みなさま、こんにちは。スマート・アナリティクス代表の畠です。
12月3日、東京国際フォーラムで開催された IBM TechXchange Summit Japan の2つのブレイクアウトセッションを活用し、SPSS秋のユーザーイベントを実施しました。
今回は、私自身が講演者として登壇しつつ、運営側と参加者の両方の視点からこのイベントをレポートします。現地に来られなかった方にも、当日の熱気や盛り上がりを感じていただけるよう、少しテンション高めでお届けします!

ユーザーセッション①千代田化工建設

増田 望
千代田化工建設株式会社
地球環境プロジェクト事業本部 セクションリーダー
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畠慎 一郎
スマート・アナリティクス株式会社
代表取締役社長
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最初にご登壇いただいたのは、千代田化工建設の増田様です。
今回は、スピーカーの皆さまをサポートするIBMビジネスパートナーが聞き手を務める構成で、私も増田様とともに登壇しました。
千代田化工建設様は、世界各地でプラントの設計・建設を手掛ける企業として広く知られています。増田様のチームでは、同社のお客様であるプラントオーナー向けに、「様々な環境、社会の変化に柔軟に適応し、ビジネスを維持、継続できる安心、安全な企業活動」(ビジネスセーフティー)」を実現・支援をするソリューションサービスである「plantOS®」を提供しています。
今回のセッションでは、SPSSの活用事例として、センシング技術を活用した設備保全ソリューション「O&M Mother」の中から、化学プラントの配管をオンラインの肉厚測定センサーで監視し、運転中のプロセスデータから想定より早い腐食を検知することで保守計画を最適化する取り組みをご紹介いただきました。
疑似データを用いた分析デモンストレーションでは、モデリングだけでなく、欠損値の前処理や基礎統計の確認、可視化の重要性を強調された点が印象的でした。センサーデータを保守に適用するには膨大な工数が必要であり、時系列処理や視覚化、仮説探索と検証に多くの時間を費やしているとのことです。また、機械学習による減肉予測モデルを構築し、データドリブンな保全管理の仕組みづくりにも携わっているとのことでした。
これまで、車両や航空機の異常検知、設備装置の故障予測といったテーマはユーザーイベントで何度も取り上げられてきましたが、プラント配管の腐食予測という事例は非常に新鮮で、多くの参加者の関心を集めました。セッション後のHappy Hourでは、増田様に質問するために長い列ができるほどの盛り上がりを見せました。
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ユーザーセッション②JFE条鋼

津田 和呂
JFE条鋼株式会社
業務イノベーション推進部 技術主監
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林 啓一郎
株式会社AIT
開発事業本部 ソリューション戦略第2部 次長
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ものづくり領域の2番目のセッションでは、JFE条鋼の津田様とAITの林様にご登壇いただきました。
SPSSのものづくり領域で代表的なユースケースといえば「異常検知」や「故障予測」ですが、今回のテーマは少し異なり、「製品(成分)設計検討」でした。
具体的には、複数の化学成分の割合により、要求される機械特性(例:「降伏点」「引張強さ」「伸び率」)を満たす設計をするという内容です。JFE条鋼様は化学成分ばらつきのあるスクラップ原料から製品を製造しますが、その過程で合金添加物を加えるなどして一部の成分を調整できるとのこと。その際、製造コストも考慮しながら目的の機械特性を実現するために、回帰モデルとシミュレーションが有効であると紹介されました。
セッションでは、ダミーデータを用いたとはいえ、非常にリアリティのあるデモストリームが披露されました。まず3つの回帰モデルで予測プロセスを確定し、その後、特定成分を変動させた場合のコストと機械性能を求めるシミュレーションは、多くの参加者にとって参考になったはずです。
「物理や化学には統計は不要」という先入観を覆し、有限な実験データから効率的に最適解を導くために統計がいかに有効かを示す事例であり、参加者に新たなヒントを与えたセッションだったと思います。
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ユーザーセッション③朝日新聞社

