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#059【z/OS V2R5変更点】 WLM 「SDC」(サービス係数)のカスタマイズ機能廃止に伴う影響

  

従来、「アドレス空間」が消費したシステム資源量として、「CPU」、「I/O」、「STORAGE」、「SRB」各サービスによる実際の消費量に重み付けした「加重サービス量」が計算されます。
※WLM 「サービス定義」パネルで設定したサービス毎の「SDC」(Service Definition Coefficients: サービス係数)による重み付け
また、複数ピリオドが定義された「サービス・クラス」では、各ピリオドで消費可能な「加重サービス量」を「Duration」として指定し、それを使い切ると次のピリオドへ切り替わります。
■「SDC」(サービス係数)の省略時値と推奨値 ・・・ z/OS V2R4では、「IOC」の推奨値が変更(「0.5」→「0」)

【開発意向表明の発表】
■2019年7月23日付けの開発意向表明で、WLM 「サービス定義」パネルに「SDC」(サービス係数)を指定できるのは、z/OS V2R4が最終リリースとなる発表がありました。

【z/OS V2R5の変更点】
■z/OS V2R5では、WLM 「サービス定義」パネルによる「SDC」(サービス係数)設定が不可となり、z/OS V2R4時点の推奨値である「CPU=1、IOC=0、MSO=0、SRB=1」で固定化されました。
※WLM 「サービス定義」パネルの変更点
※RMFモニターI ポスト・プロセッサーの「WORKLOAD ACTIVITY」レポートによる「SDC」表示
・・・ 「SYSRPTS(WLMGL(SCPER))」、「SYSRPTS(WLMGL(POLICY))」ステートメント指定時の、「SERVICE POLICY PAGE」(各インターバルの最終ページ)
■z/OS V2R5では、省略時値として「IOC=0、MSO=0」が有効になるため、SMFタイプ30レコード、SMFタイプ72.3レコードに記録される「SDC」設定値は「ゼロ」を示します。
■z/OS V2R5では、「WORKLOAD ACTIVITY」レポート(RMFモニターI ポスト・プロセッサー)の「IOC」、「MSO」にて出力される「加重サービス量」が「ゼロ」を示します。
※「SYSRPTS(WLMGL(SCPER))」ステートメント指定時の、「SERVICE CLASS PERIOD」レポート

【「マイグレーション・ヘルスチェック」の新規提供】

■2021年2月のAPAR OA59066を通じて、次のような「マイグレーション・ヘルスチェック」が新規提供され、z/OS V2R5への移行準備として利用可能です。
※「IBMWLM,ZOSMIGV2R4_NEXT_WLM_ServCoeff」(z/OS V2R4向け)、「IBMWLM,ZOSMIGV2R3_NEXT2_WLM_ServCoeff」(z/OS V2R3向け)
■この「マイグレーション・ヘルスチェック」は、現環境(移行前)における「SDC」定義が、z/OS V2R5の省略時値(固定値)と一致しているかどうかを検査します。
(一致する場合) IWMH101I THE RECOMMENDED WLM SERVICE COEFFICIENTS ARE BEING USED. NO ACTION IS REQUIRED.
(一致しない場合) IWMH102E THE RECOMMENDED WLM SERVICE COEFFICIENTS ARE NOT BEING USED.
※例えば、z/OS V2R3、V2R4における「SDC」省略時値(CPU=10.0、IOC=5.0、MSO=0.0、SRB=10.0)が有効な場合、例外メッセージ IWMH102Eを出力
■例外メッセージ IWMH102Eの出力時は、「SDC」設定値を見直して、z/OS V2R5の省略時値(CPU=1、IOC=0、MSO=0、SRB=1)に変更するのが推奨です。
※「SDC」設定値を変更する場合、複数ピリオドを定義した「サービス・クラス」における「Duration」指定値の見直し、及び、お客様独自の「アカウンティング・プロシージャー」(システム資源利用時の課金体系など)の見直しが必要(「加重サービス量」を利用している場合)

【「Duration」指定値の見直し(再計算)】
■従来、「Duration」の計算は、消費された「加重サービス量」として次のように求められます。
■z/OS V2R5では、「CPU=1、IOC=0、MSO=0、SRB=1」が省略時値(固定値)になるため、「Duration」の計算式が簡素化されます。
「NEW DUR」 = (CPUサービス量) + (SRBサービス量)
■現行の「Duration」指定値を、z/OS V2R5対応の新規「Duration」指定値に変換する際は、RMFモニターI ポスト・プロセッサーの「WORKLOAD ACTIVITY」レポート(ピーク値)を参照し、次のような計算式を利用します。
※「SYSRPTS(WLMGL(SCPER))」ステートメント指定時の「SERVICE CLASS PERIOD」レポート
※現行の「IOC」、「MSO」サービス係数(SDC)は無関係

