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#067【z/OS V2R5変更点】 「IRRUT200」ユーティリティー実行時の考慮事項(SYSUT1にてABENDD37-04発生)

  

2021年3月2日付けの開発意向表明で、「特定の構成において、暗号化されたVSAMデータセットをRACFデータベースとして利用可能にする予定」という発表がありました。

【z/OS V2R5の変更点】

■z/OS V2R5では、特定の条件を満たす場合に限り、RACFデータベースとして、VSAM LINEARデータセットの利用が可能となりました。
※条件の一例: (他にも条件がありますので、詳しくはRACF SPGマニュアル参照)
PARMLIB(IRRPRMxx)メンバーの「DATABASE_OPTIONS」指定にて、「SYSPLEX(NOCOMMUNICATIONS)」(省略時値)が有効であること(ICHRDSNTでも同様)

■この新機能をサポートするため、z/OS V2R5では、RACFデータベースの編成がVSAM、非VSAMデータセットによらず、RACFデータベースをコピーする「PGM=IRRUT200」実行時に呼び出されるユーティリティ・プログラムが、従来の「IEBGENER」から「IDCAMS/REPRO」に変更されました。

※「PGM=IRRUT200」実行時の様子(z/OS V2R5)

当変更に伴う考慮事項: PTF UJ06610 (APAR OA61995)の「HOLD(ACTION)」情報を参照

【「PGM=IRRUT200」実行時の注意点(z/OS V2R4まで)】

■従来、DFSORTが提供する「ICEGENER」ユーティリティー・プログラムに対して「IEBGENER」のALIASを付加した環境では、「PGM=IRRUT200」を実行した際、「IEBGENER」の代わりに「ICEGENER」が起動されます。(パフォーマンス向上が目的)
■DFSORTの導入オプション 「OUTSEC=YES」(省略時値)が有効な環境では、「ICEGENER」による新規データセットへのコピー処理を行う際、たとえ出力データセットの「SPACE」パラメータにてセカンダリー指定がない場合でも、プライマリー・スペース量の「25%」がセカンダリー・スペース量として使用されます。
■このため、「IEBGENER」の代替として、「ICEGENER」を「OUTSEC=YES」(省略時値)にて利用する環境では、「PGM=IRRUT200」実行時の「SYSUT1 DD」ステートメント(RACFデータベースのコピー先を新規作成)でセカンダリー・スペース量が指定なしの場合、プライマリー・スペース量が不足するとセカンダリー・スペースを自動的に確保してコピー処理が継続されます。
※「SYSUT1 DD」ステートメントの指定例: SPACE=(CYL,25,,CONTIG)

■このようにして新規作成されたRACFデータベースのコピーは「複数エクステント」を持つことになり、RACFデータベースの要件である「単一エクステント」を満たさなくなるため、利用することはできません。 ⇒ ABEND500 RSN2発生
■上記のような背景から、「PGM=IRRUT200」実行時に「ICEGENER」を利用する場合は、「DFSPARM DD」ステートメントにて「OPTION NOOUTSEC」を明示指定することで、「OUTSEC=YES」(省略時値)をオーバーライドすることが推奨です。
※参照: RACF DOC APAR OA56715 (2019/02)

【z/OS V2R5移行時の考慮事項】

■従来、「ICEGENER」を利用する環境で、「PGM=IRRUT200」によるRACFデータベースのコピー処理を行う際、「SYSUT1 DD」ステートメント(コピー先)のセカンダリー・スペース量を指定せずに新規データセットを作成している場合は、z/OS V2R5移行時の挙動変化に注意が必要です。

(z/OS V2R4まで)
例えば、RACFデータベースの大きさが当初よりも増加して、プライマリー・スペース量に入りきらない事態が発生しても、「ICEGENER」(OUTSEC=YES)を利用していればセカンダリー・スペースが自動取得されるため、スペース不足の不具合が顕在化しない ⇒ 「SYSPRINT」情報(INDEX/MAP)も取得可能
(z/OS V2R5の場合)
「PGM=IRRUT200」実行時には「IDCAMS/REPRO」が起動され、「ICEGENER」はもはや関与しないので、移行前(z/OS V2R4まで)と同一JCL/PROCにてRACFデータベースをコピーした場合、セカンダリー・スペース量が指定なしのため「ABENDD37-04」(スペース不足)発生に至る可能性あり

■「IRRUT200」実行時の「SYSUT1 DD」ステートメントにて十分大きなプライマリー・スペース量を指定した場合(セカンダリー・スペース量は指定なし)

■「IRRUT200」実行時の「SYSUT1 DD」ステートメントで指定したプライマリー・スペース量に入りきらない場合(セカンダリー・スペース量は指定なし)

【対応策】

■z/OS V2R5で「PGM=IRRUT200」を実行する場合は、「SYSUT1 DD」ステートメントにて新規データセットを作成する際、十分に大きなプライマリー・スペース量を「CONTIG」付きで指定する、あるいは、セカンダリー・スペース量を明示指定する対応が必要です。
※セカンダリー・スペース量を指定した結果、「複数エクステント」のコピーが作成された場合、RACFデータベースとしては利用不可

【事例(z/OS V2R4とV2R5の比較)】 ※「SYSUT1 DD」ステートメントでセカンダリー・スペース量が指定なし、かつ、プライマリー・スペースがパンク

■z/OS V2R4: 「ICEGENER」(OUTSEC=YES)を起動 ⇒ 正常終了(RC00) ・・・ 「複数エクステント」のコピー作成

■z/OS V2R5: 「IDCAMS/REPRO」を起動 ⇒ 異常終了(ABENDD37-04、RC12) ・・・ スペース不足発生

以上