木村 慎太郎
株式会社朝日新聞社
メディア事業本部データソリューション部
データマネジメント担当次長
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井原 渉
澪標アナリティクス株式会社
代表取締役
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マーケティング領域の1組目は、朝日新聞社の木村様と澪標アナリティクスの井原様にご登壇いただきました。
木村様は自己紹介で「朝日新聞といえば紙の新聞の印象が強いかもしれません」と切り出されましたが、デジタル版の普及に伴い朝日ID会員は650万IDを超え、その貴重なデータをマーケティング活動に活用しているとのことです。
具体例として、新聞社主催の美術展への案内メール配信リスト作成をご紹介いただきました。デジタル閲読情報から会員の興味・関心を把握し、過去の類似イベント参加有無を教師データとして機械学習モデルを構築。その際、SPSS Modelerを利用する理由として、非エンジニアでもモデル構築が可能であることに加え、「業務部門から依頼されるビジネスルールを簡単に反映できる」点を挙げられました。
さらに、井原様からは「Pythonだと、ランダムシードの設定など細かい設定がどこでされているかを探すのが大変だが、Modelerだとすぐにわかり変更も容易」というマニアックな解説があり、会場は大いに盛り上がりました。
今後の展開として、生成AIを活用し、リストだけでなくリスト抽出プロセスをストリームで提示するアイデアも共有されました。レビューやビジネスルールの反映に有効な手段として、私自身も非常に勉強になったセッションでした。
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ユーザーセッション④ファミリーマート

橋本 ゆり子
株式会社ファミリーマート
デジタル事業部 副部長

森山 隼
日本情報通信株式会社
データ&アナリティクス事業本部
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SPSSセッションの大トリを飾ったのは、ファミリーマートの橋本様と日本情報通信の森山様です。
ファミリーマート様では、アプリ「ファミペイ」をメーカー側と連携し、ブランドファンを育成する「デジタルパートナーシッププログラム」を展開しています。
ファミリーマートへのロイヤリティ向上を目的とした従来のアプリ活用から、メーカー企業がファン化を推進するためのプラットフォームへと進化しています。これにより、メーカー側の課題に応じて顧客一人ひとりに最適化された精度の高いコミュニケーションを実現しています。
その中で重要な役割を果たすのが、「顧客理解」です。セッションでは、サンプルデータとストリームを用いて「顧客カルテ」と「ペルソナ」を生成する仕組みが解説されました。
顧客カルテは、ファミリーマートでの購買データを時系列で記録し、来店頻度や購買ジャンル、値引きへの反応、嗜好性などを集約・構造化したものです。これは単なる実績の把握に留まらず、プロモーションの確かな根拠となり、精度の高いターゲティング施策の立案を可能にします。
一方、顧客ニーズは常に変動するため、新たなセグメントの開発と効果検証には大きな労力が必要です。このプロセスを短縮するため、生成AIを活用。分析された顧客クラスタを具体的な購買顧客像たる「ペルソナ」に変換することで、マーケティングに直感的かつ強力な武器を提供しています。
私自身、統計を学んできたため、ペルソナというミクロな視点に違和感を持っていましたが、今回のセッションで統計モデルの理解とコミュニケーションにペルソナを活用する意味が明確になり、気づけば前のめりで聞き入っていました。
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イベントを振り返って
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運営側として、また聴講者として振り返ると、今回はいつも以上に学びの多い内容だったと感じています。
SPSSイベントも回を重ねる中で、類似事例が増えてきていますが、各講演者がこれまでにない視点や工夫を取り入れようとしている姿が印象的でした。
オンライン中心からオンサイトやハイブリッド形式が主流になりつつある今、登壇者の皆さんがキーメッセージを軸に内容を練り上げ、かつて自身が受けた感動をギブバックしようとする姿を見て、「これこそがSPSSコミュニティの素晴らしさだ」と強く感じました。
次回は2026年5月に春のイベントが予定されています。皆様とまたお会いできることを楽しみにしています。
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畠 慎一郎
スマート・アナリティクス株式会社
代表取締役
著書に「SPSS超入門」「武器としてのデータ分析力」「文系ビジネスパーソンのためのデータ分析入門