【「アカウンティング・プロシージャー」の見直し(システム資源利用時の課金体系など)】
■消費された「サービス量」に応じた課金処理を行うなどの目的で、「加重サービス量」の値を記録したSMFレコードを利用している場合は、考慮が必要になります。
※z/OS V2R5では、「IOC=0」、「MSO=0」指定が有効化されるため、関連する「加重サービス量」は「ゼロ」
※z/OS V2R5では、「CPU」、「SRB」サービス係数が、従来の省略時値の「1/10」になるため、関連する「加重サービス量」が変化(減少)
■「加重サービス量」を記録するSMFレコード・フィールドの代表例
※SMF 72.3レコード(ワークロード・アクティビティ)の中で、上表の「Service/Report Class Period Data Section」は「加重サービス量」を示す一方、「Resource Group Data Section」は「非加重サービス量」を示す
※z/OS V2R5では、「SDC」(サービス係数)の変更に伴い、「I/O」、「STORAGE」サービス量を示すSMFレコード・フィールドが「ゼロ」を示す

【「SDC」変更に伴うレポーティングへの影響】
■z/OS V2R5では、「IOC=0」、「MSO=0」指定が有効化されるため、RMFモニターII (ASRM - ADDRESS SPACE SRM DATA: PF3)の「TX MSO」、「TX IOC」カラムが「ゼロ」を示します。
■z/OS V2R5では、RMFモニターI ポスト・プロセッサーの「OVERVIEW」レポート出力時に、「OVW(EXCP(EXCP(POLICY)))」、「OVW(EXCPRT(EXCPRT(POLICY)))」ステートメントを指定した場合、「EXCP」、「EXCPRT」カラムが「ゼロ」を示します。
※z/OS V2R5では、計算に利用される「R723CIOC」、「R723MIOC」フィールドが「ゼロ」
■z/OS V2R5では、SMF exit IEFACTRTを利用して、消費された「サービス量」をJOBLOG (JESMSGLG)に出力している場合、「SDC」の変更に影響を受ける可能性があります。
※例えば、SYS1.SAMPLIB(IEEACTRT)メンバーを利用している場合、「加重サービス量」を示す「SMF30SRV_L」フィールドの値(総サービス量)を「SERV」カラムにて表示
■PARMLIB(IEAOPTxx)メンバーで指定可能な「ERV」(ENQ Residency Values)パラメータ(省略時値: 500)は、「非加重サービス量」を利用しているため、「SDC」の変更には影響を受けません。

【シスプレックス共存時の考慮事項】 ※z/OS V2R3、V2R4に対する共存APAR OA59066が提供する機能
■z/OS V2R5を含むシスプレックス内では、共存するz/OS V2R3、V2R4でさえ、z/OS V2R5での省略時値(CPU=1、IOC=0、MSO=0、SRB=1)で稼働します。
※例えば、シスプレックスを構成するz/OS V2R3の複数メンバーが、従来の省略時値(CPU=10.0、IOC=5.0、MSO=0.0、SRB=10.0)で稼働している場合、あるメンバーを再起動してz/OS V2R5に切り替えた途端、z/OS V2R3で稼働するメンバーも同様に、z/OS V2R5の省略時値(CPU=1、IOC=0、MSO=0、SRB=1)にて稼働
IWM069I WLM POLICY WAS REFRESHED DUE TO THE CHANGE OF THE SERVICE COEFFICIENTS TO SYSTEM PRESET VALUES (CPU=1, SRB=1, IOC=0, MSO=0).
■シスプレックスの構成メンバーがz/OS V2R3のみに変わると、下記のようなメッセージ出力を伴い、従来利用されていた「SDC」が再度有効化されます。
IWM069I WLM POLICY WAS REFRESHED DUE TO THE CHANGE OF THE SERVICE COEFFICIENTS BACK TO THE DEFINED VALUES.
■シスプレックス環境を「ローリングIPL」方式でz/OS V2R5へ順次移行する場合は、最初のメンバーを切り替える前のタイミングで、複数ピリオドを定義した「サービス・クラス」における「Duration」指定値の見直し、及び、お客様独自の「アカウンティング・プロシージャー」への影響確認と事前対応が必要になります。


以上