディレクトリー」が既に作成済の可能性あり(後述)
※z/OS V2R3からV2R5へ移行する場合、z/OS V2R3環境で「z22」モード活動化を行った際は「構成ディレクトリー」が作成されないため、z/OS V2R5でのJES2起動時に作成を試行

■「構成ディレクトリー」(CDI/CDT)は、「JES2ポリシー」(新機能)の利用前提となる「z22」チェックポイント・モードで稼働し、かつ、CKPT1/CKPT2両方のスペースに余裕がある場合だけ作成され、首尾よく作成された場合でも何らメッセージ出力は行われません。
※JES2 $DCKPTSPACEコマンドにて、「構成ディレクトリー」の作成有無、使用状況を確認可能(APAR OA58190以降が対象)

■「構成ディレクトリー」が作成されると「チェックポイント」のスペース使用量が増加するため、次回のJES2 WARMスタート時には、何ら動的な定義変更などを実施していないにもかかわらず、$HASP537メッセージにて表示される値が変化します。
※z/OS V2R4環境(「z22」モード)における「チェックポイント」使用量の増加例 ・・・ 省略時解釈(CDINUM=128)として「133 4K RECORDS」の増加
(変更前)  $HASP537 THE CURRENT CHECKPOINT USES 414 4K RECORDS
(変更後)  $HASP537 THE CURRENT CHECKPOINT USES 547 4K RECORDS

■例えば、JES2PARM指定の「JOBDEF/JOBNUM」、「OUTDEF/JOENUM」資源の増加に配慮して、「チェックポイント」容量に余裕を持たせている場合など、今回、「チェックポイント」内に「構成ディレクトリー」用のスペースが新規アサインされることで「UNUSED」部分が減少し、$Tコマンドによる動的拡張に影響を及ぼす可能性があります。

 【考慮事項①】
■CKPT1/CKPT2いずれかのスペースに余裕がなく(「UNUSED」が少ない状況)、「構成ディレクトリー」が作成不可の場合は、「チェックポイント」の容量不足を示すメッセージ$HASP296、および、「構成ディレクトリー」の作成不可を示す新規メッセージ $HASP1656 (APAR OA58190にて追加)が出力されます。

■上記メッセージは、JES2起動の都度、各メンバーにて出力されますが、JES2初期設定には何ら影響を与えないため、「JES2ポリシー」(新機能)の利用予定がない場合は無視して構いません。
※この状態では、$POLICY IMPORTコマンドによる「ポリシー定義」の保管ができないため、遅くとも「JES2ポリシー」(新機能)を利用するまでには「チェックポイント」容量の増加が必要
■「JES2ポリシー」(新機能)の利用予定がない場合、上記のメッセージ出力を回避するには、JES2PARM CKPTSPACEステートメントにて「CDINUM=16」(最小値)を明示指定することで、「チェックポイント」内に作成される「構成ディレクトリー」のスペースを最小化する方法が考えられます。

【考慮事項②】
■「JES2ポリシー」(新機能)は、z/OS V2R4以降でのみ利用可能なため、z/OS V2R3環境では、「z11」、「z22」モードによらず、「構成ディレクトリー」が作成されません。
※$DCKPTSPACEコマンド実行結果では、「構成ディレクトリー」関連の情報が非表示
■z/OS V2R3の事例(Toleration APAR OA59665のPTF適用後)

 【考慮事項③】
■z/OS V2R3、V2R4とも、「z11」モード稼働中に$DACTIVATEコマンドを実行した際の、「z22」モード活動化時における「チェックポイント」のスペース見積もりメッセージは、「構成ディレクトリー」の追加分を考慮していません。
※z/OS V2R3の場合、もともと「構成ディレクトリー」はサポート対象外

■z/OS V2R4の場合、$ACTIVATE,LEVEL=Z22コマンドにて、「z11」から「z22」モードへの変更が成功した直後、「チェックポイント」内のスペースに余裕がある場合に限り、「構成ディレクトリー」が作成されます。
※「チェックポイント」内のスペースに余裕がない場合(前述のメッセージ$HASP296、$HASP1656出力時)でも、$ACTIVATE,LEVEL=Z22コマンド処理の成功、失敗には影響なし

 【参考情報】
■z/OS V2R5の「JES2 Messages」(SA32-0989-50)マニュアルには、$HASP852メッセージの解説として「構成ディレクトリー」(CDI=部分)が含まれていません。
※将来的に対応されるまでの間、「JES2 Commands」(SA32-0990-50)マニュアルの「$DCKPTSPACE」コマンド解説を参照ください
 
以上